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魔弾転生  作者: 藤本敏之
第2章
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第39話

朝になり、フィリスはガデル王国へ帰ることになった。その際、四龍は悲しそうな顔をしていたが、会おうと思えば何時でも会えるし、また会いに来るとのフィリスの言葉を聞いて笑顔になる。フェニックスの姿に戻ったミロの背中に乗り込み、ソーン村を後にする。暫く飛んでいると、ミロが話しかけてきた。

「パパ、下の様子が変だよ?」

フィリスが下を見ると、土煙をあげて物凄い勢いで走っている集団を発見した。その進路は…ガデル王国だ。

「…ミロ、全速力で頼む!」

「任せて!」

最速で飛ぶミロ、それに捕まるフィリス、僅か10分程でガデル王国のハーヴィの屋敷の上に到着し、

「ミロ、直ぐにソーン村に戻ってくれ。そして皆に直ぐに来るように伝えてくれ!」

そう告げると庭に目掛けて飛び降りる。ミロは方向転換し、ソーン村へ向かう。フィリスは風魔法で着地に成功し、直ぐに庭の窓から屋敷に入る。

「あら?フィリス様、お早い上に変なところから入ってきましたね?」

「リースさん、カーマインさんは?」

「まだお休みですが?」

「急いで起こして欲しい。」

「なんだ、フィリスじゃないか?」

階段の上を見ると、カーマインが降りようとしていた。

「もう少しゆっくり眠ろうと思っていたけど…何かあったのかい?」

「カーマインさん、今すぐこの国の全勢力を集めて下さい。」

「…へ?」

「あと1時間ほどで、モンスターの大群がこの国に来ます!」

「なんだって!?」

「さっきミロに送って貰って、上空から見ました!」

「解った、城下町の人々にも知らせよう!私は城へ向かう!」

カーマインは急いで準備して城へと向かった。フィリスは城下町を囲う防壁の警備員達に進言に向かった。


1時間後、モンスターを迎え撃つ準備は整っていた。防壁の上でカーマイン率いる精鋭騎士団約150人が外を警戒していると、凄まじい勢いでこちらに向かってくる土煙が見えた。

「あれが…全部モンスター…なのか…?」

「恐らく魔物の生き残りが組織しているのでしょう。」

「フィリス、四龍は?」

「既に到着してますけど、彼女達にはそれぞれ別の場所を守って貰っています。」

「そうなのか?」

「だからこそ、正面に全勢力を向けていられるんですよ?」

「いや、その作戦、聞いていないのでな…」

「カーマインさんは忙しそうにしていましたから…」

そう話していると、伝令がやって来た。

「申し上げます。偵察部隊からの報告、モンスターの数、約2000体。うち、ゴブリンが1000体、トロール、ミノタウロスが200体前後、ラウンドウルフが600体前後、それと…」

「それと…なんだ?」

「見たことの無い人型のモンスターがいたと。恐らく魔物では無いかとの報告です。」

「フィリス、どうする?」

「…」

流石にこのままガデル王国に接近されるわけにはいかない。フィリスはふと考えて、

「…試してみたい方法があります。」

「どんな作戦だ?」

「それは…公表されたくないことですので言えません。」

「…解った。魔物とまともに闘えるのはフィリス、君だけだ。雑魚は私達に任せろ。」

「いや、まとめて倒します。」

そう言うと、フィリスは防壁から外の方へと飛び降りて、降りながら右手にコルトパイソンを召喚する。そして左手に意識を集中する。

「エンレンから貰った火力、スイレンから貰った制御力、ライファから貰った飛距離、そしてランファから貰った範囲、その全てを込めて…」

そう呟き、魔素を左手に込める。すると左手から眩い光が漏れる。手を開くと、そこには虹色に輝く1発の弾丸が出来上がっていた。

「これなら…!」

その弾丸を、コルトパイソンのシリンダーに入れ、撃鉄を起こし、

「喰らえ、アルティメットバレット!」

接近してくるモンスターの方向へと発射した。ズドンッ!と音をたてたコルトパイソンのその反動で、フィリスの体は防壁にめり込んだ。だが、発射された弾丸は光よりも早くモンスターへと到達し、その内の1体のゴブリンに直撃すると、一気に大爆発を起こす。凄まじい衝撃波を引き起こし、巨大な爆発雲があがると、そこにはクレーター以外何も残っていなかった。

