2.不安
「俺が勇者……」
「はい。貴方は女神に選ばれし勇者なのです。魔王を討伐し世界の危機を脱するため、まずは我が大神殿に来ていただき──」
あれから私は、力の温存をするために勇者の近くにだけ視点を集中させていた。
神託を授けてから数日と経たないうちに、神官達は勇者と接触している。
私の勇者はとっても戸惑っている。
勇者の家族は、戸惑っているふりをしているけど……神官長や大神官と同じくらい心が汚れてる。
この人間の中でよくまともに育ってくれたと思うくらいに、勇者の心だけが曇りなく輝いて見える。
その日、大神官は裏で金を積んで勇者を引き取った。
勇者は不幸にもその様子を目撃してしまった。怒りや悲しみが、渦巻いている。
無理もない、まだ十四の人間の子なのだ。
それなのに私は、勇者の力を必要としている。
ごめんなさい。それでも、どうしても、勇者が必要なの。
*****
勇者は魔王の居城から比較的離れた国の大神殿にて、修練を積むこととなった。
ある程度まで成長したら、討伐の旅に出ることになっている。
しかし欲にまみれた人間に囲まれて、本当に魔王を倒せるところまで成長出来るのだろうか。
女神セレスティールの不安も知らず、人間達は自分の娘を勇者に嫁入りさせることしか頭になかった……
ハッピーエンドかバッドエンドかは決めてません。
登場人物の気の向くままです。
今後ともよろしくお願いします