第111話
「まさか…ソウタの最強の召喚が!?」
男は驚いたが、次の瞬間両腕をクロスすると、力を溜め始める。すると、男の衣服が破れ、体が毛に覆われた獣人になる。
「しかし、僕には勝て無いさ!」
そう言ってフィリスに目掛けて突進し、鋭く伸びた爪で攻撃を仕掛けてくる。しかし、その攻撃をアサギが小太刀で防ぐ。
「フィリス殿に傷を付けさせるものか!」
そう言うと獣人化した男と小太刀と爪での斬り合いになる。物凄いスピードで、何合繰り返されたか解らないほど斬り合い、唾競りをした後、お互いに距離を取る。
「へぇ…中々やるねぇ…どうだい、僕の女にならないかい?」
「断る!」
そう言うとアサギは背中から、今まで使ってこなかった大太刀を鞘ごと抜き、腰溜めに居合い抜きの構えを取る。次で決めるつもりだと、男も考え、更に自身の体に力を込める。すると、体が一回り大きくなった。
「このヒデノリの一撃、耐えられるか!」
そう叫び爪を大振りに叩き込む。誰もがアサギが切り裂かれたと思った瞬間、アサギの姿が消える。そう、アサギは超速で動き、残像のみをそこに残していたのだ。
「何ッ!?」
驚いたヒデノリは周囲を見渡すが、アサギの姿はない。しかし、足音のようなものは聞こえている。スタンッスタンッと聞こえる音がヒデノリの近くまで来たとき、ヒデノリは回転し、爪を凪払う。しかし手応えは無い。空を斬ったヒデノリの爪は、次の瞬間、指の第1関節から切断された。
「ぐぁ!?」
思わず仰け反るヒデノリ、その次の瞬間、ヒデノリの正面にアサギが姿を表す。
「アマツカ流抜刀術奥義不知火の型、思い知ったか?」
何をされたのかも解っていないヒデノリに対してアサギがそう言うが、ヒデノリは余りの痛みにのたうち回る。
「終わりだ!」
アサギは大太刀を背中に戻すと、再び小太刀を逆手に抜き、ヒデノリの心臓に両方の小太刀を突き刺した。
「まさかソウタもヒデノリも殺られるなんて…」
驚いた女は逃げ出そうとする。追撃しようとするアサギの部下達だが、フィリスがそれを両手を開いて停める。
「フィリス様?」
「不用意に近付かない方がいい。」
すると女はある程度距離を置いて立ち止まり振り向いた。
「あはは、私の超魔法、受けてみなさい!」
そう言うと女は両手を上に挙げると、詠唱を始める。
「リア・ミツルギの名において命ずる、万物の象徴、我が敵を屠れ、スターダストレイン!」
そう叫んだ次の瞬間、フィリス達の頭上から隕石が雨の様に降り注ぐ。
「フィリス様、皆、妾の近くへ!」
マリアーナがそう叫び、フィリス達がマリアーナの傍に移動し、マリアーナが障壁を張る、その間約3秒、レンカが被弾し、肩に傷を負った以外に被害は無かった。フィリスは直ぐにレンカの治療をする。
「フィリス様、すみません。」
「この程度で済んでよかった。生きてさえいてくれれば、大抵の傷は治せますから。」
そうしている間にも、隕石は地形を変えるほど降り注いでいる。と、フィリスがシンガ村の方を見ると、鋼鉄の壁に目掛けても大量の隕石が降り注いでいる。フィリスの肉眼では見えないが、壁がボロボロになっていく。
「この隕石を何とかしないと…」
「フィリス様…妾の事を嫌いになりませぬか?」
「…マリアーナ?」
「今…妾は自分で決めた戒めを破る!」
そう言うと、マリアーナは障壁の形を変えて、障壁に当たった隕石がリアに向くようにした。大量の自分で襲来させた隕石の雪崩のような攻撃を受けて、リアは飲み込まれていった。
「マリアーナ、有り難う。」
フィリスはマリアーナに近付き、後ろから抱き締める。
「あの状態では私の銃も効果が無かった。あのまま攻撃にさらされていたら危なかった。」
「フィリス様…妾は…妾は…」
「嫌いになるわけ無い。全ては私達の為にやってくれた事だ。」
「そうです、マリアーナ殿。胸を張ってください。」
「アサギ殿…」
マリアーナが落ち着くまで、しばらくかかったが、難なく勇者と呼ばれた3人を撃破出来た。
読んで下さっている方々、有り難う御座います。




