第103話
ミロに乗り、ヴォルファー王国へ戻ったフィリス達は、直ぐにマーティスと会見する。バーバラからレイジからの書状を受け取り、読んだ後にマーティスはにこりと笑った。
「うむ…フィリスよ、大変だったな。」
「いえ。充実した時間を過ごせました。」
「そして…アサギ…さんとお呼びして良いか?」
「はい、国王陛下。」
「ふむ…伯父のように接して貰いたいが…それは先の事。兎に角ゆっくりとされよ。そなたの事を頼むと、レイジ殿も気にかけている。」
「殿が…?」
「宜しく頼まれた以上、この国の事を学び、そしてそなた達の事も教えて貰いたい。お互いを知らなさすぎて、これからが楽しみに思える。」
ふふふとマーティスは笑い、大臣に指示を出す。
「アサギさん達の部屋の準備を頼む。」
「解りました。」
大臣達は直ぐに行動に移す。アサギ達もそれに着いていく。
「さて…フィリスよ。我が国の現状を話しておこうと思う。」
「長く不在でしたから、気にはなっていました。」
「うむ。フィリス達が出掛けてから、更に国の財力は3倍に膨れ上がっている。そして、お前が望んでいた孤児院も作り上げ、今現在仕事をしていない者や浮浪児は1人もいない筈だ。」
「そうですか。」
「また、お前達が開拓してくれた北からのモンスターも粗方片付き、魚等の海産物も定期的に届けられていて、この国の問題は殆ど無くなった。」
「まあ!」
「…それは僥倖。」
エンレン、スイレンが喜びの声をあげる。
「ただ…問題が浮上してきた。」
「…へ?」
「なんですの?」
ライファ、ランファが質問する。
「それはな…バリロッサ帝国だ。」
「ふむ…あの国が?」
「どうかしたの?」
「わふ?」
マリアーナ、ミロ、ハクアが疑問に思う。
「実は…3年おきに彼の国と話し合いをしてきたのだが…これを…」
一枚の書状をフィリスが受け取り、皆で読む。
「"近日中に其方に伺い、話がしたい"って?」
マティーナが簡略してマーティスにいう。
「その通りだ。…しかし、私は思うのだ。この国の王にはフィリスこそ相応しいと。」
「…まさか叔父上?」
「うむ、バリロッサ帝国の使者が来る前に、お前に王の座を譲渡したい。」
「しかし…国民の意思は…」
「問題ない。先日、お前が国王になることを反対する者はいるか各街、村に聞いてきた。その際、賛成が9割を越えておったよ。残りの1割の理由も、お前が若いからという理由だった。…皆がお前を望んでいるのだよ。」
「…叔父上…」
「フィリス兄様、私からもお願いします。」
バーバラが発言する。
「元々お父様の病気が治っていなかったら、私が継承していました。しかし…私には力はありません。お兄様こそが相応しいのです。」
「…叔父上、もうしばらく待って貰えますか?」
「…?」
「少なくとも…アサギさん達にこの国の事を教えるまで…」
「どういうことだ?」
「今日来たばかりの彼女達に、各街を見せて回りたい。そして…ガデル王国、フレデリック王国も見せてあげたいのです。王が不在になるのは…まずいでしょう?」
「…確かに。解った、しかし…」
「間に合わないならば、次期国王として紹介して貰えれば…」
「なる程な。了解した。」
そこまで話をして、アサギ達の後を追ったフィリス達。早速大浴場にアサギ達を連れて皆で入る。勿論、フィリスは一人で男湯に入った。
そこからが大変だった。まずフィリス達は魔法をアサギ達に教えた。元々、身体強化の魔法、アサギ達ミカヅチ王国の方では忍術と呼ばれているものは得意だったが、体外に放出するものは知らなかったので、その練習を行った。しかし、アサギは壊滅的に覚えが悪い…というよりは、最早キャパシティが残っておらず、習得出来なかった。残りの5人に、マティーナがヒール、キュア、リカバリーを教えた。その際に戦闘技術を見たのだが、アサギは以前操られていたとはいえ、フィリスと同等の力を見せたが、他の5人はほぼ素人レベルと言えるほど、戦い慣れしていなかった。仕方なく、四龍とマリアーナで特訓をする。マリアーナが防壁を張り、四龍が素振りや技の稽古をして、得意そうな部分を伸ばしていった。1ヶ月もすると、まともに動けるようになってきたが、アサギの十分の一にも達していなかった。
「レイジさんは…なぜこの5人を?」
そう言うフィリスにアサギが答える。
「恐らく殿は…まだ若い内に学習させたかったのかと。」
今フィリスとアサギは訓練が良く見える場所から覗いている。
「まあ、アサギさんの戦闘力の向上が出来て良かった。」
「えぇ。私は直線的な攻撃しか学んで来ませんでしたから、四龍の皆や、フィリス殿の様なトリッキーな戦い方は知らなかったので、勉強になります。」
「そう言って頂ければ、来ていただいた価値がありますよ。」
フフッと二人で笑う。と、訓練も終わったようなので、フィリス達は下へと飛び降りる。
「さて…明日は休みにするけど、私と一緒にガデル王国に行きたい人はいるかな?」
フィリスがそう言うが、5人とも…
「すみません…」
「疲れが…」
「ゆっくりと寝たいです…」
「また次で…」
「しんどいです…」
そう答えた。
「フィリス殿、私だけでも宜しいか?」
アサギはそう言ってくれた。フィリスは四龍、マリアーナ、ミロ、ハクア、マティーナに、アサギと2人で出掛けてくると伝えた。予定では3日程で帰る日程である。
「そうですね。」
「…この5人の事や…」
「国の事はお任せください。」
「私達もゆっくりしながら次の特訓メニューを考えますわ。」
「うむ。では今日は妾の特製料理を振る舞うかの。」
「パパと離れるのは辛いけど…」
「わふぅ、お土産期待するのですぅ。」
「気をつけて行ってきてよ。」
そう言われ、フィリスは頷いた。夜ご飯は、マリアーナ特製のうどん、お好み焼き、デザートにケーキと大福が出された。そして翌日、フィリスはアサギをお姫様だっこして飛行し、一路、ガデル王国へ向かった。
読んで下さっている方々、有り難う御座います。




