第50話
ミロがゆっくり飛んでも四時間ほどでソーン村に到着した。ソーン村は時が止まったように誰もいないし静かだった。以前フィリスと約束していたとおり、四龍とミロがたまにやって来て花の世話などをしていたのだろう。村の中は綺麗な花が咲いていた。
「久しぶりだなぁ、ここに来るのも…」
「そうですね、私も久しぶりです。」
「…姉さんとランファは久しぶりだよね。」
「あはは、姉様達は花の世話は出来ないから…私とスイレンが2ヶ月に1回くらい来てたよねぇ。」
「その分私達はギルドの仕事をしていたじゃない。あれが最善だったと思うわ。」
「ミロはどっちにも行ってたから、懐かしい方かなぁ?」
「そうだったのか…」
そう話してお墓へと向かう。村の花も綺麗だったが、お墓の前の花は更に綺麗だった。流石に2ヶ月ぶりだそうなので、雑草は生えているが、綺麗な花が咲いている。元々植えた種の量より増えているのは、皆がスイレンとライファがしっかり世話をしてくれていたからだろう。花畑の真ん中には人が通れる道が出来ており、花を踏むこと無くお墓の前まで行くことが出来た。皆で手早く雑草の処理をして、スイレンが水を撒く。太陽が照っているので、ライファは光を出す必要は無かった。お墓に手を合わせ、近況報告をする。
「父さん、母さん、皆。2年間来れなくて済みません。騎士は辞めました。充分にやったと思いますので…今は冒険者になりました。頑張りますので、見守っていて下さい。」
そう報告して、それから村の実家へと戻り、暫くゆっくりとする。ミロは飛んできたので眠いと言うのでフィリスの部屋で眠らせた。安らかな寝顔を見て安堵した。さて、フィリスと四龍は森へ向かい、薬草を探す。流石誰もいない村だけあって、森は獣道しか無いが、その分茸も薬草も山菜も沢山あった。夕方頃までフィリスと四龍が手分けして集めると、充分すぎる量の薬草と茸が採れた。薬草を束にしていくと、112束出来た。それを収納魔法をかけた袋に入れて村に帰ろうとするとキラーバイソンがいたので、ランファが風魔法で首を落とし、器用に血抜きと皮剥を行って一緒に持って帰る。家の前ではミロが目を覚まして火を起こしていた。その火でキラーバイソンと茸を焼いて食べる。辺りが暗くなってきたので、食事が終わるとミロは再び眠気が来たと言って部屋に帰る。フィリス達も両親の部屋に入り、皆で夜の営みを行って眠りについた。
さて翌日、フィリス達は湖にやって来た。実はこの湖、伝説があると言われていた。それは、この湖の水で体を清めると、病気にならないと言う伝説である。フィリスは元々運命の女神ファーリスとの話で一定以上年も取らないし、体も丈夫である。しかし四龍とミロは違うと思ったので、皆でやって来たのだ。フィリスとミロが裸で湖に入るとまだ冷たい。それでも体を清めていく。と、四龍も裸になって湖に入ってくる。全身隈無くフィリス達は見ているのだが、流石に恥ずかしいので局部は手で隠している。その様子を見て、フィリスも笑顔で四龍に近付き、1人ずつ体を洗っていく。それが終わると、ミロは寒くなってきたから
上がると言って服を着て村へと帰る。フィリスも上がろうとすると四龍にまだ洗ってないと止められて全身を4人に洗われる。揉みくちゃになりながらもゆっくりと水浴びを楽しんだ。
フィリス達は昼から村を綺麗にしていた。枯れ葉や枝を集め、余計な雑草を抜いたり、ツタを切ったりと。そうして集まった物を村の中心へと持っていき、全て燃やす。その間にフィリス達は芋などを串に刺して周囲に置いて夕食の準備をする。
「はぁ…充実した二日間だったなぁ。」
「フフッ、そうですね。」
「…フィリス様と皆がいるだけで楽しい。」
「英気も養えたし、仕事もしたし。」
「本当に楽しかったです。」
「お腹空いたぁ…」
それぞれが頑張ったお陰で村も綺麗になったし、お墓参りも無事に出来た。夕飯を食べ終えるとフィリスは家に戻って地下室へと入っていった。四龍とミロも後に続く。と、そこには大小様々な大量の魔石があった。
「フィリス様、これは!?」
四龍とミロが驚いた声をあげる。
「…昔、この村にいた頃に倒したモンスター達の魔石だよ。」
「…この量は。」
「10年間溜めた物だからね。そりゃあ多いよ。」
「これ全部換金したら、冒険者ギルドが潰れますよ!?」
「解ってる。だけど収納魔法を覚えたから、持ち運ぶのには問題なくなったからね。」
「そうですね。ここにあっても勿体ないですから。」
「この袋に入れるのを手伝って欲しい。」
「ミロもやる!」
そういって手分けして魔石を袋に入れていき、作業が終わった頃には夜になっていた。そしてフィリス達はその晩もソーン村で過ごした。
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