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きらきらした腕  作者:
9/14

9.新しい王さまがあたえたもの

 十番目の王子さまは新しい王さまになりました。

 王国は世界で一番強くて、にぎやかな、だれもがくらしやすい国となりました。

 もう攻めてくる国もないので、人々は平和にくらします。

 新しい王さまのおかげだ、と国民はよろこびました。

 代がかわり、国が落ちつくと、王さまは常にそばにひかえていた石の腕に、はなしかけました。


「おまえにほうびをやらなければならないな。今まで、なんのほうびも受けてこなかったろう」


 前の王さまは、石の腕を罪人のようにあつかっていました。

 魔物だと思っていたので、普通の人のようにほうびをあたえたことがなかったのです。

 しかし新しい王さまは、石の腕がしてきてくれたことにむくいなければならない、と思ったのです。


「おまえが望むものをなんでもあたえよう。なにがいい? 金銀財宝か? 権力か? それとも広大な領土か? 見たこともないごちそうを望むなら、優秀な料理人を十人でも百人でもあつめるし、美女がよければ世界中から百人でも千人でもあつめてこられるぞ」


 しかし、石の腕は首をふりました。


「いらないよ。なんにも」


 金銀財宝など、自分の腕でいくらでも作りだせるし、権力というならすでに王さまの次にえらい人になっていました。食べ物はそんなにたくさんいらないし、美女になど興味はありませんでした。


「なにも望まないのか?」

「今いったようなことはひとつもほしくない」

「べつの望みがあるのか? いってみろ」

「君にはぼくの望みはかなえられないよ」

「――それは、困ったな」


 王さまは考えこみました。なんとか、石の腕の望みをかなえてあげたい、と思いました。


「――わかった。では、おまえには世界一の図書館をあたえよう」


 王さまは石の腕が無類の本ずきだということに気づいていました。

 そして、たったひとつだけ望みがあり、それをかなえる方法をずっとさがしていることも。


「ありとあらゆる知識をつめこんだ、世界中の本をあつめた図書館だ。それをあたえるから、自分の望みをかなえる方法は自分でさがせ。他にも必要なものがあれば用意しよう。どこへでも自由に行っていいし、すきに生きるといい」


 石の腕は、少しだけ首をかしげました。


「……自由?」


 王さまは困ったように少しだけ笑います。


「そうだ。おまえは自由だ。もう、いやな仕事はしなくていい。おまえはじゅうぶん働いた。……じゅうぶんすぎるほどだ。わたしはね、おまえをともだちだと思っているよ。ともだちにはしあわせになってもらいたい」


 石の腕は王さまを見返しました。初めて会ったときのように、くらくうつろな目をしていました。それは、ずっとかわりませんでした。いくら王さまが石の腕を無二の親友のように感じていても、石の腕にはとどいていないようでした。


「……ともだちは、いらない」


 ぽつり、と石の腕はそうつぶやきました。

 王さまはそっと目を閉じました。そして、深く息をはきました。


「……そうか。だが、わたしはおまえをともだちだと思っているよ。それだけは、忘れないで」


 石の腕は、こくり、とうなずきました。

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