第115話
1時間後、エンレン達が戻ってきた。エンレン達の持ってきた獲物は、マリアーナが調理の長となって皆で調理している。それから遅れること30分、ランファが皆を連れて戻ってきた。フィリスはマーティス、バーバラ、マティーナを連れてとある屋敷にやって来ていた。そこにはジオルグとジルトスの2人を閉じ込めていた。
「さて、こうやって叔父上達を呼んだのは、この2人の処遇を考えたいからです。」
フィリスがそう言って、皆でジオルグ達を囲むように椅子に座る。
「取り敢えずフィリス…苦しめている魔法だけ解除してやれないか?呻いていては話もし辛い。」
「後ろ手で縛ってあるのでしたら、大丈夫でしょう、兄様?」
「そうですね…」
フィリスは取り敢えずヴェノムとリジェネを解除した。息も絶え絶えの2人。と、ジオルグが悪態を付く。
「貴様ら、我々をどうするつもりだ!?」
そう言われて、フィリスは首を傾げる。
「取り敢えずは生かしてあるだけですね。其方の国との会談で、役に立たなければ死んで貰うだけ。しかし、その前に聞きたいことがあるからこそ、生かしてある。それだけです。」
「くっ…マティーナ・ティルだけかと思っていたが…こんな化け物が何人もいるとは…」
「…どういう意味だ?」
それを聞いてもマティーナは何も言わず、俯いている。それを見て、ジオルグが笑いだす。
「ハッハッハ、何も知らないのか?そのマティーナ・ティルこそ、この世で最初の魔神なのだ!我が先祖が約150年前、魔神作成計画を立て、その成功例がその女よ。」
「…」
誰も何も言わないのを良いことに、ジオルグは続ける。
「マティーナ・ティル以降、長年頓挫し、ならば異世界の勇者ならば計画を成功に導ける、そうお告げ通りに実施してきた。その分金がかかったが、貴様達ヴォルファーからの税で賄ってきた。そして、半年前に完成した魔神を連れてきたのに…何故貴様らに負ける!?おかしいだろう、最強の魔神と勇者だぞ!?」
ジオルグがそこまで話したとき、フィリスは再び漆黒、純白の銃を召喚し、2人にヴェノムとリジェネをかける。再び苦しみだし、話すこともまともに出来なくなった。と、魔法弾を撃ち込んでいる間にマティーナがいなくなっていた。取り敢えずフィリスは屋敷を出て、マティーナを探す。
フィリスがマティーナを発見したのは、防壁の近くだった。
「先生?」
小さな体を更に小さく踞り、マティーナは泣いていた。
「フィリス君…ごめんね。…騙していたことに…なるよね?」
「…?」
「私はバリロッサ帝国の人体実験で産まれた人工生命体…人じゃないんだよ。私がこの幼子の姿を取るのは、魔力を抑えるため…若返りの魔法と言っていたけど、実際にはそんな魔法なんて無いんだよ。」
「ですよね。」
「人工生命体として、悔いの無い生き方…それだけが私の目的だった…何かを残すため、必死に勉強も、何でもしてきた。もしかしたら、君にいつか話さないといけない…でも恐怖もあった。それでも…君と居たかったから…この大陸に戻ってきた。」
「…」
「戦争で…こうして…私の秘密がばれた以上…私は…」
涙を流すマティーナを、フィリスはしゃがんで抱き締める。
「フィリス…君?」
「マティーナ先生、何処にも行かないで下さい。先生の力、人柄が私達はすばらしい事を知っているんですから。」
「でも…」
と、四龍、マリアーナ、ミロ、ハクア、アサギが駆けつけてきた。
「マティーナさん!」
「…お迎えに参りました。」
「フィリス様と同調して。」
「話は聞いておりましたわ。」
「ただ者ではないのは重々承知しておったよ。」
「マティーナお姉ちゃん、行かないで!」
「わふぅ、一緒に居て欲しいです!」
「マティーナ殿…」
その皆の言葉を聞いて、フィリスの胸の中でマティーナは泣いた。
読んで下さっている方々、有り難う御座います。




