第71話
結婚式の後、フィリス達はマティーナの好意でバーデンの街へとやって来ていた。本来なら、マティーナ、カリナ、テッド、ティファも来る予定だったのだが、急な仕事が入ったらしくフィリスより後に出発するとの事で別行動だ。当初はフィリス達も手伝おうとしていたのだが、マティーナがもう騎士学校の関係者でもないフィリス達の力を借りる訳にはいかないと言ったので、先にバーデンの街で休息することにしたのだ。ミロで1時間もあればバーデンに着くので、何の問題もなくバーデンの街に着き、ただ休息するのもいけないと思い、今はバーデンの街の冒険者ギルドへと来ていた。
「しかし、依頼は殆ど無いな。それだけギルドがしっかりしているんだな。」
そう言うフィリス。元々、慰安のために作られたバーテンの街、凶悪なモンスターや動物は元々そんなにはいない。そして何より、ギルドシルバーウルフとギルドガルーダがいるのだから、あまり心配はしていなかった。因みに、両ギルドとも話し合いがあり、数年前に合併して今はギルドパーチェと名乗っていた。昔、フィリスが予想した通り、エイドスとローリィも結婚し、お互いのギルドも元々仲が悪いわけでもなく、それなりのカップルや結婚したメンバーもいるらしい。と、なぜこんな話をするのかと言うと、冒険者ギルドに顔を出した途端にフィリス達を勧誘する、ギルドパーチェのメンバーに、今まさに揉みくちゃにされている四龍がいるからだ。特に男連中に…
「なあ、頼む!俺達のギルドに入ってくれ!」
「だ~か~ら~、私達はギルドエレメントドラゴンだってば!」
「ならギルドを合併しよう!」
「…そんな気はない。」
「ならせめてこの街に来てくれよ!」
「嫌です!」
「連絡取り合おうよ!」
「私達はフィリス様以外の方に興味はありませんわ!」
そんなやり取りの中、マリアーナとミロ、ハクアはいない。不死鳥の姿で来たことはあっても、人の姿で来たのは初めてのミロ。そんなミロが色々見て回りたいと言ったので、ハクアもそれに便乗、その2人に付き添うとマリアーナが言ってくれたので、ある程度のお金を渡して、街の散策へと3人は出ている。揉みくちゃにされてうんざりしている四龍、ようやく諦めたのか、解放されてフィリスの元へとやってくる。
「もう嫌!うんざりよ!」
「…フィリス様、砂漠の街に帰りましょう。」
「有名になるのも考えものね、疲れた~。」
「フィリス様、申し訳ありません。お待たせを致しましたわ。」
「ごめんね、私が冒険者ギルドに行きたいと言ったから。」
「フィリス様のせいではありませんわ。」
そう話して、取り敢えず冒険者ギルドから出て、マリアーナ達と合流する。既に大量に買い食いしている3人を見てフィリス達は笑ったが、そこは流石マリアーナ。味をしっかりと覚えたらしく、材料があれば同じものを作ってくれると約束をしてくれた。そんなこんなありながら、フィリス達はマティーナの屋敷へとやって来た。玄関をノックすると、メイドが1人、応対してくれた。
「フィリス様、お久しぶりで御座います。マスターより、おもてなしをするよう仰せ付けられております。何なりとお申し付けくださいませ。」
「有り難う御座います。でも余り気を使わないで下さい。」
「そう言うわけにはいきません。我々にとっても大切なお客様ですから。」
そう話してくれる。取り敢えずそれぞれ部屋に案内され、のんびりしていると、玄関から声が聞こえて来た。
「直ぐにお呼びします。」
先程のメイドの声が聞こえた後、フィリスの部屋の扉がノックされる。
「フィリス様、申し訳ありません。冒険者ギルドに来てほしいそうです。」
「解りました。」
そう告げて、皆と合流して再び冒険者ギルドへと向かう。
冒険者ギルドでは、ギルドパーチェの面々と、ギルド長のリーダ、そして街の代理長のラバンダがいた。
「フィリス殿、お久しぶりですな。」
ラバンダがそう話すが、事態は深刻のようだ。皆辛辣そうな顔をしている。
「何かあったのですか?」
「昔、フィリスやカーマインさん、ここにいるギルドパーチェの面々に討伐して貰った、モンスターを覚えているかい?」
「あぁ、あの時は魔人ダンジンのせいでモンスターが増えていましたね?」
「あの時、フィリス殿達が見つけた洞窟に、モンスターがいるらしいのです。しかし、ギルドパーチェには街の警備をして貰っておりますので、戦力を出す訳にもいかないのです。」
「じゃあ私達ギルドエレメントドラゴンが行けば良いのですか?」
「…モンスター位なんとかなる。」
「まあね。」
「依頼として受け取って宜しいのですか?」
四龍も質問する。
「しかし生憎、この冒険者ギルドにも、あなた達に充分な報酬を払うほど余裕は無いんだよ。」
「それが問題かの?」
「確かにタダ働きはやだなぁ。」
「かといって、ほっとくのもやなのです!」
「ラバンダさん、報酬として美味しい魚を貰いたいのですが?」
「…は?」
「マティーナ先生の大切な街ですけど、無償で動く訳にはいきません。しかし、ラバンダさん達が厳選した魚を1キロ程下さい。それで充分な報酬になります。」
「…それで宜しいのですか?」
「元々マティーナ先生達も数日後にこの街に来るのです。露払いはしておかないと、皆も危ないですから。」
「有り難う、フィリス。」
リーダもお礼を言う。そしてフィリス達はミロに乗って山へと向かおうとすると、
「わふぅ!パパさん、ハクアに任せるです!」
そう言ってハクアがフェンリルの姿へと変わる。
「ミロお姉ちゃんに乗っていくのも好きですけど、モンスターの駆逐なら、走って行って見つけた方が良いと思うです!」
「成る程。ハクア、頼む!」
「はは…あの時、フェニックスだけでも驚いたのに…」
「まさか…フェンリルまで…」
そう言うのはエイドスとローリィ。体長8メートル程に成長しているハクアに7人は乗り、山へと向かって行った。
読んでくださっている方々、有り難う御座います!




