プロローグ
気分転換です。完結するかもわかりませんが、のんびり書いていきます。
よろしくお願いします
魔王が誕生してしまった。
この世界に残された猶予はあと僅か。
勇者はまだいない。
私の声が届く者に危機を伝えなければならない。
どうか、どうか早く生まれて。私の勇者。
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この世界では、どの国でも例外なく女神セレスティールを主神として信仰している。
それ以外の神がいないわけではない。神託が降りるのが一番多く、また加護や恩恵が一番強いのが女神セレスティールなため必然的に主神とされている。
先日、その女神セレスティールから各国の大神殿に神託が降りた。
魔王が誕生したこと、近く勇者が生まれるだろうということ。
女神は危険を伝え、それに人間が備えられるようにと加護の力を強くした。
しかし女神は知らなかった。
加護があることに慣れ、また長きに渡る平穏に慣れた人間達の国は、既に熟しきり腐った果実のようになっていたことを。
神託が降りてから約半年、とある村で。
勇者が産声をあげた──
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──やっと、やっと産まれた。
あの子が成長したら神託を授けて、魔王討伐に出てもらわなければ。
ああ、どうか早く。手遅れになる前に。