第33話
フィリス達は夜通し走り続け、ようやくフレデリック王国が見える位置まで来た。と、そこへドラゴンが2体、フィリス達がやって来た方向から飛んでくる。
「フィリス様ぁ!」
「お待たせ致しましたぁ!」
フィリス達はその場で止まり、上空を見上げると、直ぐ近くにランファとライファが着地する。
「フィリス様、気を付けて下さい!」
「ファイアードラゴンとウォータードラゴンが近くまで来ています!」
ランファとライファがそう言うと、フレデリック王国から巨大なドラゴンが2体飛来した。真紅の様な赤い体と蒼天の様な青い体、どうやらファイアードラゴンとウォータードラゴンらしい。
「フィリス様、ここは私達に…」
「いや、操られたままでは可愛そうだ。この場で対処しよう。」
「しかし…!」
「マティーナ先生、テッド、ティファ。ここは私に任せて先に行って下さい。」
「…大丈夫なのか?」
「私達も一緒に戦った方が…」
テッドとティファがそう言うが、マティーナは落ち着いて、
「解ったよフィリス君、気を付けて!」
そう告げて走り出した。テッドとティファも、ここに居てはフィリスの邪魔になると判断し、マティーナの後を追う。ファイアードラゴンとウォータードラゴンはその様子を見て、3人に目掛けてブレスを吐こうとしたが、ランファとライファが双方にそれぞれ噛みつき、ブレスを吐くのを防ぐ。噛みつかれた2体のドラゴンは怒り狂い、それぞれランファとライファに噛み付き、大混戦になる。しかし、フィリスはその様子をただ見ているだけでは無い。フィリスは先ずライファが噛み付いていたウォータードラゴンに対して肉薄し、腕輪を装着して漆黒の籠手を召喚し、
「ライファ、少し我慢して!」
と叫ぶと、ウォータードラゴンの上顎に右拳を叩き込む。ウォータードラゴンはその衝撃を受けて気絶したが、ライファの体に強くウォータードラゴンの牙が食い込んでしまった。
「痛たたた!」
「御免よ、ライファ。」
「だ、大丈夫です、フィリス様。早くお姉様を!」
フィリスがそう言われてランファの方を見ると、ファイアードラゴンはランファの体に食らいついたまま持ち上げ、地面に叩きつけていた。その衝撃で、ランファの噛み付きが外れてしまう。ファイアードラゴンは容赦なく、右、左とランファを何度も地面に叩きつける。
「くっ!」
フィリスは高速で近付き、左拳でアッパーカットでファイアードラゴンのボディを狙い打つ。ズンッ!と凄まじい勢いでファイアードラゴンの腹に拳がめり込み、ファイアードラゴンは白目を剥いて倒れる。
「ランファ、大丈夫か?」
「はい、フィリス様。」
無事なことを確認したフィリスは、ランファとライファにデザートイーグルを召喚して回復弾を撃つ。直ぐに傷が癒され、元気になる2体のドラゴン。
「有難う御座います、フィリス様。」
「あー、痛かったぁ。」
フィリスは2体の無事にホッとして、それぞれにファイアードラゴンとウォータードラゴンを1カ所に集めて欲しいと頼む。直ぐに2体はそれを実行し、フィリスの前にファイアードラゴンとウォータードラゴンの頭を持ってきた。
「2体同時に触れたら、どうなるんだろうか?」
「それは危険ですのでやめて下さい。先ずはファイアードラゴンに触れた方が宜しいかと…」
「何故?」
「彼女は気が荒いのです。このまま目が覚めて暴れられると面倒です。」
ランファの提案に、ライファも賛同する。そしてライファがウォータードラゴンを監視すると言うことで、フィリスがファイアードラゴンの額に触れて意識を集中する。
不思議な感覚に包まれ、フィリスが目をあけると、そこは火山帯が広がっている。
「ここが…ファイアードラゴンの精神世界か…」
フィリスが周りを見渡すと、やはり女性が倒れている。
「う…うぅ…」
「大丈夫か?」
フィリスがかけよって抱き起こすと、女はお腹を抱えて、
「う…うげぇ…お腹…痛い…」
