第62話
四龍とミロが化け物の死体を集めている間、フィリスはベヒーモスと話をしていた。ベヒーモスは、フィリスに恐れを抱いているようだったが、話しているうちにそれも無くなったようだった。
「フィリス様、回収終わりました。」
ランファが代表して伝えると、フィリスは収納魔法で化け物の死体を回収した。
「巨獣ベヒーモス、どうかな?私達と共に来てくれるかい?」
フィリスがそう告げると、
「…妾はそうしたいが、ご迷惑にならぬか?」
そう語る。
「妾は今、人の姿をしておるが、魔素が尽きれば再び巨大になる。その際、お主等を潰してしまうことになりかねぬ。…妾はそれが恐ろしい。」
「ランファ、そうなのか?」
ベヒーモスの話を聞いて、フィリスはランファに質問した。
「確かに人の姿をとるには魔素が必要です。身体が大きければ大きい程に。」
「そうであろう。だからこそ妾はこの人の寄り付かぬ場所で眠っておった…今さら人の世に出るわけにも…」
そう話していると、その場にいる7人の頭に声が響く。
"フィリス、みんな、私の声が聞こえますか?"
優しい声、直ぐにみんなファーリスの声だと認識した。
「ファーリス様ですか?」
"座って目を閉じて、意識を集中してください。"
その声の通り、フィリス達は実行した。
再びフィリス達が目を開けると、そこは建物の中だった。目の前にはファーリスもいた。フィリス達はファーリスの前に膝をつく。
「お久しぶりです、ファーリス様。」
「久しぶりね、フィリス。それにみんなも。顔をあげて下さいな。」
そうファーリスに言われてフィリス達は顔をあげる。
「さて、来ていただいたのは勿論、ベヒーモスに関してです。」
「ファーリス様、妾は…」
「ベヒーモス、今日までよくあの悪魔、ベリアルを封印してくれました。」
「いえ…妾はファーリス様の言いつけを守れませなんだ。本来、妾が倒せばそれで済んだものを…」
「いいえ。貴女は充分以上のことをしてくれました。そこで、他の神とも話をした結果、貴女にご褒美をあげることになったの。」
「畏れ多い話です…」
「貴女はこの神界に住むことを許されました。」
「…」
「永き時間、よく耐えてくれましたからね。ゆっくりと休みなさい。」
そう言われたベヒーモスは、首を横に振った。
「ファーリス様、妾に褒美をくれると申されましたが、別の形でいただきとう御座います。」
「…?言ってみなさい。」
「妾はこのフィリス殿やみんなと共に生きて行きたいのです。ファーリス様はおっしゃられた、妾が仕えるべき人であると。先程、短時間ではありましたが、フィリス殿と話をして、妾が危惧していた寿命も、フィリス殿やみんなは克服している、その皆と共に生きて行きたいのです…」
「…」
「ファーリス様、何卒!」
「フィリス、貴方はどう思いますか?」
フィリスを見て、ファーリスが質問すると、フィリスは笑顔で、
「ファーリス様、私も彼女を一緒に連れて行きたいです。ファーリス様が与えて下さった運命、辛いときは共に乗り越え、楽しいときは共に笑いあう。そんな関係をベヒーモスは知らないはず。共にそんな関係になりたいと思います。」
「フィリス殿…」
「フフフ、解りました。そう言うと思っていました。フィリス、ならばベヒーモスに名前を。」
「…マリアーナ。」
「マリアーナ?」
「ベヒーモスというのはあまり可愛く無かったので…駄目でしょうか?」
「フフフ、マリアーナ…貴女はどうですか?」
「とても気に入りました。主様、妾は今日からマリアーナです。」
「ではマリアーナ、フィリスと契約の誓いとして、おでこにキスをしなさい。」
ファーリスにそう言われ、マリアーナがフィリスの額にキスをする。契約が完了し、フィリスに力が沸き上がる。
「妾は防御魔法が得意で、その力がフィリス殿に与えられたのだと思います。」
「有り難う、マリアーナ。」
「フィリス殿、お慕い申し上げます。」
「さて、フィリス。私が貴方に与えられることは全て与えました。」
「…?」
「四龍の力、ミロの飛行能力、ハクアのスピード、そしてマリアーナの防御、それが私が与えてあげられる全てです。後は貴方の生き方次第。この先の運命も辛いことも多いと思いますが、頑張りなさい。」
「ファーリス様、彼女達を必ず幸せにして、私自身も幸せになります。」
「フィリス、私は貴方達をいつも見ています。善き人生を。」
そう話して、フィリス達は元の世界に戻っていった。
元の世界に戻ったフィリス達は、直ぐにフレデリック王国に戻り、カディラック王、アリシア王女と話をして、ギルドにも報告を済ませ、砂漠の街へと帰って行った。
読んでくださっている方々、有り難う御座います。