第34話
フィリス達5人も直ぐにフレデリック王国に到着すると、既にマティーナ、テッド、ティファが魔人達と城門前で戦っていた。相手の数は約100人、対するこちらはたったの8人。だがテッドとティファが前衛で戦い、、マティーナが後衛で隙を見つけて魔法を叩き込んで、魔人の数は減ってきていた。
「マティーナ先生!」
「フィリス君!」
フィリスもマティーナと同じくテッドとティファを魔法で援護しようとすると、
「フィリス様、ここはお任せ下さい!」
ランファ達が前へと出る。ランファとライファがテッドとティファを背中から抱えてジャンプすると、間髪入れずにエンレンとスイレンが魔法を発動する。
「よくも操ってくれたね!」
「…お返し!」
炎と氷が混ざり合い、全てを破壊する衝撃波がフレデリック王国の城門まで届く。間にいた魔人達はなすすべ無く消し飛んでしまった。
「ふふん、どうよ!」
「…これが私達姉妹の力。」
得意げな顔をするエンレンとスイレン。フィリスは2人に近付き、頭を撫でる。丁度その時、ジャンプしていたランファとライファも着地する。
「ずるいわよ、2人とも!」
「フィリス様、私達にも!」
そう告げてくるので、フィリスはランファとライファの頭も撫でる。
「フィリス、この人達は…?」
「四龍だよ。今は人の姿をしているけど。」
「あれが…伝説の四龍の力…」
「皆、今はそれどころじゃないよ!早く魔物を!」
マティーナがそう言うと、全員頷いて、城門をくぐる。と、城門の奥に魔物の男が1人立っていた。恐ろしいまでの殺気を出している。
「…フィリス、奴はヤバい。俺に任せて先に行って来れ!」
「テッド…解った。エンレン、ライファ!テッドと一緒に戦ってくれ!」
「解りました!」
「任せて下さい!」
フィリス達は魔物の横を通るが、魔物はフィリス達を見逃して、テッド達の方へ歩み寄る。
「俺は魔神、魔神カーギルだ。」
そう名乗ると、凄まじい覇気を出す魔神。
「くっ、エンレンさん、ライファさん、宜しく!」
「えぇ!」
「本気でいきます!」
そうして戦いが始まろうとしていた。
フィリス達が街の中心まで来ると、再び魔物が1人立っている。今度は女だ。
「よくここまで来たわね。私は魔神サラサ。魔神王ゼノヴィス様のために貴方達を殺す。」
先程の魔神カーギルと同じく凄まじい殺気を放つ魔神サラサ。と、ティファが前に出て、
「フィリス、あいつは私に任せて、先生と一緒に先に行って!」
「…大丈夫なのか?」
「…多分、何とかするわ。」
「…解った。スイレン、ランファ!」
「…解ってます。」
「ティファさんの援護、お任せ下さい。」
スイレンとランファのその言葉を聞き、フィリスとマティーナは城へ向かって走り出す。その2人に向かって魔法を使おうとする魔神サラサだったが、直ぐにやめた。
「…こういうのは無粋ね。私の相手は貴女達だものね!」
凄まじい殺気をティファ達へと向ける魔神サラサ。だが、ティファ、スイレン、ランファも負けじと覇気を出す。
「ティファさん、援護するわ!」
「…さっさと終わらせる。」
ランファとスイレンの言葉に同意するように、ティファも魔神サラサへと戦いを挑む。
同じ頃、テッド達は戦っていたが、少しの隙を見逃さず責め立てる魔神カーギルに苦戦を強いられていた。
「ぐはっ!」
魔神カーギルに頭を掴まれ、城壁に叩きつけられるテッド。だがその背中にエンレンが火魔法を叩き込む。
「ぐっ!」
「流石の魔神でも、これなら!」
そう叫ぶライファが雷魔法を叩き込もうとするが、魔神カーギルはテッドの頭を離して距離を取る。テッドに近付き、めり込んでしまった彼を引き起こすと、3人で魔神カーギルを睨みつける。
「流石は四龍の力、大したものだ。しかし、雑魚を守りながら戦って、何時までもつかな?」
「くそっ、ここまで実力に差があるのかよ!?」
テッドが悔しがる。が、エンレンとライファはそんな様子を見て、ふふふと笑う。
「なんだよ、2人とも!」
「いや、君はまだ普通の人間だねって思って。」
「そんな人だからこそ、フィリス様も私達をここに残したのでしょうね。」
エンレンとライファはそう言うと、更に言葉を続ける。
「テッド君、君を勝たせてあげる!」
「だから、次の一撃に全てを賭けなさい!」
そう叫ぶと、エンレンとライファはそれぞれ魔神カーギルの左右に陣取り、魔法を使う。
「喰らえ、フレアバースト!」
「行けっ!サンダーブレーカー!」
