第2話
不定期になりそうですが、頑張って書きます。
ソーン村が魔物の襲撃を受けて壊滅してから10年が過ぎた。カーマインは、2人の子供を連れて再びソーン村の入り口に来ていた。
「おかしいな?こんなに整備されていたか?」
不思議なことに、村の中には綺麗な建物が7軒程建っていた。しかし、人がいる気配は無い。
「父上、本当に10年前にここへ来たのですか?」
「それにしては、村は綺麗なものですよ?」
2人の子供達は口々にそう言った。
「うむ…不思議なのだが、確かにフィリスと出会ったのはここなのだが…」
そんなことを話していると、村の奥の方で煙が上がっているのが見えた。
「父上、あれは?」
「…行ってみよう。」
そう話して3人で行ってみると、焚き火をしながら何かの肉を焼いているフィリスがいた。
「フィリス…なのか?」
カーマインが声をかけると、フィリスが振り返り、その姿を見て立ち上がりながら振り返った。
「…?確か…カーマインさんでしたか?」
10年経って、立派に成長したフィリスの姿に、カーマインは驚いた。服装もそれなりに立派なものを着ているが…
「10年間、どうしていたのだ?」
「…兎に角父さんと母さんの言いつけを守って、村にいました。体を鍛えて、魔法の訓練を続けながら。」
「その服とかはどうしたのだ?」
「家は無事でしたから、父さんの古着を着ています。」
「そうか…しかし…」
カーマインはフィリスを改めて見た。理想的な筋肉がついている事や、凄まじいまでの威圧感が感じられる。どうやらこの10年で物凄い鍛え方をしてきたことが見て取れた。
「それで、カーマインさん。その2人は?」
「あぁ、私の子供だ。挨拶を。」
「初めまして、僕はコールです。」
「は、初めまして。ネーナと言います。」
「初めまして、私はフィリスです。」
緊張している2人と違い、落ち着いた様子のフィリス。その様子をみて、カーマインは切り出した。
「フィリス、君を迎えに来た。」
「ー10年前にも一緒に来い、そう言っていましたね。」
「あの時は両親の言いつけを守ると言っていたからね。そのまま放置をしていたが、君には私達と一緒に来て貰いたい。」
「…何故?」
カーマインの質問に対して、フィリスが問いただす。
「10年前、君は確かに魔物のを討伐した。それ程の力量を持った者を放置しておくのは勿体ないからだ。」
「…私に魔物ハンターにでもなれと言うのですか?」
フィリスは不信な目をカーマイン達に向けた。
「それは君の自由だ。しかし、君が人類の敵にならないとも限らない。人の世界で常識を学んで、更なる高みに登って欲しい。それが私の考えだ。ついては、君を私達の養子に迎えたいと思っているんだ。」
「…?」
「父上、それでは…」
「フィリスさんが私達の兄さんになるの?」
「そういうことだ。」
「…」
「悪いようにはしない。どうか考えて欲しい。」
「それは…無理です。」
フィリスは3人に向かって言った。
「…それは何故だね?」
「本から常識などは学びましたし、恐らく貴方のお誘いはいいものだと解ります。」
そこでフィリスは一呼吸おいて、再び話始めた。
「ですが私は転生者なんですよ。」
「転生…者?」
それを聞いてカーマイン達は驚いた。
「運命の女神様からの贈り物で、私は一定の年齢に達すると老いる事が無くなります。そして、固有の魔法を持っています。貴方達と一緒に行って、暫くは問題ないでしょうが、いずれ老いることの無い私を、人々は不思議がり、いずれ魔の者と思うでしょう。そうなれば、迷惑がかかる事は明白。やはり私は、この村から出ない方が良いと思います。」
「…その話、両親にはしたのかい?」
フィリスは首を横に振った。
