封筒
お盆が終わった次の週、三泊四日で岡山に行った。
楽しかったけれど、彦根に近づくにつれてやっと帰って来たなと思い嬉しかった。
登りのエスカレーターしかないため、両手にお土産を抱え階段を降りた。
「ただいまー」
「おかえりー」
「どうしたの?これ」
台所のテーブルにたねやのバームクーヘンが置いてあった。
出かける前にはなかった。
「佐藤さんよ」
「佐藤さん?」
「うん、昨日お婆ちゃんとこ行ったらね、お世話になりましたって」
「え?」
「東京帰るんですって」
「え?えっと、いつ?」
「今日の朝って言ってたからもう東京じゃない」
「えっと、何で?」
「何でって、仕事でって言ってたわよ、でも又彦根に遊びに来るって」
「帰っちゃったの?」
「うん、寂しいわね。貰ってばっかだったもんね、最後まで」
「うん」
昨日のラインでも何も言ってなかった。
佐藤君は知ってるのかな?
「後、部屋に置いといたわよ」
「何を?」
「佐藤さんが美夜にって、本くれたのよ、机の上に置いといたから」
「本?」
「うん、もう一日待ってくれたら大手饅頭渡せたのにね」
「うん」
「お婆ちゃんとこ、もう行けるわよ、今日おいなりさんだから」
「今日、何かあるの?」
「ないわよ、なくてもおいなりさん食べたくない?」
「食べたい」
机に置かれた紙袋に入った文庫本を見て佐藤さんはもう戻ってこないと思った。
祖母の家に夕飯とお土産を届けるため、家を出た。
祖母の家につくと、いつもは何もはみ出てなんかいない祖母の家のポストに封筒が挟まっていて、それが佐藤さんがくれたものだと美夜にはすぐにわかった。




