第56話
人数は、ギルドエレメントドラゴンが6名、ギルドニールソンが5名、ギルドサルバトーレが8名、ギルド職員が26名の合計45名。馬車は5台用意されていたので、フィリスとミロ、ギルドニールソンとギルド職員2名で1台、残りの4台に四龍が1人ずつとギルドサルバトーレから2名ずつ、ギルド職員が6名ずつ乗り込んでいる。ギルド職員が手綱をとる馬車がゆっくりと進んでいく間、四龍は戦術について聞かれたりしていた。元々フィリスが入る前はSランクだったギルドエレメントドラゴン、戦い方も理にかなっているので、これからの戦法に活かしたいらしい。一方フィリスとミロの乗った馬車は、ミロが眠たそうにしているので静かなものだった。が、ギルドニールソンの1人がフィリスに質問した。
「なぁ、フィリスさん。」
「…?」
「どうやったら、強くなれるんだろうな?」
「いきなりの質問ですね。」
「あんた達が来てくれなかったら、俺達は死んでいた。でも、俺達も油断してた訳じゃ無い。…あまりにも敵が多かった。」
「なるほど。何か勘違いされているようですね。私達も最初は強くは無かったんですよ。」
「それは理解してます。どうやったらそこまで強くなれるのか、それが知りたいんです。」
「…私が強くなったのは、家族の為でした。」
「…え?」
「私の両親は、私が4歳の頃から稽古を付けてくれていました。その思いに応える為、私は強くならなければなりませんでした。そして今、大切な家族が増えました。ここにいるミロ、そしてエンレン、スイレン、ライファ、ランファの足を引っ張りたくない。その思いが私を更に高みに登らせてくれています。先ずはただ強くなる事を考えるのでは無く、何のために強くなるのかを考えるべきです。」
「何の為に…」
「裕福に暮らしたい、平和に暮らしたい、それは理由にはなりません。そうですね…先ずは仲間の為に強くなることを目指してはどうですか?お互いが欠点を補い合えば、あなた方は更に強くなれます。まぁ、若輩者の戯言だと言われても仕方ありませんが…」
「…いや、為になったよ。」
「今まで私達は楽な依頼しか受けてこなかったの。」
「安全を確認してからしかクエストを受けてこなかった…それが今回の敗因だ。」
「これからは、ギルド職員の人やギルドサルバトーレの人達を信頼して、守れる強さを身に付けます。」
「それが私達の強さに繋がると思うから。」
「そうですか。…!」
不意にフィリスが馬車の進行方向を睨みつける。
「…?」
「どうやら敵のようですね…」
フィリスはそう言うと、馬車を停めさせ、ミロを座席に優しく寝かせて馬車を降りる。後ろを着いてきていた馬車も停まり、四龍とギルドサルバトーレも降りてくる。
「フィリスさん、敵の数まで解るのか?」
「えぇ、この気配はミノタウロスですね…しかも数が20体程…」
「なっ!?」
「フィリス様、我々は馬車の後方を守ります。」
「…ギルドサルバトーレはサイドを守って。」
「前方に10体程いますが…」
「其方はフィリス様とギルドニールソンに任せます。」
四龍がそう言うと、ミノタウロスが確かに24体、森の中から現れた。
「皆さんはミノタウロスと普通に戦った事は?」
「同時に3体までなら…」
「解りました。後方支援は私がやります。危なくなったら援護しますので、思うとおりに戦って下さい。」
「…解った!」
そういってギルドニールソンの面々がミノタウロスへ襲いかかる。流石Cランクのギルド、連携は見事だ。あっという間に2体のミノタウロスを剣、弓、魔法の連携で倒す。が、そのあとがまずかった。前に出たリーダーが息を吐いた瞬間、左右からミノタウロスが拳を振り上げて襲いかかる。そのミノタウロスの頭部にフィリスはファイアーボールを叩き込んで怯ませる。その直後、ギルドニールソンの猛攻がミノタウロス2体を襲い、あっという間に倒す。
「済まない、助かった!」
「援護は任せて下さい。」
そうしてフィリスの援護もあり、ギルドニールソンは無事に10体のミノタウロスを倒した。後方では四龍が援護してギルドサルバトーレの面々が残りのミノタウロスを撃破していた。
「はぁ…はぁ…」
「もう…限界よ…」
「お疲れ様でした。後は魔石の回収ですね。」
手分けして魔石を回収する。フィリス達ギルドエレメントドラゴンも魔石を受け取って欲しいと言われたが、フィリス達は断った。結局ギルドニールソンとギルドサルバトーレで12個ずつ分けた。そしてフィリスはミノタウロスの死体を集めて収納魔法付きの袋に入れて、ソーン村までの道を急ぐ。途中で野宿するので、その際ミノタウロスの肉を使った料理を振る舞った。皆最初は怪訝な顔をしていたが、その味に納得して、しっかりと食べた。夜の警備もギルドエレメントドラゴンで持ち回りをして、しっかりと休息をとらせて次の日も先を急いだ。そのお陰で、1日半でソーン村まで来ることが出来た。
「無事に到着したな…」
「これが…ソーン村…」
「こんな所に村があったなんて…」
「好きな建物を使ってくれて構いません。」
そう言われて、そこからはギルド職員の仕事だった。1番立派な元村長の家を冒険者ギルドにして、それ以外の家を各ギルドとギルド職員の家にしていった。だが何故かフィリスの生まれ育った家だけ誰も住もうとしなかった。
「いや、昨日の夜、フィリスさんの家だって聞いたから…」
「流石に育った家はそのままにしとこうかと思って。」
それを聞いて、フィリスは嬉しいやら悲しいやら、複雑な感じになった。兎に角、無事に送り届けたのでフィリス達は直ぐにガデル王国に戻ることにした。皆と別れを告げて、ミロに乗って3時間、直ぐにガデル王国に到着した。そして冒険者ギルド本部に行き、キールに報告を済ませて報酬を受け取り、砂漠の街まで帰っていった。
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