憂鬱な毎日
「勝利〜!練習の時間よ。」
お母さんの声が聞こえる。
「はーい」
と僕は返事をする。
そして小さくため息をつく。
「また、練習かぁ〜。」
ほんっと嫌になる。どこの母親もこうなのだろうか?
うちの母親は、とにかく僕に求めてくるものが多い。
勉強も、運動も、完璧でいてほしいらしい。
ほんっと嫌になる。
なんでこんな母親の元に生まれてしまったんだろう、と我ながら後悔する。
この間まで勉強、勉強と暇さえあれば僕を塾に連れて行き、小学受験までさせたのに、今度はフィギュアスケートだ。
オリンピックでの羽生結弦の演技に惚れ込んだらしい。
「あなたも、あんな風になってね。」
初めてスケート靴をプレゼントされた時、そう言われた。
なんだか、僕はお母さんの操り人形としか思えない。
はぁ〜あ。
僕はもう一度ため息をつく。
そして、僕は渋々立ち上がった。
僕はまた、今日も電車に揺られて練習場のある名古屋までの距離を往復する。
ガタンガタンと揺れる電車の音が心地いい。
だけれど、これから厳しい練習が待っているんだと思うと、憂鬱だ。
こんな日々が毎日続くんだから、僕ってほんと人生ツイてないな。
改めてそう思う。
「次は、名古屋駅、名古屋駅です。」
車掌さんの放送が聞こえてくる。
僕は重い体をゆっくりとそして無理やり押し上げた。
出口の方へあるいていく。
見上げた空は、曇っていた。