第36話
フィリスが魔神王ゼノヴィスを倒した次の日、多くの冒険者達が武装してフレデリック王国へとやって来た。しかし魔物は全て討伐されていると知り、安堵する者、賞金稼ぎ出来なくて残念がる者、様々な冒険者がいた。その中で最も安堵していたのは、フレデリック王国の王子、カディラック・フレデリックだった。彼は急いで城まで来ると、既に倒された魔神王ゼノヴィスの死体を確認して、フィリス達に感謝を述べた。
「皆さん、本当に有難う御座います。お陰でフレデリック王国滅亡の危機は防ぐ事が出来ました。」
そう述べるカディラックに、マティーナが言う。
「魔物は討伐されたけど、国の再建はどうするの?」
「取り敢えず国民の大半は家に閉じこもっていたらしく、無事でした。魔神王ゼノヴィスも、王家の者、つまり私の両親と兄弟と、それを守ろうとした兵士達だけ殺したようですので、何とか再建は出来そうです。」
「そうなんだね。」
「しかし我々だけではどうにもならないので、其方の国、ガデル王国にも支援をお願いしたいのですが…私自らそのお願いに行こうと考えています。」
「そうですか…」
「それでですね、貴方方に道中を案内して頂きたいのですが…」
「私は構わないけど、皆は如何なのかな?」
マティーナがフィリス達の方を見ると、テッド達は頷いていた。しかし、フィリスのみ考え事をしていた。
「…フィリス君?」
「いや、帰りは皆に乗せて貰おうと考えていたのですが?」
そういって、フィリスは四龍の方を見る。確かに四龍それぞれに乗れば、予定よりも早く着く。しかし一人足りないのが実情だった。
「あまり負担にならないように、一人一人別に乗ろうと思っていたんですが…」
「確かにその方が安心だけど…」
そう考えていると、謁見の間に女の子が一人入って来た。赤い髪の、可愛らしい女の子だった。冒険者達に追われながら入って来たのだろう。少し息をきらせていた。
「…」
「こらっ、勝手に入るな!」
冒険者の一人がそう言うが、女の子はキョロキョロ周りを見渡して、フィリスを見つけると、
「パパ!」
と言って走ってフィリスに抱き付いた。フィリスも優しく抱きしめ返す。
「えっ!?」
「フィ、フィリス!?」
「こ、子供がいたのですか!?」
テッド、ティファ、カディラックが驚くが、フィリスは落ち着いて、
「ミロ、大きくなって人の姿が取れるようになったんだな?」
「うん!」
そう言うフィリスとミロと呼ばれた女の子。
「やっぱり…フェニックスだったんだね。」
「なっ!?禁忌の鳥、フェニックス!?」
そう言うとカディラックは剣を抜いて構えを取る。が、それをフィリスは睨みつける。
「やめてくれませんか?ミロが怖がっています。」
カディラックはそう言われて、じっくりミロを見る。5歳程の女の子がカディラックを見て震えている。その様子を見て、カディラックは剣をしまった。
「…失礼しました。」
「いえ、解って頂ければ…」
「でもこれで何とかなるんじゃ無いかな?」
「どういう事ですか?」
「四龍の皆に私達が乗って、フィリス君はミロ君に乗ったら、早くガデル王国に着ける。」
「はい。ミロ、頼めるかい?」
「うん、パパ!」
「えー!」
「…フィリス様を…」
「私達も乗せて飛びたいですよ。」
「まあまあ、今回は諦めましょう。」
そう話すのは四龍の4人。だがフィリスの命令は絶対と考えているので、フィリスの命令に従い、エンレンはテッドを、スイレンはティファを、ライファはマティーナを、そしてランファはカディラックを乗せることになった。準備を整えて直ぐに出発するが、マティーナ以外、空を飛ぶのは初めてだと言うので、なるべく速度を落として飛ぶことになった。勿論、フィリスを乗せたミロも、四龍と息を合わせて速度を調整してくれたので、誰一人落ちることなく3時間ほどでガデル王国に着いた。ガデル王国に着くと、カディラックは直ぐにマディソンと謁見し、これからのフレデリック王国の再建方法を話しあった。その結果、ガデル王国が誇る騎士団の約三分の一をフレデリック王国に送り、警備や警護をすることになり、国民の中からもフレデリック王国に移住してフレデリック王国再建に尽力することに決まった。また、マディソンの娘の一人、以前フィリスが顔を焼いて、その後治療したアリシアがカディラックと婚約し、これによって名実ともにガデル王国とフレデリック王国は親戚になるので、双方これからも国を盛り上げていくことに決まった。その話が決まるまで、フィリス、テッド、ティファ、マティーナはその間待たされることになった。その時に、フィリスは四龍に対して、まだ学生だから力は必要ないと伝えて、ミロと一緒に元ソーン村があった場所に行って、村を守って欲しいと伝えた。始めは嫌だと言っていた四龍達も、最後は納得してソーン村に向かった。その後、親方の元へ行き、オリハルコンの短剣が役に立ったことを伝えて、ダマスクス鉱石製の腕輪と指輪と共にメンテナンスを頼んだ。親方は快く受けてくれた。そして一週間後、カディラックがフレデリック王国へと帰る前に、フィリス達は城へ集められた。謁見の間に集められ、中央で跪くフィリス達の姿があった。
「此度の魔神王ゼノヴィス、及び魔神カーギル、魔神サラサの討伐、及びフレデリック王国を救ってくれたこと、感謝する。」
マディソンがそう切り出す。するとマティーナが話をする。
「今回の功績は、全てこの3人です。私は結局何も出来ませんでした。」
「…そうなのか?」
「いえ、先生がいなければ、東の砂漠を抜けることも、魔神王ゼノヴィスを倒すことも出来ませんでした。」
フィリスがそう言うと、テッドもティファも頷く。
「うむ…それでだ。今回の其方達の功績に対して、望む物を与えようと思う。何が良い?」
「私は静かに騎士学校を運営出来ればそれで良いです。」
マティーナはそう話す。しかしフィリス、テッド、ティファは顔を見合わせて、
「我々はまだただの学生です。卒業してから考える、それでは駄目でしょうか?」
代表してフィリスがそう伝えると、マディソンは笑って、
「あい解った。其方達が卒業し、成人した後に話をしよう。これにて謁見は終わりだ。」
そうして話は終わり、帰路についた。
「はぁ…相変わらず緊張するなぁ…」
「そうだね…」
「まあ二人も堂々としていたし、良かったよ。」
謁見の間から出て、テッド、ティファ、マティーナはそう話すが、フィリスは考え事をしていた。
「ところで君達。後2週間は休みがあるけど、これからどうするの?」
「私は宿題がまだ出来てないんで、やらないといけません。」
「あっ、俺もだ!」
ティファとテッドがそう言う。
「フィリス君は?」
「私はもう終わっているので、ソーン村に行ってこようと思っています。両親、村の人の墓参りのために。ミロが呼べば来てくれるので、1日で戻って来れると思いますけど。」
「まあ私もきっとカリナに仕事を言われるだろうから。まあゆっくり休んで、また学校で会おう。お疲れ様。」
そういってマティーナは手の平を下にして手を出す。その上にそれぞれ同じように手を出して、お互いを労いあった。
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