表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔弾転生  作者: 藤本敏之
第1章
11/129

第10話

フィリスとマティーナはグラウンドへと出る。と、そこでフィリスは疑問に思った。

「マティーナ先生、校長室から出て大丈夫なのですか?」

疑問に思ったことを口にすると、マティーナは、

「うん。カリナが後は処理できる事しか無いし、書類が貯まってきたら連絡するって言ってくれたからね。君のお陰でもあるし、部屋で出来る事もあるけれど、初日はどうしても外で行いたかったんだ。」

ニコニコしながらそう告げた。

「それでね、君の魔法の質を私に見せて欲しいんだ。」

マティーナはそう言うと、グラウンド上に的を出した。

「君の今使える最大の魔法を、各属性全て見せて欲しい。」

わくわくしながらマティーナは言った。それを聞いて、フィリスは少し困惑していたが、仕方ないと納得して、的から一定の距離を取った。そして、ファイアーボールを右手で出した。メラメラと音をたてる火球を見て、マティーナは不思議がった。

「フィリス君、私は君の本気が見たいって言ったんだよ?」

「これが私の本気なんですよ。」

フィリスがマティーナにそう告げる。すると、マティーナは怒ったような口調で、

「巫山戯ないで!貴方の魔素値は、軽く見積もっても私と同等かそれ以上でしょう!?それが下級魔法のファイアーボールだなんて…!」

そう言ってきた。しかしマティーナは疑問に思った。フィリスは出したファイアーボールを話している間出し続けている。

「まさか…魔法の持続化!?」

驚愕の眼差しをフィリスに向けるマティーナ。この世界の魔法は、一般的には持続させて使うことが出来ない。魔素の無駄遣い、昔からそう言われてきたせいで、仕える者はいないとされてきた。勿論、放った後、例えばファイアーボールが着弾し、燃えた木などは対象が燃え尽きるまで燃えるが、持続性のある魔法は皆無といって良かった。以前説明した通り、炎と水は温度操作、雷は距離、風は宙を舞う、それが難しいと言われているが、特に風が最も難しいとされていた。断続的に魔法をかけ直す作業を、飛行中行い続けるからだ。しかし、フィリスは違った。継続的に魔法を使用し続ける事が出来る。つまり、体内の魔素が尽きるまで、魔法を使い続けることが出来る。本来魔法は同じ系統の魔法だけを使うのであれば、余計な魔素の消費を抑えることが出来るが、違う系統の魔法を使うと魔素は急激に消費される。例えばファイアーボールの後にイラプションを使うと、イラプション単体で使用するよりも、体に負荷がかかり、魔素も倍ぐらい消費することになる。魔法は便利と言うよりもややこしい存在だというのが世界の認識だというのに、その理論を打ち消す程の成果をフィリスは見せていた。

「それ…誰に習ったの?」

マティーナが疑問を口にする。フィリスは冷静に答える。

「私を産んで育ててくれた、今は亡き母から習いました。」

「…そうか。…まあいいや、取り敢えずあの的へ向けて放ってくれるかい?」

前回のクラス分けを見ていなかったマティーナは人伝えで威力のことは聞いていたが、生で見るのは初めてになる。フィリスは言われた通り、的へ向けてファイアーボールを放つ…のでは無く投げつけた。するとファイアーボールは的に直撃し、的は爆音を鳴らして炎上。巨大な火柱がグラウンドにたった。

「そ…そんな…」

がっくりと両膝をついて驚くマティーナ、的にちゃんと当たって良かったと思っているフィリス、そんな2人が見ている前で、的は溶けて無くなってしまった。火は的が無くなると自然と鎮火したが、マティーナの驚きは隠せなかった。が、それで終わるマティーナでは無かった。マティーナは落ち着きを取り戻すと、次の的を用意し、他の属性も見せて欲しいとフィリスに言った。フィリスはそれぞれの的に対して、下級魔法のアイスニードル、サンダーボルト、ウィンドエッジを放った。結果、的はそれぞれ凍結、貫通、切断された。見るも無惨な光景に、マティーナは発狂したように笑っていた。その様子をみて、フィリスは心配になり、声をかけた。

「…マティーナ先生?」

「アハハハハッ!凄いわ、フィリス君!四大属性に関して、私が教える事なんて殆ど無いよ!」

「…有難う御座います。」

「でもね、1つだけ聞きたいんだ。」

「何でしょうか?」

「どうして下級魔法ばかり使うのかな?下級魔法をそこまで使えるなら、上級、いや極大魔法まで使えそうなものなのに…」

それを聞いて、フィリスは理由を告げる。

「私が育った村の文献にあったのは、下級魔法の使い方だけでしたから。」

「え?」

「実は、魔法を教えてくれていた母は、下級魔法の使い方と、魔法の持続化は教えてくれました。勿論、どのようにすれば魔法が強くなるのかも。でも、中級魔法等、強力な魔法は教えてくれなかったのです。」

「じゃあ今から覚え…」

「それは無理なんです。」

「え?」

「先生は、キャパシティをご存じですよね?」

「勿論だよ。」

キャパシティとは、魔法をどれだけ覚えられるかという容量のことである。例えばファイアーボールのキャパシティを1とすると、イラプションは8位である。更に上の魔法となると、更にキャパシティが多く必要になる。しかし、キャパシティは生まれて増えることが無い。その為、基本はキャパシティの多い人間程魔法に強いと言えるのである。そこでマティーナは想像してしまった。

「まさか…フィリス君、キャパシティが殆ど無いの…?」

そう口にすると、フィリスは首を横に振った。

「私がキャパシティを抑えるために、他の魔法を使わないのは、固有魔法の為なんです。」

フィリスは言葉を続けた。

「必要以上に魔法を覚えて、キャパシティを使い尽くしたとき、私の固有魔法が意味をなさなくなってしまうのでは無いか、そう思うようになりました。」

「じゃあ使える魔法は?」

「そうですね…キャパシティに入っているのは、ファイアーボール、アイスニードル、サンダーボルト、ウィンドエッジ、マジックシールド、そして固有魔法だけです。」

「…固有魔法、見せて貰える?」

そう言うと、マティーナは再び的を用意した。フィリスはその的に向かって立つと、右手にデザートイーグルを召喚し、引き金を引いた。ズガン!と、凄まじい音が鳴り響く。迂闊にも目を瞑ってしまっていたマティーナが次に目にしたのは、跡形もなくなっている的と数100メートル抉れた地面だった。

「各属性をこれで使えるようになること、それが私の目標なんです。だから基礎魔法と下級魔法だけで充分なのです。」

元々マティーナは、この子は何かが違うと思っていたが、それを現実に見せられて驚愕していた。まだ15歳の少年がこれ以上強大になる、それを恐怖と感じるよりも、見てみたいという欲求に変わることは、必然だったのだろう。

「解ったよ、フィリス君。君の固有魔法は誰にも言わないし、むしろ応援するよ。だから、私の教育を続けさせてくれるかい?」

「勿論です、マティーナ先生。先生から教わりたいことはまだまだありますから。」

「フフフ、これからもよろしくね。」

そう言って、堅い握手をする2人だった。

読んで下さっている方々、有難う御座います。感想など頂けましたら励みになります。宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