第118話
地下にはフィリス、ミロ、マティーナだけで向かう。四龍とマリアーナには地上の敵の殲滅を頼んだ。カビ臭い地下の牢獄を見ると、ぼろ切れ着せられた女の子が10人、牢屋に閉じ込められていた。フィリスはその現状を数瞬見た後、魔道具である袋を取り出し、中から毛布を沢山出して、ミロとマティーナに渡し、女の子達に纏わせた。
「もう良いよ、フィリス君。」
マティーナに言われて、フィリスが見ると、何日も風呂にも入れて貰えなかったのだろう。凄まじい悪臭がしたので、フィリスはクリーンとキュア、リカバリーの魔法をかけてやる。
「さて…言葉は解るね?」
「は…はい…」
女の子の1人が答える。
「私達はこのバリロッサの隣国、ヴォルファー王国の者だ。君達は勇者召喚で召喚された人達で間違い無いかな?」
「はい…私達の能力は…戦闘に向かないと…ただ放置は出来ないと言われて…ここに閉じ込められました…」
「…酷い。」
「君達は…どうしたい?」
「え?」
「勇者召喚に関わったこの国の者達を殲滅する。しかし、君達に敵対の意思がないならば…私達に少し情報を提供してくれれば、ここよりマシな待遇をしてあげられる。どうかな?」
「…何を…?」
「魔神計画…この言葉に聞き覚えは?」
「あ…あります…」
別の女の子が答えた。
「私の友人の1人が…その計画の為の力があるって…連れていかれました…」
「場所までは…解りませんが…」
「そうか…おっと、御免よ。取り敢えずここから出よう。大丈夫、君達を閉じ込めていた者達は既にいない。」
そう伝えて、フィリスは皆を連れて外に出る。既に殆どのバリロッサの兵士は四龍が叩き潰し、マリアーナはその援護にまわっていた。
「フィリス様、その子達は?」
「…勇者召喚に巻き込まれた人達だ。連れて帰る。」
「…確かに。巻き込まれただけなら罪はない。」
「あっ、それと情報を聞き出しておきました!」
「何でもこの城の東に勇者召喚、魔神生産の場所があるそうですわ。」
「パパ、どうするの?」
「…マティーナ先生、ミロとマリアーナと共にここにいて、彼女達を看てあげてください。恐らく彼女達は疲弊してますから。。」
「…フィリス君?」
「完全に叩き潰し、私達も直ぐに戻ります。」
「解ったよ、無茶は…しないよね?」
「勿論です。あぁ、後…」
そう言うとフィリスはマリアーナに袋を渡す。
「マリアーナ、彼女達に食事をさせてあげて欲しい。」
「了解じゃ、フィリス様。」
フィリスは四龍と共に東へと向かう。
建物は直ぐに見つかり、フィリス達は中へと入る。そこには培養液に浸けられた沢山の人がいた。
「これは…」
「これが全部魔神…?」
「その通りだ、まだ完成はしていないがね。」
フィリス達が呆気に取られていると、奥から研究者のような者達が出てきた。
「勇者として召喚され、元研究員だった僕にとってはありがたい話さ。人体実験を好きなだけさせて貰えるなんてね。」
「お前は?」
「自己紹介しよう。僕はコウイチロウ・ドイ。ここにあるのは、僕の研究の成果さ!」
そう言って、指を鳴らす。すると、培養液の入った容器が割れて、魔神が外に出てくる。
「因みに、そいつらは召喚された勇者のなれの果てさ。まだ戦闘には使えるけど、弱かったからここに放り込んでいたんだ。まあ、本当に使えないのは城の地下に放り込まれているけどね。」
そこまで言うが早いか、フィリスはショットガン、スパスを召喚し、立て続けに7連射した。ズガンッズガンッとけたたましい音を立てて発砲された散弾は、出現した魔神、コウイチロウ及びその後ろの研究員をも撃ち殺した。
「阿呆くさい、貴様らの話など聞いてられるか。」
「フィリス様、どうしましょうか。」
「皆、外からこの建物に攻撃をして欲しい。」
「…仰せのままに。」
「こんな害悪、残しておく方が無理ですよね。」
「少し派手に参りましょう。」
フィリス達は中も詮索せず外に出て、四龍の魔法で完全に建物を破壊した。建物のあった所には…巨大なクレーターが出来ていた。勿論、フィリスは魔法障壁を張って、余剰エネルギーを防いでいたのは言わずもがなである。
読んで下さっている方々、有り難う御座います。




