第20話
遠征訓練が終わると、騎士学校は1週間休みに入る。慣れない外での訓練の後なので、体を休める、また教師達にとっては採点の為に期間をあけるのだ。そんな貴重な休みもフィリスには関係ないので、1週間は普段見てあげられないコールとネーナの訓練に費やした。テッドとティファが来る日もあったが、しっかりと訓練をした。そのお陰か、4人は素晴らしい成長を遂げていた。まだまだフィリスに比べれば劣るものの、並みの騎士では勝てないだろう、フィリスはそう思っていた。
長い休みの後、校長室において相変わらず魔法の授業を受けるフィリス、テッド、ティファの3人。テッドとティファもなんとか魔力の向上が出来たので、マティーナも嬉しそうにしていた。と、そこで授業終わりの鐘が鳴る。
「はい、そこまで。いや~、驚いたよ。短時間で魔力制御をマスターするなんてね。」
「フィリスのお陰ですよ。」
「そうよね。私達だけじゃ、ここまで来れなかったわ。」
テッドとティファはフィリスに礼を言う。しかしフィリスは、
「2人の努力だよ。コツは教えられるけど、感覚がものを言うからね。」
と返す。
「まあ、3人仲良く高みに登って欲しいよ。さて、授業は終わったけどフィリス君。君は残って。」
「…校長先生?何故フィリスだけ?」
「大事な用事があるからね。」
「えー、ずるいですよ!何をするんですか?」
「教えて下さいよ!」
テッドとティファがマティーナを問い詰める。マティーナは、はぁ…と溜め息をついて、
「買い物だよ。約束したからね。」
と、発言した。
「えぇ!?」
「デートですか!?」
「ち、違うよ!?そんなんじゃないよ!」
珍しく焦りを見せるマティーナの反応が面白いのか、更に問い詰める2人だが、
「マティーナ先生、何を買いに行くんですか?」
フィリスの言葉に沈黙した。
「うん。ついてきてくれれば解るよ。時間も無いから、早く行こう!カリナ、後は頼んだよ。」
「解りました、校長。」
そう告げるとマティーナはフィリスを連れて部屋を出ていった。
「カリナさんは何処へ行くのか知っているんですか!?」
「勿論です。忙しいのに外出させるのには理由がありますから。」
「教えて下さいよ!」
「駄目です。」
頑なに断り続けるカリナを見て、2人は諦めるが、
「じゃあ後ろからこっそり着いていこうよ。」
「なるほど、じゃあ行こうぜ!」
「2人とも待ちな…」
カリナが止めようとするが既に遅く、2人はフィリスとマティーナを追いかけて出ていった。
街の中は人が多いので、はぐれないようにフィリスとマティーナは手を繋いで歩いている。マティーナは大きな荷物を背負っていた。それ以外は学校帰りの状態なのだが。
「エヘヘ、皆からはどう見えているのかな?」
そんなことを言うマティーナに対してフィリスは、
「恐らく兄妹だと思われていますよ。」
と、言い放つ。
「もう…そこはカップルでしょ!」
頬を膨らませ、抗議するマティーナだが、フィリスの言葉は概ね正しい。周りの人達は微笑ましい光景だとニコニコしていた。表通りから少し入った道を行くと、前に来たことのある店の前に来た。
「マティーナ先生、ここは?」
「まあ良いから。」
そう言って入っていくと、
「らっしゃい!」
の男の威勢の良い声が聞こえてくる。
「親方君、久しぶりだね。」
マティーナが話しかけると、
「こ、校長先生、お久しぶりです!」
親方が挨拶をする。そう、以前コールとネーナの剣を買いに来た店だった。
「ん、あれ?フィリス坊ちゃんじゃあねぇですかい。お久しぶりです。」
「親方、お久しぶりです。元気でしたか?」
「あれ?2人は知り合いなのかい?」
「以前、剣を買いに来まして、その時に。」
「フィリス坊ちゃん、この間の武道大会、優勝おめでとう御座います。」
「有難う御座います。」
