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魔弾転生  作者: 藤本敏之
第2章
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第45話

フィリスとカーマインがミロに乗ってガデル王国へと向かっている。砂漠の街を越えて砂漠地帯に入ると、眼下に土煙を見つける。

「ミロ、あの前に着地出来るか?」

「勿論だよ、パパ!」

そうしてミロはゆっくりと着地する。走っていたのは馬車で、その中にいたのは砦から逃げ出したローグ・ニルスとその部下36人だった。

「やぁ、隊長。何処へ行くつもりですか?」

「き、貴様、フィリスにカーマイン!?貴様らも砦を捨てたのか!?」

「まさか。モンスターはフィリス達が全て討伐した。」

「なんだと!?」

「そんなことを話すためにここに来たわけじゃ無い。ガデル王国に行くのでしょう?送っていってあげますよ。」

フィリスはそう言うと、馬車に長いロープを巻き付ける。

「何をするつもりだ!?」

「乗り込んで下さい。あぁ、中では何処かに掴まっておいて下さい。ミロ、このロープを。」

フィリスはロープの先をミロの右足に縛ると、再びミロに乗り込んで空を飛んだ。馬車は揺られながらも、ミロがゆっくりと飛んでいるので落ちることは無かった。1時間程空を飛んで、ガデル王国の城の中庭に到着する。ミロはゆっくりと着地し、フィリスはロープを外す。馬車の中は失禁して気絶している者達ばかりだった。勿論、ローグも例外では無い。

「カーマインさん、どうしましょうか?」

「フィリス、少しここで見張っていてくれ。騎士達に捕縛させる。」

カーマインは城の中に入り、部下を呼んできて全員をロープで縛る。

「フィリス、国王の下へ…」

「いいえ、それ以上に大切なことがあります。」

「…?」

「ミロを連れて屋敷に帰ります。マチルダさん達に会いたいので。」

「そうだな。ローグ達が起きたら連絡をいれるように伝えておこう。それまでは自由にして良いよ。」

「有難う御座います、カーマインさん。ミロ、行こうか。」

「うん!」

人の姿になったミロを連れて、屋敷へ向かった。屋敷ではマチルダ、コール、ネーナ、リース達メイドと執事が出迎えてくれた。皆に抱きしめられて、少し困惑するフィリス。そして今まであったことを話していた。2時間後、カーマインの部下の1人がフィリスを呼びに来た。フィリスはミロをマチルダ達に預けて城に向かった。謁見の間にはマディソン、カーマイン、大臣の他に、マティーナがいた。フィリスが中央まで歩いていく。

「国王陛下、フィリス・ハーヴィ、参りました。」

「うむ。久しいな、フィリスよ。元気そうで何よりだ。しかし、約2年間、どうしていたのだ?何の連絡も無かったが?」

「おかしいですね。私は毎月、家族や友人に手紙は出していましたよ?」

「フィリス君、君からの手紙は来ていなかったよ?」

「…?」

「その件についても、奴等に話を聞かねばならんな。大臣よ、奴等をここに。」

「はっ!」

そう言うと、大臣は部屋を出て、ローグ達を連れてくる。ローグ達は未だにロープで縛られていた。

「さて、フィリスよ。なぜ其方は帰ってこなかったのだ?」

「毎日、そこにいるローグ隊長の命令で、砦の雑用をしていました。この2年間、休みはありませんでした。その為この国に帰ってくることは出来ませんでした。」

「何を嘘を!?国王陛下、フィリスは嘘を…」

「黙れ。フィリス、続けよ。」

「はい。手紙は家族宛に友人達や恩師であるマティーナ先生にも渡して貰えるよう、先輩騎士であるそこの人達に渡していました。規則でまとめて手紙は送ると言われていましたので。」

「嘘をつけ!」

「俺達はお前から手紙なんか預かってねぇ!」

「五月蠅い!」

マディソンが止める前に、マティーナが叫んだ。

「フィリス君、そんな規則は無いよ。騎士たる者、重要な事をしたためて手紙で報告することは認められている。」

「はぁ…それで1週間前に行商人にお願いして、カーマインさん宛に手紙を出したのです。」

「それは届いたよ。何やらおかしいと思ったので、陛下にお願いして国境まで視察に行こうとしていたんだよ。」

「そうだったのですね…」

「何を嘘をベラベラと話している!フィリス、貴様は嘘つきな上に命令違反者だ!」

「ふむ…どういう事だ、ローグ?」

マディソンがローグを睨みつけていた。

「砦の全ては私に一任されていた。その私が砦を放棄する、そう告げても放棄しなかった、重要な命令違反だ!」

「…」

「そんな奴が処罰されないで、我々が処罰を受けるのは筋が違う!」

「そうだ!」

ぎゃあぎゃあ喚き散らすローグとその部下達。フィリスは胸元に手を入れて、小さな丸い玉を取り出すと、ローグ達の前に転がした。その玉からは、フィリスがローグ達にボロクソに言われている声が出て来た。

