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魔弾転生  作者: 藤本敏之
第3章
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第51話

翌日、昼頃まで寝て、昼食を食べてからミロに乗って砂漠の街に帰る。途中何事も無く無事に屋敷の中庭にミロが着地すると、フィリス達は薬草を届けに冒険者ギルドへと向かった。112束の薬草を納品すると、充分すぎるとサーシャが言って、約束の報奨金より少し多めにくれた。フィリス達は別に良いとは言ったのだが、規則は規則とサーシャも譲らなかったので、有り難く受け取った。冒険者ギルドには様々な依頼が来ているらしく、掲示板に沢山の冒険者が集まっていた。そういう事も初めてだったので、フィリスは掲示板に記されている依頼書を見てくると言って、1人で掲示板の前に立つ。その間、四龍とミロは少しお茶でも飲むとのことで、冒険者ギルドの端にある酒場に行った。酒場なのに紅茶が充実していると言っていたので、フィリスも後で行こうと思っていた。掲示板の端から端まで見て、早急では無いし簡単であるゴブリンの巣の捜索と討伐の依頼書を見つけたので、その依頼書を取ってサーシャに渡す。サーシャは、

「移動手段も充実しているエレメントドラゴンなら簡単かもしれませんね。では、ゴブリンの巣の捜索と討伐をお願いします。モンスターの魔石を回収して、持ってきて下さい。」

