1・気が付いたら十五年経ってました
女神視点と客観視点をいったりきたりします。
女神から魔王誕生の神託が降りた。
しかし、それからというもの勇者が誕生したとの神託はない。
増えていく魔物は人里や農村の近くに出現し、徐々に被害は大きくなっていく。
けれど各国の大神殿は動かなかった。
強い加護の力に頼りきりで、加護に護られている大神殿から出ようとしない。
怪我をしている民が居るにも関わらず、治癒魔法をかけにも行かない。
そもそも女神の神託を聞くことを出来ない者が神官長だという大神殿も幾つもある。
そんな腐った人間の世界は、魔王誕生の神託から十五年してやっと、次の神託が授けられたのだった。
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まさか加護を強くしただけでこんなに長く眠るとは思わなかった。
でも、おかげで成長を待たずに済んだ。黒髪に青目の、綺麗な顔立ちの私の勇者。
申し訳ないけれど、貴方の人生を少しだけ借りたい。
魔王はあれから力をつけているし、今の勇者では力不足だろう。
大神殿に神託を授けて、少し育ててもらわなければ。
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各国の大神殿に、十五年ぶりに神託が降りた。
今年十五になる勇者が、とある国の村にいる。
その神託を受けて、やっと各国の大神殿は動きを見せた。
それは魔物の討伐でも、傷ついた兵士や村人の治癒にでもなく。
勇者を引き入れて更に女神から加護を授かろうという、邪な心を抱いた者が勇者を手に入れんとする動きだった。
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なにこれ。
私が愛した人間達の子孫は、心が汚れていた。
いや、まだわからない。きっとちゃんと育ててくれるはず。
幸いにも、大神殿や教会の人にはちゃんと祈りを捧げてくれる子たちもいる。
もう少し育つまで、まだ勇者には声はかけないでおこう。今声をかけても、混乱するだけだろうから。