第55話
それから1ヶ月、たまにクエストを受注しながら、のんびりと過ごしたフィリス達。冒険者ギルドで難しいクエストが無いか掲示板を見ていると、サーシャに声をかけられた。
「ギルドエレメントドラゴンの皆さん、お待たせしました。ようやくギルドニールソンが復活しました。」
「約1ヶ月、長かったですね。」
「男性は早くても、女性はそう簡単に立ち直れませんよ…」
「それはそうですね。で…ギルドニールソンは?」
「はい、こちらです。」
そういって、サーシャが酒場に案内する。そこには確かにギルドニールソンの5人がいた。
「皆さん、こちらがギルドエレメントドラゴンの皆さんです。」
「あんたらが…助けてくれたこと、礼を言わせて欲しい。有難う。」
「いえ、運が良かっただけです。兎に角命があって良かった。」
「あぁ…で、アンジェラさんとサーシャさんに聞いたんだが、何でも村の警備の仕事があるって…」
「実際には、既に開拓された実在する村を復活させたいのです。」
「…訳ありか?」
「いいえ。ただ、私の故郷なんです。今はモンスターも少ないので、感覚を取り戻すのなら丁度いいのではと思って、アンジェラさんとサーシャさんに紹介しました。」
「…なるほどな。解った、出発は何時だ?」
「ギルドニールソンの準備が出来次第…冒険者ギルド本部からはそう言われています。」
「解った、案内を頼むよ。」
そう言われて30分後、フィリス達はガデル王国へ向けて出発した。
砂漠を越えるのに歩いて3日、ようやくガデル王国の冒険者ギルド本部に到着した。道中たまにモンスターに襲われたが、ギルドニールソンも油断なく討伐出来ていたので、フィリス達も安心した。フィリス達が倒した分のモンスターの魔石もギルドニールソンに渡した。受け取れないと断っては来たが、大量の物資を買わなければ、ソーン村にはなにも無いと伝えると、ギルドニールソンのメンバーも魔石を受け取った。先立つもの、つまりはお金は大切だからだ。冒険者ギルド本部に到着すると、キールが出迎えてくれた。
「待っていました。あなた方がギルドニールソンですな?儂はこの冒険者ギルド本部の長、キールです。」
「初めまして、ギルドニールソンです。」
「早速ですが、明後日出発となります。今日は宿屋に泊まって、明日最後の準備をして下さい。」
「解りました。」
「ギルドエレメントドラゴンの皆さんも、明後日の朝、ここへ来て下さい。」
「はい。じゃあ、ハーヴィ家に行こうか?」
「そうですね。」
「…ゆっくりお風呂に入りたい。」
「歩くのって疲れるね…」
「皆、もう少しの辛抱よ。」
「お腹空いたぁ…」
今回もハーヴィ家にお世話になることにした。屋敷に着くと、マチルダ、コール、ネーナ達は快く出迎えてくれた。滞在する間、その日はゆっくりと旅の疲れをとって、次の日はコールとネーナがミロと遊びたいと言ったので、フィリス達は買い物に出掛けた。と言うのも、2年以上フィリスは籠手と軽鎧、オリハルコンの短剣のメンテナンスをしていなかったからだ。久しぶりに親方のところへ行き、メンテナンスを頼むと、親方から特に問題は無い、最近使ってないだろうから使ってやって欲しいと言われた。確かに中々メンテナンスに出せないので、使用を制限していた事を思い出し、フィリスは相棒達をもっと信頼すべきだなと思った。その後騎士学校へ向かい、久しぶりにマティーナ、テッド、ティファと話をし、良かったら今の学生達を見て欲しいと言われて授業を観察した。フィリスの知っている後輩は最早いないが、フィリス達が卒業までに行った数々の伝説的な話は知られているようで、皆フィリスに会えて嬉しいと言ってくれた。その様子を見て、四龍も嬉しく思う。夕方になり、別れを告げて屋敷に戻ると、遊び疲れてリビングで眠るコール、ネーナ、ミロを見て、あぁ、家族ってやっぱり良いなぁと思った。
翌日の朝早く、フィリス達は冒険者ギルド本部へ向かう。リース達が朝早く作ってくれたサンドイッチを食べながら冒険者ギルド本部の前に着くと、ギルドニールソン、ギルドサルバトーレ、冒険者ギルドの職員達20名ほどと馬車、そしてキールがいた。
「あれ、遅くなりましたか?」
「いや、俺達が早かったんだ。」
「宿賃勿体ないから本部に泊めて貰ってたら…」
「朝早く起こされて出発準備を手伝って欲しいって言われたの。」
「向こうに着くまで、モンスターが出たら宜しくお願いしますね。」
「解りました。ではキールギルド長、出発して良いですか?」
「勿論です。皆さん、くれぐれも体に気を付けて。」
「有難う御座います。」
「行ってきます!」
そうキールに告げて、フィリス達はソーン村へ向けて出発した。
読んで下さっている方々、有難う御座います。