「それで、今日はどうしたんで?まさか校長先生と一緒に来るなんて思ってませんでしたが?」
その言葉を聞いて、マティーナが口を開く。
「親方君、頼みがあって来たんだ。彼に武器を作って欲しい。」
それを聞いて、ハッとするフィリスと親方。
「実は彼と約束してね。欲しい物をあげるとは言ったんだけど欲が無いのか我が儘を言ってくれない。だから特別な物をあげることにしたんだ。」
そう言うと、リュックを降ろしてテーブルの上に置き、そして中身をだす。そこには黒い大きな鉱石があった。
「マティーナ先生、これは?」
疑問に思うフィリスが質問するが、答えたのは親方だった。
「こいつは…ダマスクス鉱石…ですね?」
「ご名答。親方君、これを使って彼の武器を作って欲しい。お代は弾むから。」
「…坊ちゃんはそれ程の力が?」
「うん。彼なら使えると思う。」
「解りやした、その依頼、受けさせて貰いやす。」
そのやり取りを聞いていたが、フィリスが口を挟む。
「待って下さい、マティーナ先生、親方。ダマスクス鉱石って、なんなのですか?」
それを聞いて親方が説明した。
「この世界にある鉱石の中で、オリハルコンに次いで堅い鉱石でさぁ。しかもオリハルコンに劣るとは言え、実はある特性があるんでさぁ。」
「…特性?」
「魔法を吸収し、あらゆる形に変形する、そして持ち主の魔素を吸収して更に強度が上がるんだよ。私が着ている服は、このダマスクス鉱石なんだよ。」
ふふんと得意げになるマティーナを見て、フィリスは更に疑問に思う。
「何故私なら使えるのですか?」
「魔素の量、そうですね、校長先生?」
「うん。一定の魔素の量が無いと、魔素を吸い尽くされて最悪死んでしまう。でもフィリス君は違う。魔素は充分にあるし、その使い方もしっかりしている。だからこそこのダマスクス鉱石から作った物を使って欲しいんだ。」
「…」
フィリスは悩んだ。そんな鉱石が存在していたことなど知らなかったし、何より信頼しているマティーナからのプレゼントが、自身が欲していた武器であるのだから。
「さあ、剣にするかい?槍にするかい?この量があればなんにでもなるよ。」
「…どうして親方の力が必要なんですか?」
「ははは、うちは爺さんの代から校長先生にお世話になってましてね。爺さんが校長先生から教えて貰った特殊な技法でこのダマスクス鉱石を加工できるんでさぁ。さあ坊ちゃん。何でも言ってくだせぇ。」
それを聞いて、フィリスの頭の中に浮かんだ武器が1つあった。
「籠手が欲しいです。」
「…籠手…ですかい?」
「フィリス君、どうして籠手なの?」
今度はマティーナと親方が疑問にもつ番だった。するとフィリスは2人に、デザートイーグルを召喚して見せた。
「こ…これは!?」
「君の固有魔法だね?」
「見せたとおり、手に召喚して遠距離を攻撃する、それがこの魔法なのです。剣や槍も良いのですが、剣は父の形見がありますし、槍は余り得意では無いんです。それならば、この固有魔法を阻害しない籠手が良いと思いました。」
「なるほど、そう言うことなんだね。」
「理解しやした。じゃあ坊ちゃん、手を見せてくだせぇ。」
そう言われて両手を見せるフィリス。親方はその手を触って、サイズを測る。
「うん、坊ちゃん。腕輪型に加工しやしょう。その方が良さそうだ。」
「え?」
「言っただろう?ダマスクス鉱石は形を変えるって。私の服も元々は指輪の形に加工して貰っているんだよ。」
「剣とかならその形に加工しやすが、身に付ける物ならその必要が無いんでさぁ。ただし気をつけてくだせぇ。」
親方が注意する。
「その場合、ダマスクス鉱石が形を記憶しやすから、それ以外の形にはなりやせん。服ならアレンジは出来ても、それ以外にはならなくなりやす。」
「つまり、籠手を出したら籠手にしかならない、服なら服にしかならないって事だよ。」