“おいフィリス、さっさと飯を作れ!“

“酒買ってこい、お前の金で!“

“俺の番だぁ!?お前がやっとけ。“

そんな声が流れる。勿論、砦を放棄する内容をローグが口にした時の声も流れた。

「固有魔法ヴォイス。マティーナ先生から教わった、声を真似する魔法、それを何かに付与すると、声を記憶する魔法の道具になります。」

「なっ!?」

「因みに、隊長達が逃げ出した後の、我々の声も入っています。記憶期間は約半年です。」

「で、デタラメだぁ!」

「もう良い…」

マディソンが言う。

「ローグ・ニルス及びその部下36人、全員打ち首にせよ。罪状は、未来ある若者に対しての偽証、仕事の放棄、そして騎士の誇りへの中傷。そやつらの家族は国外追放。大臣、良いな?」

「はっ、ではその通りに!」

「まっ、待って下さい、陛下ぁ!」

聞く耳持たず、連れて行かれるローグ達。そこで漸く、

「ふぅ…フィリスよ、済まなかったな。」

「…」

「今砦はどうなっている?」

「私の大切な人達と、先輩騎士12名が駐屯しています。」

「カーマインよ、直ぐに代わりの者達を組織せよ。」

「はっ、直ちに!」

「フィリスよ、其方に休みを与えようと思う。いつまでが良い?」

「…いいえ国王陛下、私は騎士団を辞めます。」

「…何故だ!?このようなこと、2度と無いようにする!辞めずに…」

「父上、それでは俺の近衛騎士にしたいのですが?」

急に謁見の間の入り口から声がかかる。そこにはガデル王国第一王子、マルクス・ガデルが立っていた。

「お前がフィリス・ハーヴィだな?俺の近衛騎士にならんか?優遇するぞ。」

ニヤニヤしながらマルクスはフィリスを見る。しかしフィリスはマディソンをジッと見て、

「私が騎士になったのは、育ててくれたカーマインさんとその家族への恩義のため。その結果が2年間家族にも会えない、部下も出来ないような環境。2年も無駄にしました。これ以上、人生を無駄にしたくないのです。」

「おい、俺を無視するな!」

「カーマインさん、昔私に言いましたよね?私は私だと。恩義は返し切れていませんが、自分の道を進みたいのです。」

「貴様!」

横でぎゃあぎゃあ五月蠅いマルクス、いきなりフィリスに殴りかかるが、フィリスはそれを見ずに躱して足払いをかけて転ばせる。

「あぁ、好きに生きて良い。君は君なのだから。私やマチルダ、コールとネーナ、リース達も君の家族だ、何時でも帰ってくるといい!」

「有難う御座います、カーマインさん。では陛下、私は騎士を辞めます。そして…家名も捨てて、ただのフィリスに戻ります。」

「…うむ。そこまで覚悟を決めたのならば仕方が無い。が、そこの我が愚息を無視しないでやってくれまいか?」

「失礼しました。」

そう言うと、フィリスはマルクスを立たせてやる。

「…俺の攻撃を軽々と躱す、噂以上だ!やはり俺の近衛騎士に…」

「マルクス君、黙ってなさい!」

それまで黙っていたマティーナが怒鳴る。その声にビビって黙るマルクス。

「では失礼します。」

そういって踵を返して謁見の間を出ていくフィリス。それに付き添うようにマティーナも出て来た。

「フィリス君、御免ね。私がしっかり調べていれば、君がこんな辛い目に遭わなくて良かったのに…」

「マティーナ先生のせいでは無いです。が、無能な奴等を相手に我慢できた自分を褒めたい気分です。」

「確かにね。それで、これからどうするんだい?」

「冒険者になります。四龍とミロが待っていますから。」

「そっか。実は私も彼女達に仕事を頼んだりしてたんだよ。エレメントドラゴン、良い名前だよね。」

「はい。」

「もう出発するのかい?」

「砦に行きます。皆を迎えに行かないと。」

「うん。頑張ってね!」

「解りました。テッドとティファに宜しく伝えて下さい。」

マティーナと別れて、屋敷に向かい、荷物を整理する。父親のモーティスの剣を腰に差し、マチルダ達に別れを告げて、フィリスはミロに乗って再び砦へと向かった。

読んで下さっている方々、有難う御座います。

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