第59話
ハクアはモリモリご飯を食べて大きくなる。屋敷に来て3ヶ月程で体長2メートル程の大きさになった。現在ハクアはミロとリビングのソファの上で眠っていた。
「…」
「フィリス様、どうしました?」
「いくら何でも、育つのが早すぎ無いか?」
「…確かに。」
「来た当初、あんなに小さかったのに…」
「可愛いのは変わりないですけど…犬じゃなかったのでしょうか?」
椅子に座ってフィリス達がそんな話をしていると、ハクアが欠伸をして起き上がる。ソファにミロを残してフィリスの近くまでやってくると、膝に乗りたそうに鼻を押し付けてくる。フィリスは仕方なく抱き抱えて膝の上に置くが、フィリスとハクアの重さで椅子が壊れた。バキッという音に驚いてミロが目を覚ます。
「ハクア、何処?」
「ワフッ!」
そう鳴いてハクアはミロの元へと戻る。
「なんというか、言葉を話すと言われても不思議じゃないような気がしてきた。」
「確かにそうですね。」
「…まさか。」
「スイレン?」
「…フェンリルかもしれませんね。」
「フェンリルって…あの?」
「知っているのか?」
ランファに手を貸して貰ってフィリスが立ち上がり、スイレンとライファの方を見る。
「私達がこの大陸に存在する伝説であることはフィリス様も知っていますよね?」
「前に皆からも聞いたし、マティーナ先生達からも授業を受けたから…」
「フェンリルは別の大陸に存在する伝説の存在です。確か…西の方の。」
「…そのフェンリルが何故この大陸にいるのか解りませんが。」
「フェンリルという確認の仕方は無いのか?」
「…フィリス様、ハクアの頭に触れて、精神に入りたいと念じてみて下さい。」
スイレンの言葉に従って、フィリスは再びミロとソファで寝始めたハクアの頭に手を置いて目を閉じて念じてみた。すると、フィリスは久しぶりに不思議な感覚に包まれた。
フィリスが目を開けると、そこには草原が広がっていた。ランファの精神世界に似ているが、緑の草原が何処までも広がっている、そんな世界だった。その世界をぐるりと見渡しても、ハクアがいない。仕方なく草原を進んでいくと、遠くから笑い声が聞こえてくる。
「キャハハハ!」
「待ってぇ!」
フィリスが声のする方へ向かうと、ミロと小さな女の子が追いかけっこをしている。
「ミロ…ハクア…」
フィリスが名を呼ぶと、2人が気付いてこちらを見る。直ぐに2人ともフィリスの元へと走って来る。
「パパ!」
「フィリス様!」
「やはり、君はハクアなのか?」
「はい、この姿では初めましてです!」
ぺこりと頭を下げるハクア。
「ハクア、君はフェンリルなのか?」
「そうです!」
「どうしてこの大陸に?」
「私、4ヶ月前に目が覚めたです。その時にファーリス様っていう神様から、この大陸に行くように言われたです。小さかったから、人間の船に乗り込んで、この大陸に来たですが、フィリス様達の気配を感じて歩いていたですが、力尽きかけていたのをミロ姉ちゃん達に拾われたです。その時はミロ姉ちゃん達がフィリス様の仲間だと知らなかったですが、優しくして貰えて、居心地が良かったので、そのまま過ごしてたです。」
「そうか…ファーリス様の使いだったのか…」
「怒ったです?」
「どうして?ファーリス様の言葉に従って来たのなら、君も家族だ。でも、君も人の姿になれるのか?」
「なれますです。でも、まだ練習中で、精神世界でたまにミロ姉ちゃんと特訓してるです!」
「そうか。もし人の姿を取れるようになったら、一緒にクエストに行ったりも出来るだろうな。」
「勿論です!ミロ姉ちゃんみたいに役に立つ為に頑張るです!」
それを聞いて安心し、フィリスは精神世界から出た。
目を再び開けると、ハクアがジッと目を見つめていた。優しく頭を撫でてやると、クゥンと可愛らしい声を上げた。
「フィリス様、どうでしたか?」
「ファーリス様からの贈り物がまた一つ…感謝してもしたりないな。」
「…やはりフェンリルでしたか。」
「ということは、もっと大きくなりますね。」
「そうね。食費もかかるだろうし、もっとクエストを熟さないといけませんね。」
そう話しているうちにも、ハクアは再びミロと眠りについた。
読んで下さっている方々、有難う御座います。