「解りました、それで大丈夫です。」
「加工には、圧縮作業が必要になるんで、2つ作ると3日ほどかかりやす。3日後に校長先生に渡しに行きまさぁ。」
「3日!?それでできるの!?」
マティーナが驚いた。
「他ならぬ校長先生からの依頼ですから。早くやりやす。」
「無理しなくて良いんですよ?」
「大丈夫でさぁ。うちの弟子達も優秀なんで。おい、野郎共!」
親方がそう言うと、6人の弟子が地下からあがってきた。
「俺は今日から3日間、作業に入る!後は頼んだぞ!」
「解りました!」
威勢の良い声が響いた。
「うんうん。宜しく頼むよ。じゃあ報酬はこれで。」
そう言うとマティーナはテーブルに大きな袋を置いた。
「校長先生、いけやせん。先生からお金は…」
「貰っておいてよ。それともタダで頼むような人間に私が見えるかい?」
「いえ。有難う御座います。では坊ちゃん、楽しみにしといてくだせぇ。」
そして親方と弟子達に見送られて、フィリスとマティーナは店を出た。と、店の入り口までテッドとティファが走ってきた。
「フィリス、ずるいぞ!」
「そうよ!雰囲気出しちゃって!」
フィリスとマティーナはお互い顔を見合わせて首を傾げる。
「どうせ美味いものでも御馳走になってたんだろ、この店で!」
「私達の分は!?」
どうやら2人は看板も見ず、会話しているようだった。その様子を見て、フィリスとマティーナは大声で笑った。
さて、その日から3日後の事。授業も終わって学校から家に帰り、少しゆっくりしてからコールとネーナの訓練を見ていたフィリス。
「2人も強くなったけど、ちゃんと遊んでるの?」
疑問に思ってフィリスが聞いてみる。
「勿論です、兄さん。最近はマーガレット様も昼間、家に来てくれたりしてますよ。」
「後は近所のお友達と、フィリス兄さんが教えてくれた鬼ごっこをしています。あと、かくれんぼとか。」
この世界には、元の世界の娯楽が殆ど無かったので、ルールを教えると直ぐに他の友達にも教えて遊んでいるらしい。それを聞いて安堵したフィリスだったが、急に鐘が鳴り響いた。
「これは…非常事態の鐘か!?」
そう思っていると、マチルダとリース、バンや他の執事、メイドが庭にやって来て、
「フィリス、コール、ネーナ!」
「マチルダさん、この鐘の音は?」
「多分モンスターの襲撃ね。急いで家の中に入って!」
そう言われて家の中へ入る。
「それで、如何するのですか?」
「この家にはリース達が魔法で障壁を張るわ。ここはね、避難場所にもなっているのよ。多くの人達がここに避難してくる。だから安心していいわ。」
マチルダのその言葉に納得して胸をなで下ろすコールとネーナ。
「カーマインさん達は…大丈夫でしょうか?」
「…解らない。でもねフィリス。あの人との約束は、子供達や街の人達を命懸けでも守るということ。その為ならば全力を尽くすわ。」
そうマチルダが話した瞬間、騎士学校の方から爆炎が上がった。
「おかしい…学校にはしっかりと防壁が…」
「マチルダさん、私が見て来ます。」
フィリスがそう言うと、マチルダは焦った顔をして、
「駄目よ!?子供が何を言うの!?」
「しかし、学校にはマティーナ先生達が…」
「校長先生達なら大丈夫よ、強いのだから!」
そう言われても納得できないフィリス。そして…
「…マチルダさん、済みません。やはり嫌な予感がします。私は行ってきます。」
真剣な顔付きのフィリスを見て、マチルダは息を吐いて、
「…解りました。しかし、無事に帰ってくる、それが条件です。」
「解っています。」
「兄さん…家のことは任せて下さい!」
「コール兄さんと一緒にお母様や皆を守ってみせます!」
そう告げるコールとネーナの頭を撫でて、フィリスは風魔法で空を飛んで学校へと向かった。
