第120話
それから2時間後、漸く身支度も終えたとの事で、謁見の間に皆が集まる。メンバーはフィリス、四龍、マリアーナ、ミロ、ハクア、マティーナ、アサギ、マーティス、バーバラ、女の子10人、大臣、マーティスの近衛騎士3人である。
「さて…異世界からの皆さん、はじめまして。私がヴォルファー王国国王、マーティス・ヴォルファーだ。フィリスから聞いている、そなたらの世界に王政は殆ど無いと。だからあまり畏まらずに話をして貰って構わない。」
「第1王女、バーバラです。大変な目に逢われた皆さんを、我々は受け入れるつもりです。警戒されるのは仕方ありませんが、ゆっくりとなさってください。」
と、マーティスとバーバラが挨拶をする。と、女の子の1人が代表して話す。
「…ミユキ・カサハラです。其方の…マティーナさんからの提案で……話をスムーズにするため、みんなの代表として…お話をさせて頂きます…」
「ミユキさん、焦る必要も緊張もしないで下さい。リラックスして。普通に話してください。」
「はい。」
フィリスの言葉に皆安堵する。
「さて…皆さんはこの世界に来てどれくらいなのかな?」
「…正確には解りません。ただ…半年以上は…閉じ込められていた気がします…」
「酷いことをするわね!」
「…姉さん、気持ちは解るけど、今は話を聞く時間。」
エンレンもスイレンも気持ちを押さえきれない様子だ。
「…たまに食事を貰ったりはしていましたが…パンを皆で分けあったり…」
「普通の人間なら発狂してもおかしくないじゃない!」
「ライファ、落ち着きなさい!」
ライファ、ランファも憤慨するが、話を途中で止めてしまう事になってしまっている。
「…いつまでこんな生活が続くのか…元々30人以上はいた私達も…10人になって…グスッ。」
思わず涙を流すミユキ達。
「そして…後はご存じの通り…フィリスさん達に…助けて貰って…」
「うむ…ミユキさん、皆さん、大変だったな…」
「叔父上、発言しても宜しいですか?」
それまで黙っていたフィリスがマーティスに言う。マーティスは頷いて、発言を促す。
「ミユキさん、皆さん、閉じ込められていた人達は戦闘には向かない、利用価値は無いと言われたのですよね?」
「はい…私達は…特殊な能力がない無能だと言われて…」
「一緒に召喚された人に、別の人間やモンスターをを召喚出来る人、獣人化する人等、いましたか?」
「…はい、いました。面識は…ありませんでしたが…」
「…その人達はどうなりましたか?」
「…私が殺しました。敵対され、此方も危うかったので。」
「そうですか…」
そこまで聞いて、フィリスはバーバラの方を見る。
「バーバラ、今までの話を聞いて、君に質問をするよ。」
「はい、フィリス兄様。」
「現状、我々ヴォルファー王国が彼女達の為に出来そうな事を言ってみて。」
そう言われ、考え始めるバーバラ。
「フィリス様、まだ殆ど情報が無いのに、バーバラ殿にはまだ難しいのでは?」
「そうだよ、パパ。」
「わふぅ、私には難しくて解らないのです。」
マリアーナ、ミロ、ハクアが発言をするが、バーバラは真剣に考えている。
「フィリス兄様、間違っているかも知れませんが…」
「勿論、何が正しいかは解らないけどね。」
「…ミユキさん達が元の世界に帰る方法を模索する事…後、皆さんの身の安全の確保…そして、最悪の場合この世界で暮らすことになったとして、生活が出来る基盤を提供する…でしょうか。」
「流石、私と同意見だよ。これだけの情報で、そこまで考えられるようになった、これならいつでも女王になれる。」
「フィリス兄様…」
「ミユキ君、フィリス君達を信じてあげられるかい?」
「えっと…あの…話が見えないのですが…」
「ミユキ殿、フィリス殿達は貴女方に、元の世界へ戻る方法を考えるが、それが無理ならこの世界で暮らせる様にすると言っているのです。」
マティーナ、アサギの発言に、ミユキ達は驚いた。
「…どうして…私達のために…そこまでしてくれるんですか?」
そう言われて、フィリス達は笑った。
「ミユキさん、皆さん、フィリス様は元々この世界の人じゃないの。」
「…貴女達が転移者なら、フィリス様は転生者。」
「この世界の神、ファーリス様にこの世界に遣わされた…」
「言うなれば貴女方と似た境遇なのですわ。」
「この世界の事も、お主らの世界の事も、知識も妾達よりも理解なされておる。」
「そのパパが皆を守りたい、そう決めたんだよ。」
「わふぅ、私達はそれを信じるだけなのです。」
「間違いがあったら私達も止めるけど…」
「フィリス殿の考えは正しい、そう思うのです。」
「まあ、答えを出したのはバーバラだけどね。」
皆、口々にそう言う。その言葉にミユキ達は涙を流した。
「皆さんは大変な苦労をしてきた、これからこの国で暮らすとしたら、仕事はして貰うが、徐々に慣れていって貰えればいい。このヴォルファー王国も、フィリス達がいなければ、そなたらの様な被害者を出していたかも知れん。暫くは療養すると良い。」
マーティスが優しく笑いかけ、謁見は無事に終わった。
読んで下さっている方々、有り難う御座います。