と言った。どうやら先程のボディアッパーが効いているようだった。
「その…済みません。」
咄嗟に誤るフィリスに対して、女は、
「あんたのせいかぁ!」
と叫んで頭突きをしてきた。避ける間もなく鼻に喰らって仰け反るフィリス。そこへランファが到着したようで、
「何をするの、ファイアードラゴン!?」
そういって慌ててフィリスの顔を覗くランファ。
「あれ?ウィンドドラゴン?何してんの、私の精神世界で?」
「貴女は…フィリス様、大丈夫ですか?」
「まぁ、大丈夫…」
「へ?フィリス…様?」
「私がフィリスです。」
「うわぁ…頭突きをして済みません!」
「仕方ないよ。操られていたうえにお腹を殴ったんですから…」
「本当に申し訳御座いません。罪滅ぼしさせて下さい!」
そういってファイアードラゴンは服を脱ごうとする。
「そこまで!」
「きゃう!」
ランファが止めるために頭を叩くと、可愛い悲鳴をあげる。
「取り敢えずフィリス様、この子にも名前を。」
「そうだな…エンレンは…如何かな?」
「まぁ!可愛い名前ですね。気に入りました!今日から私はエンレンです!」
「エンレン、これからよろしくね。」
「はい、フィリス様!全身全霊をかけて御守り致します!」
そう告げると、不思議な感覚に包まれた。
エンレンの精神世界から出たフィリスは直ぐにウォータードラゴンの額に触れる。不思議な感覚に再び包まれ、ウォータードラゴンの精神世界に入る。今度は氷山の並ぶ極寒の世界だった。
「ウォータードラゴンなのに、何で氷山が?」
「そうなんですよ。この子、あんまり感情を出さないんですよ。」
フィリスが周りを見渡していると、後ろにランファ、ライファ、エンレンが立っていて、エンレンが説明する。足元を見ると、女性がやはり倒れている。しかし、エンレンとは違い、頭を抑えていた。
「大丈夫?」
フィリスが声をかけると、女は顔を上げて、
「…痛い。」
と、素っ気なく言う。
「…たんこぶ出来た。」
「それは…済みません。」
「…撫で撫でして下さい。」
そういって頭を差し出す女性に対して、
「こら、そんなことをしてる場合じゃ無いわよ!」
エンレンが叫んだ。それを聞いて、ウォータードラゴンは、
「…姉さん、五月蠅い。」
「五月蠅いって何よ!あーもう、フィリス様、この子にも名前を!」
「えっと…スイレン。」
「…スイ…レン?」
「駄目かな?」
「…良い名前。」
どうやら気に入ったらしい。そして、エンレンとスイレンがフィリスに近付き、
「私達の力…」
「…フィリス様のために。」
そういってそれぞれ頬にキスをした。これでフィリスは四龍全員を使役したことになる。
「フィリス様、お願いが御座います。私達を人の姿にして下さい。」
ランファがそう言う。
「どういう事?」
「ファーリス様から、主となるフィリス様の許可があれば、私達は人の姿で過ごせるのです。」
「そうなのです。」
「あー、そんな話もあったわね。」
「…そうそう。」
「私達が人の姿になること…認めて頂けますか?」
少し申し訳なさそうな顔付きで4人が見てくる。フィリスは笑顔で、
「勿論、4人がそれを望むなら。」
フィリスの許可がおりて、4人は笑顔になる。
「それではフィリス様…」
「これから末永く…」
「宜しくお願い致します!」
「…お慕い申し上げます。」
そう話をして、また不思議な感覚に包まれた。
目を開けると、精神世界からは出ていたが、目の前には絶世の美女が4人跪いていた。
「皆、頼みがある。フレデリック王国にいる魔物を討伐するため、力を貸して欲しい。」
「フィリス様の願い…」
「それは我々の願い…」
「必ずや…」
「…成し遂げます!」
そう話して、フィリス達もフレデリック王国へ向けて走り出した。
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