さて、爆炎が上がる少し前、マティーナはジンガと話をしていた。
「校長先生、次の課外授業の件ですが…」
「解っているよ、ジンガ君。次もフィリス君達を分けて欲しいって件だろう?」
「その通りです。あの3人に付き添った生徒の、その後の成長は目覚ましいです。もしかすると彼等は教師の方が向いているかもしれません。」
「彼等の進路は彼等が決めることだよ。背中は押すけれど…ね。」
そう話をしていると、緊急事態の鐘が鳴り響く。
「…モンスターかな?」
マティーナがそう言った次の瞬間、校長室の扉が叩かれる。
「誰だろう?どうぞ。」
マティーナがそう言った瞬間、扉を突き破って魔法が飛んできた。辛うじてその魔法を躱すマティーナとジンガ。しかし魔法は窓ガラスを突き破りグラウンドの観客席に当たって爆炎を引き起こした。
「何者だ!?」
そう叫んでジンガが扉の方へ向けてフレイムランスを撃ち込む。しかし、1つの手が現れ、そのフレイムランスを止めてしまう。その手の持ち主は部屋へと入ってきて、
「貴様がマティーナ・ティルだな?」
そう告げた。
「この部屋の周辺であの魔力、まさか…魔物!?」
「そうだな、貴様達はそう呼んでいるが、我々は魔人という。」
「この学校に何のようだ、答えろ!」
ジンガがそう言うと、魔物は先程のフレイムランスをジンガに放つ。
「くはっ!」
まともに食らって吹き飛ぶジンガ。しかし魔物はマティーナを睨みつけ、
「こんな餓鬼を殺してこいと言われたのか…ふん。興が失せるな。おい小娘、抵抗しなければ一瞬で殺してやるぞ。」
「やれやれ、仕方ないな。場所を変えよう。」
マティーナはそう言うと、割られた窓から外に出る。魔物もまた外に出る。
「ふん、何が変わるというのだ、ただ外に出ただけで?」
そういう魔物に対して、マティーナは火魔法イラプションを叩き込んだ。地面から炎が上がり、魔物は炎に包まれる。
「…やったかな?」
マティーナはそう言うが、それを言ってやれた人間はいない。炎の中から魔物が姿を現す。
「終わりだ、大人しく死ね。」
魔物が右手を前に突き出す。最早これまでとマティーナが目を瞑った次の瞬間、ズガンッ!と凄まじい音が鳴り響く。
「…え?」
驚いたマティーナが目を開けると、魔物の右手が吹き飛んでいた。
「グッ…誰だ!?」
魔物が空を見上げる。それにつられてマティーナも空を見ると、フィリスが右手にコルトパイソンを握り、降下してきていた。着地すると同時に、フィリスはマティーナと魔物の間に割って入る。勿論、コルトパイソンは魔物に向けたままだ。
「私はフィリス。貴様は何者だ?」
フィリスがそう言うと、魔物も答える。
「貴様達が魔物と呼ぶ存在、俺は魔人ザナック。訳あってそこの小娘を殺しに来た。」
「理由は?」
「答えても意味が無いだろう?今から死ぬ貴様らに言ってもな!」
そう言って魔法を撃ち込んでくるが、フィリス達が見たことも無い魔法だった。フィリスはマティーナを抱きかかえてその魔法を躱していく。
「チッ!貴様から殺してやる!」
フィリスの方が危険だと判断した魔人ザナックは、標的を代える。フィリスは校長室の窓までやって来て、マティーナを降ろした。
「フィリス君、気をつけて!」
そう言われてフィリスはコクリと頷くと、ジンガに目掛けてコルトパイソンを構えて、弾丸を撃ち込んだ。勿論ただの弾丸ではなく、ヒール、キュア、リカバリーの複合弾だ。唸っていたジンガが正常な呼吸を取り戻したのを確認して、フィリスは魔物へと接近する。
「小賢しい!」
魔人ザナックはそう叫ぶと、空に大量の剣や槍、斧を召喚した。
「くっ!」
フィリスは左手にデザートイーグルを召喚して、両手拳銃で相手の武器を撃ち落としていく。が、余りに数が多すぎる。撃ち落とせない武器がフィリスに肉薄する。それを躱していくが、このままではジリ貧だった。フィリスがせめて魔物だけでもと諦めかけた瞬間、
