第65話
ミロに乗って一時間ほどでガデル王国に着いた。以前はもっと時間がかかっていたが、ミロの成長も目覚ましいので、殆どあっという間だった。王国の入り口より手前で地上降りて、徒歩で向かうとやはり活気づいた街が見えてくる。
「はぁ…フレデリック王国より大きいですね…」
そう言うのはマリアーナ。何せ、フレデリック王国、砂漠の街しか知らないし、この大陸最大の城下町だ。驚くのも無理はなかった。入り口で冒険者の証を見せて中へと入り、取り敢えず騎士学校に向かう。騎士学校入り口にて、門番にマティーナからの手紙を見せて、中へと入り、フィリス達は学校の中を校長室へと向かって歩いていく。フィリスは懐かしく感じていた。
「あれから約3年か…早かったような…」
そんなことを言いながら、校長室の前に立った8人。フィリスが代表して扉をコンコンとノックすると、
「は~い、どうぞ~!」
と、どこか気の抜けたような声が聞こえてきた。フィリスが扉を開けて、8人で入っていくと、机に突っ伏したマティーナが校長席に座っていた。
「ごめんねぇ、中々仕事が終わらなくて…って、フィリス君!」
「お久しぶりです、マティーナ先生。お変わりなくて良かったです。」
「うん!いやぁ…まだ手紙が届くのは先だと思ってたんだけど…早くて良かった。…ん?そちらの女性は?」
マティーナが挨拶もそこそこに、マリアーナを見て言う。
「お初にお目にかかります。マリアーナです。」
「新しい家族です。」
「へぇ…私はマティーナ・ティル。フィリス君の先生だった者だよ。よろしくね、マリアーナ君。」
「それで…マティーナさん。フィリス様に用事とは?」
話が進まなそうなので、ライファが尋ねた。
「うん…君の所にも話はいったと思うけど、オルステッド君とティファ君が結婚するだろう?」
「一緒に同封されていた、2人からの手紙で知りました。」
「うん。でね、素敵な贈り物をしようと思ったんだけど…その為にギルドエレメントドラゴンの力を借りたいんだ。」
「…具体的には?」
「ここから北へ百キロ程行った所の、ビラル火山は知ってる?」
「地理の勉強で習いましたね。」
フィリスはこの大陸の地理についてもマティーナ、カリナの教育で完璧に覚えている。ビラル火山は、この大陸の最大の活火山で、危険な場所でもある。遠征訓練でも絶対に行かないが…理由は主に2つ。1つは元々エンレンことファイアードラゴンの住まう場所として、神聖に扱われていたこと。もう1つは余りの高熱地帯で、近付く事さえ困難だからだ。
「そのビラル火山に何を…?」
「火山の下には、ダイヤモンドがある。炭素を高圧力で固めた物が。」
ランファが質問すると、それに答えたのはフィリスだった。それを聞いて、マティーナも頷く。
「なるべく大きめの、それも2つのダイヤモンドを取ってきて欲しいんだよ。しかも、2日以内に。」
「なるほど…だから急いで来て欲しいと書いてあったんですね。」
「婚約指輪とは別に、彼等にペンダントとしてプレゼントしたいんだ。…頼めないかな?」
「勿論、構いませんよ。」
「そうですね。」
「…あの二人の為にも。」
「持って帰ってきます。」
「しかし、岩盤を掘るのは大変ですわね。」
「しかし妾達なら出来るでしょう?」
「久しぶりに遠出だね!」
「わふ!楽しみなのです!」
皆口々に言って、マティーナから超硬度ツルハシを借りて、直ぐにビラル火山へと向かってミロに乗って向かった。
読んで下さっている方々、有り難う御座います。