「あのクレーターに向かう!半数は私に続け、残りは防壁を守れ!」

カーマインは指示を出すと、防壁を降りてクレーターへと向かおうとした。が、防壁の扉の前でふと気付くと、扉の横の壁にめり込んでいるフィリスを見つけた。

「フィ、フィリス!?」

息はしているが、凄まじい威力だったのだろう、その場にいた全員で壁を掘り、ようやく脱出させた。防壁は普通の堅さでは無いというのに…だ。

「あの威力…隠せという方が無理だと思うのだが…」

なんにせよ、義息の活躍を称えると同時に隠し通せるか心配になるカーマイン。そこに、マティーナが到着する。

「カーマイン君…やっぱりフィリス君が…?」

「はい。今回も私達を助けてくれました。」

「…そっか。」

そう言うとマティーナはフィリスに回復魔法をかける。

「目を覚ましたら、直ぐに私の元に来るように伝えて欲しい。それまではこの事をマディソン君にも内緒にしておくんだ。そうだね…四龍の皆…」

そうマティーナが言うと、物陰から四龍の4人がこちらを見ていた。

「マティーナさん…」

「…フィリス様は?」

エンレンとスイレンが心配そうに言う。

「大丈夫。外傷はないから、多分魔素がなくなったんだと思う。」

「そうですか…」

「良かった…」

ライファとランファも安堵の表情を見せる。

「カーマイン君、彼女達に君の屋敷までフィリス君を運んで貰おう。」

「はい。」

そうして四龍によってフィリスは屋敷まで連れて帰られた。その際、誰が運ぶかで言い合いがあったが、結局ランファがフィリスを背負って運んだ。屋敷にはミロもいて、心配そうな顔をしている。直ぐに部屋に寝かされ、その周りで皆で看病をした。


フィリスは次の日には目を覚ました。その時のミロと四龍の嬉しそうな顔は、フィリスは一生忘れないと思った。フィリスが元気になったので、名残惜しいとは思いながらもミロと四龍はソーン村へと帰っていった。そしてカーマインから元気になったらマティーナのところへ行くように言われた。体調は戻っていたので、直ぐにマティーナの元へと行く。校長室に着いてノックをして入っていくと、マティーナがフィリスを抱きしめた。

「マティーナ…先生?」

「無茶は駄目だよ、フィリス君。」

「…はい。でも、試してみたかったのです。四龍から貰った力を…」

「それは解るよ。私でもそれは思ったりするだろうけど、もう少し皆を信用しよう?騎士団も強いし、この国の冒険者達も優秀なのだから。」

「解りました。」

「で、これは私からの贈り物だよ。」

抱き付くのを辞めてマティーナがフィリスに腕輪を渡す。金色の、何の装飾もされていない腕輪だった。

「それを着けると、体力や魔素が一定以上出せなくなる。ただし、その分体の成長は今まで以上になる。これを渡すのは、2年後にしようと思っていたけど、好きなタイミングで着けて。そしたら君は更に…」

マティーナが後ろを向いてそう話始め、言い終わる前にフィリスはその腕輪を右手に装着した。

「あー、まだ大事な話をしてるのに!?」

「私は何時でもいいんです。強くなりたい、その為ならばもっと辛い授業でも耐えますよ。」

「…解った。しっかりと着いてきてね。」

「解りました。」

そう告げてフィリスは屋敷へと帰る。体に倦怠感はあるが、やる気に満ちあふれているフィリスには関係ないようだった。

読んで下さっている方々、有難う御座います。

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