第121話
その後ミユキ達は寝室へ案内された。まだ1人で寝るのは辛いらしく、皆同じ部屋に集められた。客室の中でも一番大きな部屋を割り当てられて、ゆっくり眠りたい、そう言っていたので自由にさせる。さて、その間にフィリス達はフィリスの部屋に集まっていた。フィリス、四龍、マリアーナ、ミロ、ハクア、マティーナ、アサギだ。
「さてと…早速ファーリス様にお話を聞いて貰いたい訳だけど…」
「…へ?」
すっとんきょうな声を挙げたのはマティーナだ。
「フィリス君、神様が普段話を聞いてくれると思ってるのかい!?」
「そうですよ、ファーリス様にお話を伺うなど…不可能です。」
アサギも首を横に振ってマティーナに同感する。が、早くも返信が来たようだ。
"皆さん、目を瞑って、リラックスしてください"
頭の中に直接声が響く。何が何やら解らないマティーナとアサギも、なるべく落ち着いて目を瞑る。いつかの感覚に包まれて、皆が再び目を開けると、目の前にファーリスが立っていた。すぐに跪くフィリス達、それに習い、マティーナとアサギも跪く。
「久しぶりですね、フィリス、皆。立ち上がって下さい。」
そう言われて皆立ち上がる。マティーナとアサギは何が起こったのか解っていない。しかし、ファーリスの神の気に充てられ、緊張しているようだった。
「先生、アサギさん、そんなに緊張されると、ファーリス様も困りますよ。」
「えっと…あの…」
「恐れ多くて…」
「フフフ、まあゆっくり待ちましょう。」
そう告げたファーリスは指をパチンッと鳴らす。何もない空間から、草木が生い茂る空間に移動し、そこには人数分のカップと椅子、机があった。
「少し長い話になりそうですから。」
そう告げられ、皆席に着く。ランファがお茶を煎れ、フィリスが収納袋をマリアーナに渡し、マリアーナ特製のお菓子を机に並べていく。その様子を見て、マティーナもアサギも落ち着いた。
「さて、フィリス、皆、まずはお疲れさまでした。調べていく内に、バリロッサ帝国が犯人だと確信しましたが、その頃にはフィリス達と会談する話になっていましたから、フィリス達に任せることにしました。御免なさい。」
頭を下げるファーリスに、皆首を横に振る。
「その間もファーリス様は他のことを考えておられたのでしょう?」
「…結論から言いましょう。今回助けた10人を、元の世界へ帰す方法はあります。しかし、一度召喚された者のその前の暮らしはもう出来ません。」
「どういうことですか!?」
マティーナが叫ぶが、隣に座ったマリアーナが落ち着くよう促す。
「…元の世界の方々には…彼女達の記憶が無いはずです。召喚された際にその地の者達と暮らした記憶、子供が産まれた記憶等が消されるのです。そうしないと…世界に矛盾が起きるためです。彼女達を帰しても、そこには誰も知るものもいないのです。」
「そんな…じゃあ彼女達は?」
「…この世界で暮らすしかない。」
エンレンとスイレンが項垂れる。
「フィリス、お願いがあります。」
「…」
黙って聞いているフィリスにファーリスが告げる。
「彼女達の力になってあげて下さい。」
「解りました。」
「即決!?」
「フィリス様、大丈夫なんですの!?」
今度はライファ、ランファが声を荒げる。
「私1人なら無理だよ。でも…皆がいる。彼女達の幸せを一緒に考えてあげられる皆が。」
「うむ、妾達はフィリス様に付き従うのでの。」
「苦労だとは思わないよ!」
「わふぅ、でも大変なのですぅ。」
マリアーナ、ミロ、ハクアもやる気はあるが、どうしたらいいか悩んでいる。
「先生、アサギさん。力を貸して下さい。」
フィリスは2人に頭を下げる。マティーナとアサギは顔を見合せ、お互いコクリと頷く。
「勿論だよ、フィリス君。」
「こうして出会ったのも人の縁。投げ出す真似は出来ません。」
そう話す。ファーリスは笑顔で、
「良かった…やはりあなた達に任せて良かった…」
と言ってくれた。その後の話で、取り敢えず彼女達を学校に通わせ、その上で仕事を探すことに決めた。そして暫く歓談し、元の世界へと戻り、皆にその旨を伝えた。最初納得出来ない顔付きだったミユキ達も、最後には納得してくれた。そして半年程マティーナとマリアーナが他の学生と同じ様に教育することに決まった。
読んで下さっている方々、有り難う御座います。




