3.大神殿の思惑
勇者は魔法の適正審査を受けて、全ての魔法に適正があったため剣術、治癒魔法、補助魔法、攻撃魔法と膨大な量の鍛練をこなし続けていた。
危惧していたようなことにはならず、大神殿の者がちゃんと勇者を育ててくれていることには安心した。
……勇者は貴族じゃないはずなのだけど、どうして嫁選びとかしてるのかしら?
まぁ、もうあの子も十五になるのだからそういうのも必要なのかしら。
とりあえず、大神殿がちゃんと育てているのなら私はもう少し力を貯めていよう。
少し眠ったら、勇者も一人前になっていることでしょう。
*****
「女神の神託は、次に平原の魔物の掃討を」
「女神の神託は……」
狸のような男──大神官から幾度も女神様の神託と言われ、神殿騎士を引き連れて各地で魔物を倒したりしてきた。
魔物を倒すことは、周辺の村の安全に繋がる。だから魔物を討伐しにいく。
だけど、魔法や剣術の腕は適正こそあったものの、教師に怒られるのだからきっと未熟なのだろう。神殿騎士も前線に出してはくれなかった。それに、初期に比べると周りに神殿騎士が多くなった。
どうして俺が勇者なんだ。
何故か勇者には必要ないであろう教養の授業まで受けて、朝から晩までやることだらけ。
大神殿の外には神託があった時以外出ることも叶わず、傍には必ず神殿騎士か高位神官がいる。
まるで監禁でもされているようだ。
今日もこうして、気休め程度にしかならない休憩時間でも傍には高位神官がいる。
名前は……アリサとかいったか。紅の髪に金の瞳の女だ。
気がつかないフリをしているが、ちらちらとさっきから視線を感じる。うんざりする。
広い中庭から見える青い空を見上げて、木陰に座ることにする。
ここはお気に入りの位置で、雨の日以外は休憩時間は殆どここにいる。
ここだけが、気を抜いていられる──
「次はどこに行かせるんだ?」
「濃霧の森に……」
「勇者も可哀想だよな、神託なんて……ない…に」
「!?」
思わず耳を疑った。
身を屈めて、植木の陰に隠れるようにする。
どういうことだ。神託なんてあれから、ない?
混乱している俺の隣に、アリサが近寄ってきた。
アリサさん、何をする気ですか?(ブルブル