ブラックアウト
吹雪の中を何年も歩いていた。
かすかに見える風景に向かって。
誰の足跡もない。
またか……。
あそこへ行っても、
また誰もいないのだろうな。
と慣れた苦笑が漏れた。
かすかに見えていた風景もホワイトアウトで見えなくなった。
今度はたどり着けもしない……か。
慣れた諦めに慣れた苦笑が漏れた。
その場に立ち止まるか……、
元来た足跡をたどって戻るか……、
ふと後ろを振り向こうとした時、
斜め後ろに俺を真っ直ぐに見つめる視線があった。
吹雪の中でもわかる、この先、未来を見たいという瞳。
今の自分にあげられる物はないかとカバンをまさぐったが、
飲み物しかなかった。
今の自分にかけられる言葉はないかと万の言葉から一言を探したが、何も見つからず、
自分で毎日言い聞かせている、後悔、挫折をしても自分で立ち直るしかない、という言葉を出……そうとしたが、
俺がいる。と言っていた。
未来を見ている瞳に、後ろを振り向かせる言葉だな……と自分に呆れた。
吹雪の中、ホワイトアウトした視界で、先を見るのを諦め、後ろを振り向こうとした男が、
俺がいる?
吹雪の中、ホワイトアウトした視界で、未来を見ているのは俺ではなく、この瞳だろ。
だから、今も変わらず吹雪の中、ホワイトアウトした視界の中で、一人でいる。
動けずに、立ち止まり。
音が聞こえなくなるほど、雪に埋もれ。
視界は、白から黒になり。
マフラーの中でぎこちなく動く唇は、
万の言葉の中で一番最初に浮かんだ……、
————横にいてほしい。
自分の心にだけ虚しく響く言葉だった。