第117話
翌朝、マーティス達を見送り、残った騎士、兵士に敗残兵を任せて、フィリス達はミロに乗って一路バリロッサ帝国本国へと向かう。ジオルグとジルトスはミロに乗せるのではなく、足に縄をくくりつけてこの先に宙ぶらりんの状態で運んでいる。ミロが飛び始めて1時間ほどで到着する。敵襲への対策も疎かで、侵入は容易であり、ミロは城の庭に着地した。と、直ぐに兵士達がフィリス達を取り囲む。
「何者だ!?」
そう言われ、フィリスは殺気を出し、兵士達に言う。
「貴様らの王、ジオルグ・バリロッサとその息子、ジルトス・バリロッサを捕獲した。話の解る奴はいるか?」
その言葉にタジタジになりながらも、謁見の間に案内される。勿論、ジオルグとジルトスを引き摺りながら。四龍達の手を汚したくは無いので、フィリス直々に引き摺る。と、謁見の間に着くと、そこにはジルトスより若い1人の男が玉座に座っている。
「ようこそ、バリロッサへ。」
そうあいさつをしてくる。が、フィリスは睨み付け、ジオルグとジルトスをその男の前に放り投げた。
「ぐっ…ジェランド、奴を…殺せ!」
ジオルグが生きも絶え絶えにそういうが、ジェランドと呼ばれた男は首を横に振る。
「父上も兄上も、龍の逆鱗に触れたようですね…」
「ほぅ…少しは話が解るか?」
フィリスは少し安堵した。ジオルグ達みたいな阿呆が出てきたらどうしようかと悩んでいたからだ。
「僕はバリロッサ帝国第2王子、ジェランド・バリロッサです。次期ヴォルファー王国国王、フィリス・ヴォルファー殿、会えて嬉しいよ。」
「くだらない話をしに来たわけではないのでね、単刀直入に言わせて貰う。」
「…どうぞ。」
「我がヴォルファー王国のシンガ村に、其方の敗残兵約6000人を預かっている。残りは全て死んだ。」
それを聞いて、ジェランドは汗を吹き出した。
「とっとと引き取りに来い…とは言わない。交渉材料だからな。でだ、そこの阿呆2人と6000人の命と引き換えに、此方の4つの条件を飲んで貰う。異論はあるか?」
「これ以上の犠牲は僕は望みません…しかし、具体的にお願いします。」
「まず1つ、アンタイルの街及びその周辺までをヴォルファー王国の物とする。」
「…貴重な魚が手に入らなくなりますが…仕方ありません。」
「2つ、勇者召喚とやらの完全破棄及び無下に召喚された人達の解放。恐らく地下にでも放り込んでいるだろう?」
「…」
「3つ、魔神の生産の完全破棄。」
「そこまでばれていましたか…いや、父上が話したのかな?」
「4つ、勇者召喚及び魔神生産の関係者全てを差し出せ。以上だ。」
「…勇者召喚及び魔神生産の関係者をどうするつもりですか?」
「決まっている。その件で被害を被ったんだ、根絶やしにする。」
「その計画に…我々王族も含まれています。呑むことは…」
「出来ないと?」
「そんなことをすれば、バリロッサ帝国の歴史が終わって…」
「知ったことか。貴様らは…私の大切な人達に手を出した。滅びるには充分だろう?」
「…平和的解決は出来ませんか。」
そう言うと、ジェランドは指を鳴らす。すると、謁見の間の隅のカーテンから、魔神が姿を現した。
「残念ですよ、フィリス・ヴォルファー!」
ジェランドがそう告げると同時に…エンレン、スイレン、ライファ、ランファが四方八方に魔力を放出させた。城の壁は跡形もなく吹き飛び、魔神は一瞬で駆逐された。
「平和的解決…ね?阿呆の子供は所詮阿呆だったか。」
「まっ…待って…」
フィリスは右手に漆黒の銃を召喚し、ジオルグ、ジルトス、ジェランドに目掛けて3回発砲。頭を撃ち抜かれ、3人は息絶えた。直ぐに騎士、兵士がやってくるが、其方は四龍が対処をしてくれた。
「皆、地下に行こう。」
そしてフィリスは地下へと向かった。