「何匹位の数を狩れば良いのですか?」

「巣を壊滅させて欲しいですね。でも、油断なさらないで下さいね。」

そうして依頼を受注し、今日はミロを休ませて明日出発しようと考えながら皆と合流しようと、酒場に向かうと、四龍とミロに男達が群がっている。

「なぁ、いい話だろう?」

「俺達のギルドと合併すれば、更に強くなれるんだぜ?」

「そうそう。」

「ランファさん、考えて貰えませんか?」

むさ苦しい、ムキムキの男達が3人、優男風だが中々筋肉質なイケメンがそこにはいた。どうやら他のギルドの人間のようだった。

「皆、おまたせ。」

フィリスが話しかけると、それまでウンザリした顔をしていた四龍とミロがぱあっと明るい笑顔になる。

「フィリス様、何かありましたか?」

「良さそうな依頼があったから、クエストとして受注してきたよ。」

「…それは重畳です。」

「早速行きましょうか?」

「いや、ミロが疲れていると思うから、明日出発しよう。」

「そうですね、ミロちゃんは今日もかなりの距離を飛んできましたものね。」

「パパァ、眠いよぅ…」

ミロが抱き付いてきたのでお姫様抱っこして屋敷に皆で帰ろうとすると、

「おい、無視するなよ!」

「てめえ、なにもんだ!?」

「俺達はギルドエレメントドラゴンと話してんだよ!」

筋肉質な男達が口々にいう。フィリスは其方に向き直って、

「ギルドエレメントドラゴンの者ですが?…貴方方は?」

フィリスがそう言うと、イケメンが髪の毛を掻き上げながら言う。

「僕達はギルド蜃気楼の者だ。」

「…はぁ。」

「僕達はね、ギルドエレメントドラゴンとギルド蜃気楼の合併のために話をしているんだよ。」

「ランファ、そうなのかい?」

「そんな話はこの人達が言ってるだけです。」

「そうですよ!」

「…私達はフィリス様の為にギルドを立ち上げただけ。」

「他の人なんか邪魔なだけです。」

「くーくー。」

そう言うと、イケメンは眉間に皺を寄せる。

「貴様、ランファさんを呼び捨てにするとは、どういうつもりだ!」

「どういうつもりも、ランファは私の大切な人です。勿論、エンレンもスイレンもライファもこのミロも…ね。」

「…ランファさん、こいつは誰なんですか!?」

更に不機嫌そうな顔をしながらイケメンはそう言う。

「私達の主、フィリス様です。」

「あ、主ぃ!?」

後ろの男達が叫んだ。

「そうです。」

「…フィリス様、帰りましょう。」

「ミロちゃんをゆっくり休ませてあげないとです。」

「…許さん!」

いきなりいきり立つイケメン。そして、左手の手袋を脱ぐと、フィリスの顔に投げつける。その手袋をフィリスは避ける。

「決闘の証を避けるな!」

「そう言われても、汚い手袋を顔にぶつけられたく無いですから。」

「兎に角、この僕、バートンと戦え!僕が勝ったら彼女達を解放しろ!」

「…盛大に勘違いしているようだが?」

「どうせ彼女達を奴隷のように扱っているんだろう、許せん!」

その言葉に四龍4人がキレた。

「五月蠅いな!」

「…私達は心からフィリス様をお慕い申しているだけ!」

「不純な考えの貴方達と一緒にしないで!」

「…フィリス様への数々の不敬、許せません!」

そう言われてタジタジになる4人組。しかし、フィリスははぁ…と溜め息をついて、

「あんた達の言いたいことは解った。ランファ、ミロを頼む。」

「フィリス様!?」

ミロをランファに渡して、フィリスはバートンに近付き、右手で胸ぐらを掴んで持ち上げる。

「ぐっ!?」

「バ、バートン!?」

「あんた達の言いたいこと、つまりはこの5人をギルド蜃気楼とかいうのに入れて、手籠めにでもするつもりか?」

「ぐぇ!?」

更に力を込めるフィリス。恐ろしいまでの殺気を放っているので、他の3人は動けない。

「私は…彼女達を奴隷のように扱っていないし、扱うつもりも無い。彼女達は家族だ。家族をボロカスに言われること、私はそれが許せない!」

「はっ、離せっ!」

「ふん…」

そういってフィリスはバートンを他の3人に目掛けて投げつける。受け止めきれず、4人はテーブルと椅子に激突する。

「あんた達の仲間、全員呼んでこい…今日限りでギルド蜃気楼は壊滅させてやる!」

「くっ!」

悔しそうな顔をして、バートンとその仲間は逃げるように冒険者ギルドを後にした。その間にランファは家にミロを寝かしつけに行った。フィリスとエンレンとスイレン、ライファは冒険者ギルドの外に出て、ギルド蜃気楼の到着を待った。するとサーシャが近付いてきて、

「フィリスさん、まずいですよ!」

と言う。

「ギルド蜃気楼は構成員30名、内Sランクが12名の、砂漠の街の最強のギルドなんですよ!?Aランクに上がったばかりの貴方では…」

「大丈夫です。」

「…フィリス様は負けない。」

「だってフィリス様は私達より強いですから。」

ニコニコしているエンレン、スイレンとライファ。そこへランファも戻ってきて合流する。

「フィリス様、私達も…」

「いや、私1人で充分だよ。」

そう話していると、ギルド蜃気楼のメンバーが集まる。

「団長、あの男です、僕達のじゃまをしたのは!」

「ほう…」

屈強な男が真ん中に立っている。その男はフィリスの前までやって来て、

「お前か、うちの構成員を締めたってのは?」

「だとしたら?こちらは喧嘩を売られた上に、左手の手袋を投げつけられたんだ。」

「…そうか。」

男はそう言うと、フィリス達に土下座をした。

「許して欲しい、この通りだ。」

「だ、団長!?」

「何でそんな奴に!?」

「馬鹿野郎、お前等も土下座して誤れ!」

団長の叫びに恐れをなして、全員が土下座する。しかし、バートン達だけ土下座せず、何が何やら解っていない様子だった。

「…1人で大量発生したサンドウォームを蹴散らした男、そんな男に我々が勝てるわけが無い…こちらの不注意で面倒をかけました。許して下さい。」

「顔を上げて下さい。貴方達はこの件に関係無いことが解りました。」

フィリスはしゃがみ込んで団長の肩に手を置いて、優しい声をかける。団長達が立ち上がると、キッ!とバートン達を睨みつけて、

「馬鹿な構成員を持つと碌な事が無さそうだ。やはり、仲間以上の家族だけで構成するのが1番だ。」

そういってバートン達に近づいていく。どうすればいいか解らず、バートン達は、

「くそっ!」

と、悪態ついて襲い掛かってきた。その攻撃を躱しながら、全員の鳩尾に打撃を加えて沈黙させる。

「団長さん、我々はギルド蜃気楼と敵対する気はありません。が、この男達のような人間がまたうちに手を出そうとしたら…」

「解っている。今回の件、俺も無関係では無い。寧ろ構成員を束ねきれていなかった。もし何かあったらその時はギルドを畳む。」

「なら不問にします。干渉されない限り、我々も貴方達と敵対する気はありませんから。…皆、帰ろう。」

そう伝えてフィリス達は屋敷へと帰っていった。

「こいつらを破門にする。起きるまではうちの構成員だ。連れて帰るぞ。」

「団長、あの人達…」

「あぁ…実力は俺達より圧倒的に上だ。誰も勝てねぇよ、あれには…」

そういって、フィリス達の背中を見送った。屋敷に帰ったフィリス達は、翌日出発のための準備をして、早めに眠りについた。

読んで下さっている方々、有難う御座います。

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