「フィリス君!」
マティーナがそう叫ぶ。フィリスがマティーナの方を見ると、マティーナが何かを投げてきた。敵の攻撃を躱しながらそれを受け取ると、それは2つの腕輪だった。
「フィリス君、それを着けて想像するんだ!君の欲しい武器を!」
マティーナの言葉に従って、フィリスは腕輪を両手首に着けて、籠手を想像する。すると、真っ黒な立派な籠手がフィリスの両腕に装着されていた。
「そんなもの、役に立つか!」
魔人ザナックは更に大量の武器を出して、フィリスに放つ。しかし、フィリスは籠手を使って全てを弾き飛ばした。
「なっ!?」
魔人ザナックは驚き、その瞬間隙が出来た。その隙を見逃すフィリスでは無い。フィリスは右手のコルトパイソンで頭を、左手のデザートイーグルで人における心臓へと弾丸を撃ち込んだ。見事に命中し、魔人ザナックの頭部は吹き飛ばされ、胸には大きな穴が開いていた。それを見て、マティーナが、
「や、やった…やったよ、フィリス君!」
そう叫びながらフィリスに近付く。が、もう少しと言うところでフィリスは地面に倒れ込んでしまった。装着していた籠手は再び腕輪に戻っていたし、手に握られていたコルトパイソンもデザートイーグルも無かった。
「まずい、早く外さないと!」
マティーナは急いでフィリスの腕から腕輪を外す。そして…
「流石だよ、フィリス君。」
そう告げて、マティーナもフィリスに覆い被さる様に倒れ込んでしまった。
フィリスが目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋だった。
「…ここは?」
フィリスがそう言うと、
「母上、兄さんが!」
「フィリス兄さん、解りますか!?」
と、コールとネーナの声が響く。ボーッとした頭を横に振ると、そこにはマチルダ、コール、ネーナの3人に、ハーヴィ家の執事とメイドがいた。
「マチルダさん、コール、ネーナ、皆…」
「良かったわ。フィリス、ここは病院で、貴方は3日間眠っていたのよ。」
マチルダにそう言われて、
「そうだ、私は…魔人ザナックと戦って…マティーナ先生は!?」
そう言って起き上がろうとするフィリスをマチルダ達が押さえつけて、
「大丈夫よ。街に来たモンスターは騎士団が倒したし、貴方のお陰で魔物も退治された。マティーナ先生達も無事よ。」
それを聞いてフィリスは安心した。と、そこへマティーナ、テッド、ティファか入って来た。
「こんにちは。フィリス君は…あっ、やっと起きたんだね!?」
そう言うとマティーナは走ってきてジャンプし、フィリスのお腹の上に乗った。
「ぐぇっ!?」
珍しい声をあげるフィリス。
「ちょっ、校長先生!?」
「良かったよ、フィリス君!死んじゃったかと思ったよ!」
「済みません。でもどうしてでしょうか。私は魔物に向かって…」
「それはね、これのせいだよ。」
マティーナはそう言うと、2つの腕輪を取り出した。
「言ったでしょう?制御が難しい物だって。でもあの時は仕方が無かった。これしか方法は無かったんだから。でも今回の様なことにならないように、君に使い方を教えてあげるからね。」
そう言ってくれるマティーナに感謝を述べるフィリス。それを聞いて安心したのか、再び眠りについた。
フィリスはもう一日入院して、家で療養し、1週間で体が本調子に戻った。ダマスクス鉱石の力で体中の魔素を吸い取られたせいだとの事だったが、恐らく日頃無理していたんだろうとフィリスは思い、もう少し体を労ろうと思った。
(魔物と戦うにしろ、もっと強くならないとな。)
そう決意を固めるフィリスだった。
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