「5歳児がそんなことを言っても、信じられないと思っていましたから。」
「そうか…よく話してくれたな。しかし、だからと言って、君をこの村に置いて行くのは駄目だと感じる。」
「…?」
「君は寂しいんだ。そして、失うことが怖いのだろう。大丈夫だ。時が我々を別つまで私達は家族だと思ってくれていい。だから…」
「…しかし。」
フィリスは俯いてしまった。悩んでいる様子をみて、コールとネーナが口を開いた。
「僕は良いと思います。兄さんが出来るのは嬉しいです。」
「私も。」
そういって2人はそれぞれフィリスの右手と左手を握った。
「…暖かいな。そうか…とうに人の温もりは忘れていたけれど、私は寂しいのかもしれません。」
そこまで言って、フィリスは顔を上げて、
「解りました、貴方方についていきます。」
そう告げた。
それから4人はフィリスが焼いていた肉を昼食として食べて、街へと向かおうとした。
「しかし、参ったな。」
カーマインがそう言った。
「フィリスの分の馬がいない。」
「そう言えば…なら僕がネーナと一緒に乗りましょうか?」
コールがそう提案する。しかしフィリスは首を振って、
「必要ないよ、コール。」
と言った。
「でも、今日中に街に帰るには徒歩ではキツいですよ?」
ネーナがそう言う。確かに街までは馬を使って半日ほどかかる距離だった。だがフィリスは更に首を振った。
「どちらにしろ、私は馬に乗ったことがありません。」
「では何処かで1泊野宿するしか…」
「いや、その必要は無いよ、ネーナ。」
そう言うと、フィリスは指を口に含んで指笛を鳴らした。ピュイ!と心地の良い響きの後、数十秒経った頃に突然大きな鳥が空から降りてきた。
「まさか…モンスターか!?」
「父上!?」
「きゃあ!」
カーマインは臨戦態勢を取り、コールはネーナと鳥の間に割って入る。しかし、フィリスは至極当然と言わんがごとく、鳥の頭を撫でた。
「驚かせて済みません。この子はミロ。僕のペットの鳥です。」
「なっ!?」
「へ?」
「ぺ、ペット?」
頭を撫でられたミロはクルルゥと鳴いて、頭をフィリスに擦りつける。
「賢い子でね、人語を理解しています。喋ることは出来ませんけど。」
「うーむ…」
「あの…フィリス兄さん。」
ネーナがフィリスに近づいて言った。
「どうしたんだ、ネーナ?」
「私も…撫でていいですか?」
「勿論。」
ネーナがゆっくりと手を伸ばすと、ミロは頭を丁度ネーナの高さに合わせて下げてくれた。
「フワフワだ。」
「いいなぁ…」
「コールも触ってみなよ。」
フィリスがそう言うと、コールも近づいて頭を撫でた。
「ふむ…驚いたが、害は無さそうだな。」
「普段は森の中に居るので、人と関わりはもちません。ミロに街の近くまで送って貰おうと思います。」
「しかし、馬は…」
「縄で括り付けて運びましょう。大丈夫、あの子達も素直なようですから。」
そう言うと、フィリスは村に1度戻り、三頭分括り付けられる長さの縄を持ってきて、馬達をミロの足に括り付けた。馬達は嫌がる素振りも見せず、大人しくしていた。
「さあミロ。今度は僕たちを乗せておくれ。」
そう言うと、ミロは乗りやすいように体を下げた。そしてフィリスはネーナとコールを抱え上げてミロに乗った。
「カーマインさん、早く。」
フィリスにそう言われて、カーマインもミロに跨がった。小さな子供2人、大人2人は少し重いが、ミロは重さを感じていないかのように4人を乗せると空へと飛んだ。
「街の方向は?」
「済まない、フィリス。このまま王都へ向かって欲しい。」
「…?」
「私達は王都から着ていてね。明後日に帰る予定だったがミロの力を借りれば今日中に着くことが出来るだろう。」
「王都の方向は?」
「今向いている方向へ飛んで行ってくれればいい。」
