第106話
翌日、フレデリック王国へ行くのに1日程かかるので、断念してヴォルファー王国へ帰ることにしたフィリスとアサギ。ハーヴィ家の庭には、朝だというのにハーヴィ家の人達全員、テッド、ティファとその家族、親方とその弟子達が集まってくれた。
「フィリス、忘れ物はないか?」
カーマインがそう言う。
「大丈夫です。昨日、皆へのお土産も買いましたし、来た道を帰るだけですから。」
「でもねぇ…結婚もしていないのに、お姫様抱っこは無いのではないかしら?」
マチルダの言葉に赤面したのはアサギだった。
「仕方ありませんよ。抱えたり、おぶったりすると、安定感が無いですから。」
「そういう問題では無いですよ、兄さん。」
「女性としては羨ましいですけどね…」
コールもネーナも思うことはあるようだが、それはフィリス自身が気付くべきだと、言葉を濁した。
「フィリス…大変だろうけど頑張れよ。」
「遠くにいても、私達は貴方の味方だから。」
テッド、ティファの言葉に嬉しさが込み上げてきて、2人を抱き締めるフィリス。
「国王になろうがなんだろうが、坊っちゃんは坊っちゃんでさぁ。あっしらの力が必要なら、いつでも来てくだせぇ!」
「そうですぜ!」
親方達の励ましを受けて、フィリスは頷く。そしてフィリスはアサギを抱き抱え、
「では皆さん、お元気で。」
「有り難う御座いました。」
そう告げて風魔法で飛行して一路ヴォルファー王国へ向かう。
「気をつけてー!」
「また来てねー!」
ヴォルファー王国の大陸に着いて、アンタイルの街を越えて、それでもフィリスは休憩無しに飛んでいると、バリロッサ帝国の方角から、馬車が6台走っているのに出くわした。
「フィリス殿、あれは?」
「…近日中に来ると言っていたバリロッサ帝国かも。」
「どうします?」
「一刻も早くヴォルファーに帰りましょう。叔父上に報告しなければ。」
恐らく馬車の速度からみても、明日までかかりそうなので、フィリスは全力で飛行する。
バリロッサ帝国の馬車を見つけてから一時間程経ったときにはフィリスとアサギはヴォルファー王国に到着していた。直ぐにマーティスと謁見の間にて話をする。その際、皆集まっていた。
「おぉ、フィリス、早いな。」
「叔父上、ただいま帰りました。」
「ガデル王国はどうだった、アサギ君?」
「えぇ、ヴォルファー王国にも負けない、素晴らしい国でした。」
「と、話は後で。叔父上、明日にはバリロッサ帝国の馬車が6台、此方に到着するでしょう。」
「…誠か?」
「飛行していた時に見ました。」
「うむ…ではフィリスよ、明日はここにいて欲しい。次期国王として紹介する。」
「解りました。アサギさん、皆と訓練をされますか?」
「そうですね。ゆっくりと休ませて貰いましたから。」
「アサギさん、特訓メニューを見ていて貰えますか?」
「…私達も考えたけど…」
「やっぱりアサギさんみたいには上手くいかなくて…」
「宜しくお願いしますわ。」
「解りました。」
「マーティス殿、厨房を借りても宜しいか?」
「マリアーナ嬢、どうした?」
「うむ。今日は妾が料理したいと思いましての。」
「それは楽しみだね、ハクアちゃん!」
「わふぅ、シェフの皆さんの料理も美味しいですけど、マリアーナお姉ちゃんのが一番好きなのですぅ。」
「じゃあ私もお手伝いしようかなぁ!」
「マティーナ先生、料理出来るんですか?」
「フィリス君、失礼だよ!野菜切ったり位は出来るよ!?」
それを聞いて皆笑った。
読んで下さっている方々、有り難う御座います。




