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きらきらした腕  作者:
8/14

8.たくさんの仕事

 大広間に居ならぶ人々の前に石の腕はつれていかれました。

 一段高いところに立派ないすがおかれ、この国の王さまがすわっていました。

 石の腕の横には、十番目の王子さまがひざをつきました。


「お約束どおり、つれ帰ってまいりました」

 王子さまがいうと、王さまはうやうやしくうなずきます。

「よくやった。これでわが国も安泰だ」


 十番目の王子さまは次の王さまになることが決まりました。






 それから、石の腕は王さまのお城でたくさんの仕事をするようになりました。

 毎日毎日たくさんの小石を宝石にかえました。それは、大工の領主さまのお城でやっていたことですから、どうということもありませんでした。ただ、量はずっとふえました。

 ときどき牢へつれていかれ、牢の中の罪人を宝石にかえるよう命じられました。石の腕はいわれたままに、人を宝石にかえました。もう、数えきれないたくさんの人を自分の腕で宝石にかえてきたのです。もはや、罪人を宝石にすることになんのためらいもなくなりました。

 さらには、戦場にもつれていかれました。

 そこでは、石の腕がたくさんの本を読んできたことがやくにたちました。

 石の腕が立てた作戦を実行すると、敵はおもしろいようにわなの中にさそいこまれます。

 さそいこまれたなみいる敵の軍勢を、石の腕は次々と宝石にかえてしまいました。戦をするごとにかつて軍隊だった大量の宝石をもち帰るのですから、王国はますますゆたかになっていきます。しまいには、攻めてくる敵もいなくなりました。






 毎回、戦のたびに石の腕と一緒に戦場に行かされた十番目の王子さまに、石の腕は不思議になってたずねました。


「君はいつになったら、王さまになるの?」


 いつの間にか、兄弟の中では一番背ものび、立派になった王子さまは笑いました。


「さあ、いつだろうね?」

「ふぅん? 王さまは約束したはずなのにね」

「そうだね」


 石の腕は王さまにもたずねてみました。


「あなたはいつ王さまをやめるの?」

「やめるはずがなかろう」

「約束したのに?」

「なんのはなしだ。おまえと約束したことはない」

「王子さまと約束したのに?」


 王さまは怒りだしました。


「約束はたがえていない。わしが死んだら次の王はあやつだ」


 やめるつもりはないようでした。


「ふぅん」

「魔物のくせに口をだしおって。生意気なやつだ」


 王さまは生意気なことをいう石の腕がじゃまだと思いました。

 この時、王国は世界で一番強い国となっていました。

 攻めてくる敵はもういません。

 罪人もほとんどいなくなり、たくさんお金もありました。

 石の腕はもう必要ない、と王さまは思いました。

 ただ石の腕のもつ、きらきらした腕さえあればいい、と思いました。

 王さまは家臣に命じました。


「こやつの腕を切れ。腕さえあれば用は足りる」


 しかし、家臣のだれひとり、動いたものはいませんでした。

 

「どうした? なぜ、命令をきかぬ?」


 王さまが再度命じても、やはりだれも動きませんでした。

 家臣たちは石の腕のおそろしさを知っていました。

 王さまの命令をきいていたのは、さからうと石の腕に宝石にされてしまうからです。

 王国を強くした王さまをうやまってはいましたが、それ以上に石の腕がこわかったのです。

 石の腕は、だれも動かない大広間の、一段上にすわる王さまに近づきました。


「あなたが死ねば、約束は守られる?」

「なんだと……?」


 石の腕はすっと腕をのばし、王さまの喉もとにふれました。

 家臣たちの前で、王さまはきらきらとした宝石になってしまいました。

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