表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔弾転生  作者: 藤本敏之
第3章
49/129

第48話

フィリスが出発して直ぐに四龍とミロは屋敷に戻る。

「でも、大丈夫かなぁ?」

ミロが心配そうな顔をする。

「パパは強いけど、サンドウォームの大群に囲まれたら、対処できないかも…」

「そうなのよねぇ…アンジェラさんの話だと、サンドウォームが大量発生してるらしいし、心配だわ…」

「…しかも足元が悪いし。やっぱり着いていくべきだったかも…しれないね。」

エンレンとスイレンがソファーに座りながら言う。

「でもきっと大丈夫ですよ。」

「ライファ、何か思い当たる節があるの?」

ライファの言葉にエンレンが質問する。

「だって、ランファ姉様と契約しているのですよ。それに、スイレンとだって。水で砂を固めたり、風で砂を吹き飛ばすことも可能ですから。」

「あっ!」

「…そうだった。」

「それにフィリス様自身の特殊な召喚魔法もありますからね。心配すべきは多少のブランクですが、この間の砦の一件を見ても、そんなものは無いでしょう。私達はフィリス様を信じて待ちましょう。」

ランファがキッチンでお茶を入れて、リビングにやって来た。5人はフィリスが戻るのを待つことにした。


それから5時間が経過した頃、

「おかしい…いくら何でも遅くないかしら!?」

「…行きに1時間以上かかるから仕方ないわよ、姉さん。」

「それにしても遅すぎませんか?」

「…うーん。」

「ミロが見てこようか?」

そう話していると、屋敷の扉が叩かれる。ドンドンッ!と強く叩かれたということは、フィリスでは無いだろう。ランファが代表して扉を開けると、サーシャが息も絶え絶えに立っていた。

「み、皆さん、大変です!」

「サーシャさん…?」

「さ、砂漠で…砂漠で沢山の行商人がサンドウォームに襲われて…ハァ…ハァ…特命が出ました!」

「落ち着いて下さい。」

「ギルドはCランク以上の冒険者を集めて…討伐を行うそうです!エレメントドラゴンも現在Cランクですので、特命が出ました!」

「解りました。」

「砂漠に大量のサンドウォームが…」

「…フィリス様が危ない。」

「急ぎましょう!」

「ミロが皆を運ぶよ!」

そういって屋敷を飛び出す四龍とミロは急いで砂漠へと向かった。


ミロが急げば砂漠まで10分とかからない。が、空から見ても、サンドウォームは何処にもいない。

「おかしいなぁ?」

「…大量発生じゃないの?」

「サーシャさんが嘘を言うわけないし…」

「ミロちゃん、少し高度を落として下さい。」

「うん!しっかり掴まってて!」

そうしてミロが高度を落としていると、人影が一つ、砂漠の中に見えた。

「あれって…?」

「…間違いない!」

「フィリス様です!」

「良かった!」

「パパ!」

空からミロが大きな声で呼ぶと、フィリスは空を見上げた。その近くにミロは着地し、子供の姿に戻る。5人がフィリスに近付いていくと、返り血で汚れたフィリスの姿があった。

「皆、どうしたんだ?」

「なんだじゃありませんよ!」

「…サンドウォームが大量発生したとのことで。」

「私達に特命が出たんです。」

「フィリス様、大丈夫でしたか!?」

「パパ、臭い…」

「御免よ…」

そう言うとフィリスは自身にクリーンの魔法をかけて汚れと匂いを落とす。

「砂漠を出るまでに、またサンドウォームに襲われると思っていたから、砂漠を出てから落とそうと思ってたんだ。」

「ではサンドウォームは…」

「無事に倒したよ。」

「…流石です。」

「では直ぐに帰りましょう!」

「こんな砂まみれの場所では話し辛いです。」

「そうだね。ミロ、頼めるかい?」

「勿論だよ、パパ!」

再びミロは鳥の姿になり、皆で乗り込むと、砂漠の街に向かった。


砂漠の街の冒険者ギルドの前には、サンドウォーム討伐隊が結成されていた。

「良いかい、なるべく多くのサンドウォームを討伐して欲しいんだ。ライバル意識はいらない。大切なのは人の命だよ!」

アンジェラが皆を束ねて叫ぶ。それに同意するように皆が頷いている。

「ったく…エレメントドラゴンが単独で出てしまうとは…」

「仕方ないですよ、大切な人が、問題の場所にいるんですから…」

「そうだね…ん?」

アンジェラが空を見上げる。それを見てサーシャも空を見上げると、ミロがギルドに向けて飛んできていた。ミロはギルドの前に着地すると、子供の姿に戻る。

「フィリス!?あんた、無事だったのかい!?」

「アンジェラさん、サーシャさん、戻りました。皆が来てくれなかったら、後1時間程かかっていました。」

「でも…大量にサンドウォームが…」

「あぁ、それなんですが、何匹か倒してきましたので、換金してもらって良いですか?」

「…はぁ?」

「なっ!?」

「おいおい、嘘はいけねぇぞ。」

「そうだ!お前、何も持ってねえじゃねえか!」

「五月蠅いね、静かにしな!フィリス、討伐したっていう証拠は?」

フィリスは胸元から小さな袋を取り出して、その中からサンドウォームの死体を取り出す。その数…28体!直ぐに冒険者ギルドの前がサンドウォームで埋め尽くされた。そして…途轍もなく臭い!

「うげぇ!」

「くっ、臭っ!」

「まあ…サンドウォームの血液は確かに臭いですけどね。」

「…あんた、なんで平気なんだい?」

「騎士団にいたとき、よく残飯を処理で燃やすために集めたりしてました。それよりはマシかなって…」

「ま、まあいい。サーシャ、あんたが鑑定しな!」

「アンジェラさん、酷すぎませんか!?」

「まあ…確かにこれでは鑑定しようが無いか。」

そう言うとフィリスはクリーンの魔法をサンドウォームの死体にかける。直ぐに匂いは無くなった。

「これで大丈夫かな?」

「先にやっとけ!」

周りから野次が飛ぶ。そしてサーシャが鑑定を始めると、

「凄い…」

そう一言漏らした。

「どうしたんだい、サーシャ?」

「いえ…サンドウォームの魔石って、大抵汚れているんですが…」

「そうだね。色が真っ黒だ。しかもでかい。」

「これをみて下さい、アンジェラさん。」

そういってアンジェラに魔石を見せるサーシャ。そこにあったのは、真っ青な色のボーリングの玉ほどの大きさの魔石だった。

「これは…!」

「一撃で倒したとしか思えません。」

「フィリス、あんた、どうやったんだい?」

「知られたくないこともあるんです。余り追求しないのが冒険者でしょう?」

「…そうだね、悪かった。この魔石達は換金させて貰って良いかい?」

「勿論です。」

「暫く預かって鑑定をするから、待ってて欲しい。で、試験だけど…」

アンジェラは一呼吸置いて、

「合格だ。むしろ、黄じゃなく赤まで上がって貰うよ。」

「それって…」

「あぁ。あんたはAランクだ。で、エレメントドラゴンもSランクからは下がるがAランクだよ。おめでとう。」

「良かったぁ!」

「…フィリス様、おめでとう御座います。」

「やりましたね!」

「今夜はお祝いですね!」

「パパ、おめでとう!」

四龍とミロに抱き付かれて少し困惑するが、その後は屋敷に戻り、ささやかながら宴会をした。その場にアンジェラとサーシャも来てくれて、一緒に喜んでくれた。

読んで下さっている方々、有難う御座います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