第123話
それから2週間後、レンフィアとホノカが城へやってきた。フィリスの服が1着完成したので、着て貰いたいらしい。途中何度かマリアーナがレンフィアに呼ばれて店には行っていたのだが…早速謁見の間に集まると、レンフィアとホノカはマーティスと会談していた。
「すみません、遅くなりました。」
「おぉ、フィリス。」
「フィリス様、お待たせいたしました。」
「あの…これが服に…なります。」
ホノカから袋を渡される。それを持って、フィリスは一旦謁見の間を出る。
「どんな服に仕上がったのかな?」
「…想像がつかない。」
「ホノカさんは元々の世界の服に近いって言ってたけど…」
「楽しみですわね。」
「うむ、妾も手伝ったが、素晴らしい出来映えであったよ。」
「ハクアちゃん、どんなのだろうね?」
「わふぅ、解んないです。」
四龍、マリアーナ、ミロ、ハクアは話をしているが、マティーナだけは首を捻っていた。
「マティーナさん、どうしました?」
「アサギ君…実は…フィリス君は余り服にこだわりが無かったんだよ。」
「え…?」
「彼と会った時はお父さんの服を着ていたし、学校では制服を着ていたし、まともに自分の服を手に入れるのは…これが初めてなんじゃないかな?」
確かにフィリスは服にこだわりがない。クリーンの魔法を覚えてからはそれが顕著で…着たきり雀も良いところである。勿論、2、3着は持っているが、似たような服なので、着替えたのか解らない位だった。
「無頓着にも…程がありますね…でも、フィリス殿に何かしらの変化があったと考えて良いかも知れませんね。」
そう話していると、フィリスが着替えて戻って着た。上はレザージャケットに近いデザインで赤、下はジーンズに近いデザインでフィリスの要望通りの黒である。フィリスの黒髪に合う、シンプルながら胸とズボンの腰にヴォルファー王国の刻印がある服だった。
「うん…サイズもぴったりだ。」
「これを…2週間で!?」
「はい…フィリスさんの要望通り、8着作ってはいるんですが…完成したのはこの1着で…」
「…何かあるの?」
「刻印が間に合わなかったんです…」
「へ…?」
「各色とも完成はしているんですが…刻印が間に合わなかったんです…」
「嘘でしょ…」
「うむ、妾が見たとき、既に完成はしていたな。」
「2週間で出来上がるものなの!?」
「わふぅ、普通は無理なのですぅ。」
「もしかしたら、異世界きら召喚された特殊能力が…」
「服を作る能力だった…とか?」
「そうなのですよ、ホノカちゃん、すごく頑張ったんですよ。たまに寝ずにやろうとするから、ジャンと私が止めたり…でもフィリス様、お気に召されましたか?」
「勿論。デザインはイメージ通りだし、肌触りも良いよ。」
「フィリスさん、手直しは…?」
「必要なさそうだ。後の服も同じ様にお願いするよ。」
「あ…有り難う御座います!」
「うむ…レンフィア、ホノカさん。素晴らしいものを見せて貰った。」
「本当に…フィリス兄様に良くお似合いです。」
「さて…これだけ早く作ってくれたんだ、ホノカさん、これを。」
フィリスはペンと紙、そして様々な糸等をホノカに渡す。
「フィリスさん…?」
「これでもっと多くの服を作ってください。代金の補填としてお渡しします。」
「有り難う…御座います…」
ホノカは嬉し涙を流した。
「ところでマリアーナ。」
「なんですかの、フィリス様?」
「…ホノカさん達に呼ばれてたけど、何でなの?」
「うむ…妾達は服は自分の意思で帰られるじゃろう?」
「そうね、私達の服は鱗とかだもんね。」
「試作として作ったものも着せられたが、イメージ通りか服を見せて欲しいと頼まれたのじゃ。」
「何でマリアーナなのかしら?私達でも良さそうですのに…」
「身長的に妾がフィリス様に近いでの。」
「なるほどね!」
「わふぅ…」
「どうしたの、ハクア君?」
「私達も服を作って貰えないかなって思っちゃったのですぅ…」
「確かに…あんなに素晴らしいものを見たら…欲しくなりますね。」
「まあ、私達はともかく…」
「…アサギさんは作って貰ったら?」
「そうですね。お金はありますから。」
「頼んできますわ。」
四龍は駆け足でレンフィアとホノカを追っていった。後日、アサギ用の服も新調された。そのついでとばかりに、四龍、マリアーナ、ミロ、ハクア、マティーナの服も届いたのだが…マティーナだけは幼女の服だけでなく成人の服も届けられたのは別の話である。
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