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魔弾転生  作者: 藤本敏之
第3章
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第57話

ソーン村までギルド職員とギルドニールソン、ギルドサルバトーレを送り届けて早くも3ヶ月が経過した頃、フィリス達は仕事もないのでゆっくりすることにしていた。先日ソーン村を見に行くと、全員で村の見直しを終えて、そろそろ新しく村人を募集して更に開拓しようと言う話が出ていた。それを聞いて安心はしていたのだが、近々その為の護衛任務が冒険者ギルドから出されるのではないか、そんな話をサーシャから聞いたので、なるべく遠征になる仕事をしていないのだが…冒険者ギルドから無理難題を押し付けられたりもしていたので、その日は休むことにしていた。現在、屋敷にはフィリスしかいない。四龍は全員ミロと一緒にガデル王国へ行って買い物をしてくると言っていた。何でも欲しい物があると言っていたが、フィリスは特にガデル王国に用事も無いので、久しぶりに骨休めをすると言って、屋敷に残った。皆寂しそうな顔をしていたが、1人でゆっくりしたいときもある、そう納得して5人で出掛けていった。フィリスが1人リビングのソファでのんびりとお茶など飲んでいると、玄関がトントンと叩かれた。玄関の扉を開けると、そこには10人の若い男女が立っていた。

「あなた方は?」

「貴方がフィリスさん?」

「そうですが?」

「お願いがあって来ました!」

「…?」

「俺達をギルドエレメントドラゴンに入れて下さい!」

「断ります。」

そういってフィリスは扉を閉めた。トントンと更に扉が叩かれ、五月蠅くて仕方が無い。フィリスは再び扉を開く。

「お願いです、ギルドエレメントドラゴンに…」

「嫌です。」

再び扉を閉める、そんなことが何回も続いた。折角の休みを台無しにされ、フィリスは珍しくイライラしていた。そしてとうとう冒険者ギルドに向かった。冒険者ギルドではサーシャが暇そうにしていた。

「あれ?フィリスさん、1人で珍しいですね?」

「サーシャさん、こんにちは。今宜しいですか?」

「相談事ですか?」

「えぇ。」

「解りました、お茶でも飲みながら話しましょう。」

そういって酒場の方へと向かい、適当な席を選んで着席する。直ぐに給仕の人がやって来て注文を聞く。フィリスはコーヒー、サーシャはお茶を注文する。

「それで、話とは?」

「最近なんですが、ギルドエレメントドラゴンに入りたいという新人冒険者っぽい人が矢鱈と屋敷に来るんです。」

「え?」

「確か冒険者ギルドには、10年以上活躍したギルドが、新人冒険者を教育する、そんな決まりがありますよね?」

「はい…」

「しかし、ギルドエレメントドラゴンは今年で3年目。まだその時期では無いはず。なのに連日屋敷にやってくる、冒険者ギルドから何か言いませんでしたか?」

「あぅ…済みません、実は…」

コーヒーとお茶が到着して、サーシャは話し始めた。話によると、何でもこの世界に存在する冒険者ギルドは全て繋がっている。ガデル王国にある冒険者ギルド本部とは、その大陸にある冒険者ギルドの総括を担当しているとのことで、他の大陸でも冒険者ギルドは存在する。その他の大陸の冒険者ギルド本部から連絡が1ヶ月前に来て、実力のあるギルドが新米冒険者を教育する事を実践して欲しいと書いてあったらしい。10年以上活躍したギルド、それは中々存在しない。若手の頃は無茶をして再起不能になる者が多く、年代を重ねる毎に保守的になり、年と実力が釣り合わないギルドが多いらしい。その為現在実力のあるギルドに教育を頼むという話になったらしい。

「それで、現在実力がトップクラスのギルドエレメントドラゴンにも白羽の矢が立てられたと、こういうことなんです…」

「困ります。元々ギルドエレメントドラゴンはエンレン、スイレン、ライファ、ランファが立ち上げたギルドです。彼女達も私も、部外者をギルドに入れる気は毛頭ありません。」

「ですが…」

「兎に角、私達は誰もギルドに入れるつもりはありません。教育するつもりもありません。」

「フィリスさん…」

「そう言われてもねぇ…こっちも困るんだよ、フィリス。」

そこにはアンジェラが立っていた。

「この砂漠の街、最強と言えばギルドエレメントドラゴン。その最強のギルドに入りたいと言い出しても仕方ない事なんだよ…」

「それは解ります。しかし…」

「だからこの冒険者ギルド特有の決まりを作ったんだよ。」

アンジェラはサーシャの飲んでいたお茶を一口飲んで続ける。

「若手の教育はしない、入りたければそのギルドの長の納得するランクに上がってから、そして迷惑をかけないこと。この三つを条件にしようと考えている。」

「そうなんですか?」

「ただ、この街の冒険者ギルドのルールだからね。ガデル王国やフレデリック王国の方の冒険者ギルドから流れてきた者の事までは面倒みきれていない。そいつらがあんたの所に来てるんだろうね…」

「…」

「まあ、その内収まるようにこちらから他のギルドにあんた達の事を話す気は無いさ。あんた達はこの砂漠の街の最強のギルドなんだ。下手なことして出て行かれたら、大損するのはこっちだからね。」

「解りました、アンジェラさんを信じます。」

「有難う、フィリス。」

そう話してフィリスは帰っていった。屋敷の前にはまだ沢山の冒険者がいた。

「済みません、ギルドエレメントドラゴンに…」

そう話してくるのを全て無視して、フィリスは殺気を押し殺す事もせず、屋敷の中へ入った。暫くして、四龍達が帰ってきた。その頃には冒険者達も諦めて帰っていた。

「フィリス様、何かあったんですか?」

「ちょっと…ね。」

そういってフィリスは四龍に冒険者ギルドで言われた事を話した。

「面倒くさそう…」

「…確かに。」

「全く、冒険者ギルド本部は何も考えて無いわね。」

「それでフィリス様、他の人も入れるのですか?」

「私は嫌だよ。ギルド蜃気楼の件もあるから。」

「そうですよね!」

「…私はこのメンバー以外いらない。」

「身内だけで良いですよね!」

「ふふふ、そうですわね。」

そう話していて、フィリスは周りを見渡す。

「ところで、ミロは?」

「あ…」

「…それが。」

「そのぅ…」

「…フィリス様、怒りませんか?」

「…何が?」

そう話して四龍はフィリスを外に連れ出す。庭ではミロが一匹の子犬と遊んでいた。

「ミロ…?」

一瞬ビクッとなるミロ。バツが悪そうに子犬を抱き抱えてフィリス達の方を見る。

「うー。」

「…その子は?」

「ガデル王国から帰る途中で拾った。」

「砂漠で?」

「ううん、その手前。」

「ミロはどうしたい?」

「…一緒に…暮らしたい。」

「そうか。じゃあ早く屋敷に入れて、お風呂に入れてあげよう。」

そう話すとミロはパァ!と笑顔になる。

「いいの!?」

「勿論、でも面倒はしっかりと見るんだよ。」

「うん!有難う、パパ!」

「ワゥン!」

子犬は一声鳴いて、ミロの腕をすり抜けてフィリスに抱き付く。子犬を優しく抱きしめて、皆で屋敷の中へと入っていった。

読んで下さっている方々、有難う御座います。

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