「解りました。ミロ、頼む。」
「クワァ!」
一声鳴いてミロが空を翔ける。しかし4人が受けた衝撃はそれ程でも無かった。
ミロが空を飛んで1時間後、大きな城が見えてきた。
「カーマインさん、あれが王都ですか?」
「そうだ。おっと、この辺りで降りて貰えるか?このまま城下町に降りれば、大変な騒ぎになってしまう。」
「…了解。ミロ。」
フィリスがミロの名を呼ぶと、ミロはクエッと一声鳴いて下へと降りて行った。全員が降りて、馬を外すと、ミロがフィリスに頭を擦りつけた。
「ミロ、暫くお別れだ。でも、また会えるから。私のことを忘れないでいておくれ。」
「クルルゥ。」
名残惜しそうに鳴いて、ミロは再び空を舞い、元来た方向へと飛んで行った。
「さて、行こうか。」
カーマインにそう言われ、ミロを見送っていたフィリス達3人は頷いた。
それから徒歩で城の方へと向かう。歩きはじめて10分、大きな門まで到着した。
「止まれ、この国に何用か?」
門番に止められたが、カーマインが前に出て、門番と話をする。
「私だ。」
「カ、カーマイン様!?昨日出発されて、もう戻って来られたのですか!?」
「あぁ、用事が速やかに終わったのでね。入国は可能か?」
「勿論です!お子様方も問題ありませんが…そちらの人は?」
フィリスを指差して、門番がいう。
「私の養子だ。」
「はぁ…しかし、この国の者で無ければ速やかに入国させるわけには…」
「うーむ、入国審査にはどれくらいかかる?」
「5分程ですが…?」
「解った。フィリス、こっちへ。」
「なんでしょうか、カーマインさん?」
フィリスが近づいて来て、不思議そうな顔をした。
「この国の法に則り、入国審査を行います。まず名前は?」
「フィリスです。」
「出身は?」
「ソーン村です。今はもうありませんが。」
「そうですか。職業は?」
「ありません。」
「この国には何をしに?」
「カーマインに養子となれと言われたのでついてきました。」
「うーん…」
「どうしたのだ?何か問題が?」
「いえ。年齢は?」
「15歳です。」
「解りました。カーマイン様、1つだけ約束していただきたいことがあります。」
「なんだ?」
「彼がこの国で問題を起こした場合、貴方に全責任が生じます。それでも宜しいですか?」
「勿論、構わない。」
「解りました。これで入国審査を終わります。」
「…?」
フィリスが不思議そうな顔をした。
「どうしたのだ、フィリス?」
「入国審査と言われたので、もっと複雑な手続きがあるのかと…」
「ふむ。確かに普通ならな。だが私はこの国の王宮騎士団の長をやっている。信頼はされているからね。」
「そうですか。」
「では行こうか。」
そうして再び歩き出した。
ガデル王国はこの世界における歴史の中でも長く続いている王国である。建国されて300年は経っているし、情勢も悪くない。と言うのも、国王は平和主義でありながらも武芸を重視する人柄であり、国民達もそんな国王についていこうと考えているからだ。昔は隣国との戦争もあったが、ここ100年余りは争いもなく、平和が続いていた。そんなガデル王国の城下町の中、大きな屋敷が建っていた。その門の前でカーマイン達は止まった。そしてフィリスに向かって言う。
「ここが今日から君の家だ。」
「立派な家ですね。」
はぁ…と、フィリスは溜息をついた。元々小さな村で暮らしていたので、そんなに大きな家を見たことが無かったからである。それに、町の様子をみて驚いていた上にここが家だと言われたのだ。圧倒されてもムリは無かった。
「フィリス兄さん、行きましょう。」
「こっちですよ。」
コールとネーナに引っ張られて、家の中へと入っていく。すると、メイドの1人が出迎えてくれた。