究極とも言える火と雷の魔法が魔神カーギルを挟み込む。が、魔神カーギルは両手を開いて魔法を発動し、2人の魔法を防ぐ。
「くっ、やはり四龍の力、危険すぎる!」
「はぁぁぁ!」
「うぉぉぉ!」
力が均衡し、魔神カーギルは完全に無防備になる。
「今よ、テッド君!」
「やっちゃえ!」
ライファとエンレンの言葉にギョッとする魔神カーギル。だが全て遅かった。テッドの方を見ると、既に詠唱は終わっていた。
「喰らえ、フローズンプリズン!」
エンレンとライファには劣るが、水の上級魔法が発動され、魔神カーギルに強襲する。テッドが放った魔法は魔神カーギルに直撃し、その体を凍り付かせた。だが、頭だけ凍り付かなかった。
「ちっ、格下と油断していたのは、私の方だったか…」
「やったね、テッド君!」
「お見事です。」
テッドに近付き、賞賛の声をかけるエンレンとライファ。かなり消耗しているようで、テッドは肩で息をしていた。
「ふっ…小僧、名前は?」
魔神カーギルがテッドに話しかける。
「…オルステッド・ヴァーミリオン。」
「そうか。この首、貴様にやろう。」
「…」
そう言われて、テッドは魔神カーギルに近付き、両手剣を抜刀する。
「オルステッド・ヴァーミリオン。最後の相手が貴様でよかった。」
ニヤリと笑う魔神カーギルの首を、テッドは切断した。その首を持って、テッドは振り向き、エンレンとライファに、
「行きましょう、皆が待ってます。」
そう告げて走り出した。
魔神サラサと対峙しているティファ達も似たような状況にあった。やはり魔神とスイレン、ランファは互角に渡り合っていたが、如何しても足を引っ張っているのはティファだけだった。
「やっぱり思ったとおりだったわね。」
「何ッ!」
「危険なのは先程走っていった2人だけで、貴女達は大したこと無いわねって事。確かに四龍の2人は強いけど、貴女は弱い。2人の足を引っ張っているのは明らかよ。」
「…」
「…ティファ、気にしない。」
「…スイレンさん。」
「貴女はまだ成長の途中なんです。魔神となって無理矢理力を引き出した彼女とは違います。」
「ランファさん。」
「ふふふ、力を欲して何が悪いのかしら?私は後悔していない!全てはあのお方のために!」
そういって魔法を発動させる魔神サラサ。それをスイレンが障壁を張って防ぐ。
「…ランファ、ティファを!」
「解ったわ!」
そう告げるとランファはティファの後ろから抱きかかえて空を飛ぶ。ティファも同じ事を考えていたらしく、驚きもしない。丁度魔神サラサの頭上まで飛ぶと、ランファは勢いを付けて魔神サラサ目掛けてティファを投げ飛ばした。空中で双剣を抜刀し、勢いそのままに魔神サラサに斬りかかる。
「しまっ!?」
時既に遅し、ティファの双剣は魔神サラサの両腕を斬り落とした。
「ギィヤァァァ!」
凄まじい絶叫が響き渡る。何とか自信の風魔法で着地に成功し、肩で息をするティファ。それをスイレンとランファが近付いて抱え起こす。
「…大丈夫?」
「はは、な、何とか。」
「よい攻撃でした。」
そう話していると、魔神サラサは膝をついて倒れた。
「くっ、油断したわ。…どうやら、甘かったのは私の方だったわね…」
「いえ。スイレンさんとランファさんがいなかったら、とっくにやられていました。」
「…貴女、名前は?」
「ティファ・カルマです。」
「そう…ティファ。トドメを刺してくれるかしら?」
「…え?」
「せめて…私を倒した人によって、命を散らしたいのよ。」
「解りました。サラサさん、貴女のこと忘れません!」
そういって首を斬り落とした。その様子を見ていたスイレンとランファは心配になって声をかける。
「…ティファ?」
「大丈夫ですか?」
暫く考え事をしていたティファだったが、2人の方を見て、
「大丈夫です。」
そう答えた。と、丁度テッド、エンレン、ライファが合流する。
「ティファ、無事か!?」
「テッド…えぇ、無事よ。」
「やっぱり四龍は凄えな。」
「えぇ。でも私達ももっと強くならなくちゃ!」
「そうだな!」
そういって笑いあう2人を見て、エンレン、スイレン、ライファ、ランファも笑った。すると城から爆音が聞こえてきた。
「まさか…!」
「…フィリス様!?」
「嫌な予感がします!」
「急ぎましょう!」
4人の言葉を聞き、テッドとティファも頷いて6人で城に向かって走り出した。
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