表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/35

過去にだって、未来にだって

美夜ちゃん。

俺は美夜ちゃんを好きだと書きましたが、具体的に美夜ちゃんとどうなりたいのかというと、自分でもまったくわかりません。

美夜ちゃんにずっとそのままでいてほしいと言うのは美夜ちゃんを自分の美夜ちゃんとして見ていて、生身の佐藤美夜として見ていないからです。

それは本当に好きと言えるのでしょうか。

違うと思います。

それも違うと思いたいからかもしれません。

兎に角俺は。

 

美夜ちゃん。

ウラジーミル・ナボコフという作家の「ロリータ」という小説の中で、主人公が言っています。

二十五歳の男が十六歳の娘に求愛することは許されても、十二歳の少女にそうすることは許されない文明社会の中でおとなになっていた、と。

これがあるからでしょうか。

俺は今二十九歳です、来年には三十歳になります。

美夜ちゃんには絶対に求婚できません。

人間の身体が食べたものでできている様に、俺は読んできた本でできているのです。

俺は本に影響を受けすぎているのです。

新しい本を読むたびに何か自分でも書きたくなります。

でも美夜ちゃんがいると書けません。

美夜ちゃんのことが大好きなのに。

大好きなはずなのに。

これもそうなり切っているからでしょうか。

本心がどこにあるのかわからないです。

今自分は何の主人公でいるのでしょう。


美夜ちゃんはまだ芥川龍之介を読んでいませんね。

美夜ちゃん。

芥川龍之介は後に自分の奥さんになる女性に信じられない程恥ずかしい手紙を送っている人です。

芥川の小説を読んでから手紙を読むと本当に同一人物が書いたものかと驚くはずです。

俺は小説を先に読んでしまったので、美夜ちゃんもそうして欲しいです。

でも、今この手紙を書いてやっとわかりました。

人間が本当に好きな人に素直に書くとああいう手紙になるのです。

芥川ですが俺は美夜ちゃんに「藪の中」さえ読んでほしくなかったので、今まで読ませませんでした。

同時に今昔物語集の大江山も読んでください。

後で付箋を付けておきます。

読めばこの話をこう書けるのかとこう膨らませられるのかとその才能に驚嘆するばかりです。

芥川も又運慶なのです。

運慶になれたのです。


美夜ちゃん。

此処まで長々と書いてきました。

俺はこれを読み返さず美夜ちゃんに見せるつもりです。

ハンバート・ハンバートは読み返してました。

あそこまで知性の有る文章が書けたら読み返してもいいでしょうが、俺はこの手紙を何の装飾もなく書いたつもりなので、読み返す勇気はありません。

ロリータはすごく面白い小説ですので、美夜ちゃん必ず読んでください。

美夜ちゃんを勝手に連れてってくれるよ、アメリカに。

美夜ちゃん。

小説はどこへだって行ける。

一人で行ける。


美夜ちゃん。

俺は今長生きしたいと思っています。

宇野千代先生のように。

美夜ちゃんとどんな関係にもなれない俺ですが、もしかしたら美夜ちゃんをどこかへ、まだ美夜ちゃんが見たことのない世界へ連れていけるのかもしれません。

それができるのは小説だけです。

空想の世界だけです。

現実にはせいぜいブエノスアイレスに連れていくのが関の山でしょう。

でも小説なら、俺は美夜ちゃんを過去にだって、未来にだって連れていくことができます。

俺はこれから一生懸命小説を書くつもりです。

美夜ちゃんをどこかへ連れていくために。


書きたいものが沢山あります。

面白いかわからないけど。

書いてみたいのです。

何時だって自分が面白いと思うものを、自分のために書いてきました。

それで商業的には成功を収めたのですから幸運だったと思うべきです。

それはわかっているのですが、どうにも上手くいきません。

二葉亭四迷が「平凡」で文学など大したものではないと言ってくれています。

でも俺は二葉亭四迷は「其面影」の方が好きです。

これも読んでほしいです。


美夜ちゃん。

まだ美夜ちゃんは読めていませんが、今ならきっと読んでも面白いと思いますから「嵐が丘」頑張って読んでください。

作者のエミリー・ブロンテという女性は小説はたった一冊しかこの世に残しませんでした。

それが「嵐が丘」です。

読めばわかることですが彼女は「嵐が丘」を書くためだけに生まれてきたのだと思います。

魂を燃焼しつくし、持てる力の全てを出し切って書きました。

その人生に続きなどいらなかったのです。

俺は凡人です。

でも長く生きたら、たくさん書いたら、いつか俺にしか書けない一冊を書くことができるのかもしれない。

今はそう思えています。


美夜ちゃん。

書きたいものが沢山あります。

まず全身を機械化した男。

彼は地球外生命体と戦うエリートで、階級としては貴族のような扱いを受けています。

そんな彼が恋をしたのは定食屋でアルバイトする女子大生。

彼女は機械の身体ではありません。

この世界では地球外生命体と戦う選ばれたエリート達は体を機械化させほぼ死ぬことのない体となっていて、お金のない選ばれなかった人間だけが、生身の体のままなのです。

生身の身体では機械化された人間と結ばれることができません。

特殊な金属でできた体なので生身の人間では金属アレルギーによるショック死をしてしまうからです。

これが二人の間に生じた恋の障壁です。

男は地球外生命体と戦っているので、アクションもあり、ちゃんと動きのある作品にできると思っています。

 

もう一本は、女性主人公で、目が覚めると三年の時間が立っていて、結婚していたと言う話です。

彼女は三年分の記憶を失っています。

記憶を取り戻そうと彼女からしたら初対面の夫と再び愛を育んでいきます。

実は離婚寸前だった二人です。

夫サイドと交互の視点で書いていきたいと思っています。


もう一本。

全ての身体が部品化して、メモリー化された世界で、ある地球を侵略するため潜入した宇宙人が身体を乗っ取り殺した男の瞳のメモリーを入れます。

その男の記憶にある片思いしていた女性が働くケーキ屋に通ううちに彼女と仲良くなり、自分の本来の使命である潜入者の使命を忘れ、彼女と生きようとしますが、それが自分が殺した男のメモリーがなせるのか、自分の本当の気持ちなのかわからないと言う話です。


もう一本。

決して好きだと言わない男の話を。

彼は人類の敵と戦っています。

彼は巨大ロボットの設計者であり、そのロボットは彼しか動かせない。

当然彼は国の宝といった扱いを受けています。

そんな彼が喫茶店のウエイトレスに恋をします。

ですが彼は恋に気づけません。

彼のこれまでの人生になかったものだからです。

だから彼は彼女に好きと言わず、彼女に経済援助を言い出します。

当然彼女は断ります。

「何で普通に好きっていてくれないんですか」と。

でも言えないんです。

だって好きだなんて思ったことがなかったから。

だから「君のことは好きじゃない。でも君の生活の面倒はみたい。君を養いたい。君の着ているものが全部俺の金で買ったものであってほしいし、三食全て俺が出した金で食べてほしい、君がどこにいるか常に把握していたいし、俺の用意した完璧なセキュリティのマンションに住んでほしいし、もちろんバイトもやめてほしいし、なんならご家族も養いたい」

こんなこと言い出します。

勿論イケメンです。

イケメンじゃなければお話になりません。



































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