「あら?コール様、ネーナ様。それにカーマイン様。お早いお帰りですね?」
「リースさん、ただいま!」
「リースさん、ただいまです。」
「リース、今戻った。変わりは無かったか?」
それぞれがリースと呼ばれたメイドと挨拶を交わす。そして、リースは1人の男性が立っていることに改めて気付いた。
「カーマイン様、そちらの方は?」
「うむ、では全員を呼んでくれるか?」
「はい。奥様も呼んで参りましょう。」
そう言うと一礼してそそくさと行ってしまった。リースが奥へ行って一分後、屋敷の執事、メイドが集まってきた。その数5人。そして、二階から先程のリースと、1人の貴婦人が降りてきた。
「あなた、コール、ネーナ、お帰りなさい。」
「母上、ただいま戻りました。」
「お母様、ただいまです!」
コールとネーナがその貴婦人に抱きついた。どうやら母親の様だった。
「あなた、そちらの方が…?」
「うむ、以前から話していたフィリスだ。」
「そう。初めまして、フィリス。私はマチルダ。カーマインの妻で、コールとネーナ、そして今日から貴方の養母となる者です。」
「フィリスと申します。初めまして。」
「あらあら?他人行儀ですね。もっと自然に甘えて下さいな。」
「マチルダ、彼は元々こんな喋り方なのだよ。」
「そうでしたか。御両親にしっかりと育てられたのですね。」
「僅か5歳で両親を亡くしていますので、余り解りません。」
「…失礼しました。カーマインからその話は聞いておりましたが。取り敢えず長旅で疲れたでしょう?ゆっくりとお休みなさい。」
「有難う御座います。」
フィリスはマチルダに礼を述べた。マチルダはコールとネーナを連れて、奥へと下がって行く。残された執事、メイドとフィリスとカーマインはそれを見送ると、カーマインが口を開いた。
「さて、取り敢えずフィリスは風呂へ入ってきなさい。バン、風呂は沸いているな?」
「旦那様、勿論です。」
「リース、彼の服を頼む。」
「畏まりました。」
「カーマインさん、風呂とは?」
「水浴びを温かいお湯ですることだ。ゆっくりしてくると良い。」
そう告げて、カーマインは自身の部屋へと戻っていった。困惑しているフィリスに、バンと呼ばれた執事が声をかける。
「フィリス様、こちらへ。」
「はい。」
言われるがまま、フィリスはバンについていった。
フィリスには大きな部屋があてがわれていた。しかし現在、最低限の物しか存在していない。近いうちに買いそろえると言われたが、必要ないとフィリスは突っぱねた。今は夕食が終わり、部屋の中でゆっくりとしていた。と、フィリスがベッドでウトウトし始めた頃、ドアがトントンと叩かれた。
「はい?」
フィリスが返事をするが、入ってこない。フィリスは首を傾げてドアへと向かうと、寝間着姿のコールとネーナが立っていた。
「どうかしたの?」
フィリスがそう尋ねるが、2人ともモジモジしていて、話そうとしない。そこでフィリスは2人が枕を抱えていることに気が付いた。
「もしかして、一緒に寝たいのかい?」
そうフィリスが2人に尋ねると、2人とも頷いた。フィリスは溜息をついて、
「子守唄は歌えないけど、それでも良かったら…」
そう告げると、2人とも笑顔になった。3人で部屋に入りフィリスを真ん中に、3人で寝転がる。
「フィリス兄さん、兄さんの事を教えて貰いたいのです。」
「聞いてどうするんだい?」
「私達、知り合ってまだ数時間しか一緒に居ません。少しでも早くわかり合いたいのです。」
「そうか解ったよ。でも、2人のことも教えて欲しいな。」
「勿論です!」
「ですです!」
「じゃあ物心ついたときから話すよ…」
そうして、夜は更けていった。
読んで下さっている方々、有難う御座います。