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開演(1)

誤字脱字の指摘、感想等頂けると幸いです。

 ーーー轟音が唸り、炎が意思を持ったかのように躍り狂う。




「これで終わりだ賢者よ・・・」




 蛇の如くうねる炎が一人の男に襲いかかる。炎蛇がまさに頭から男を飲み込もうとした刹那、




「アイスウォール!」




 男の右腕が半円の軌跡を描くに付随して、氷の壁が突如として現れる。男の前にそそり立つ氷壁と迫り来る炎のせめぎ合いによって、視界がホワイトアウトせんばかりの水蒸気が立ち昇る。




「そんなものか!」




 立ち込める霧を腕の一振りで切り払った男は、ローブの男を一喝する。




「小賢しい・・・」




 ローブの男は、天に双腕をかかげる。するとどこからともなく、巨大な岩石が降り注ぐ。賢者と呼ばれた男は身じろぎもせずその岩の下敷きになった。




「あっけない・・・」




 ローブの男は誰に言うでもなく呟いた。




「どこを見ている?」




 その呟きに応じるように、賢者がローブの男の背後に現れる。その脚は淡い緑の光に包まれ、限界まで絞りきってから放たれた矢の如くローブの男へと迫る。




「猪口才な・・・っ!」




 光の矢と化した賢者の捨て身に対して辛うじて身を翻したローブの男だったが、その衝撃に目元深くまで被っていたローブがまくれ、その素顔を日の元に曝け出した。





そこには青い肌に二本の角を生やした、人間とは似て非なるものがいた。




「魔王とはその程度か!」




 再び賢者が一喝すると、魔王と呼ばれた男はローブを脱ぎ去り、破顔した。




「フハハハハ!逃げ回る事に魔力を使う小賢しい人間めが大言を吐きよる!」




 そしてまた賢者を睨みつけ、静かに語る。




「そんな小細工など圧倒的な力でねじ伏せてくれる・・・」




 魔王の右手へと、可視化できるほどに濃縮された魔力が集約する。それはほどなく巨大な一つの球となった。




「おもしろい。そろそろ力比べと興じようじゃないか。」




 それを見た賢者も同じく右手に魔力の巨大な球を携える。




「砕け散れ虫ケラ!」


「吹き飛べ巨悪!」




 互いの怒号を先鋒に、両者大きく振りかぶる。そしてまさに魔力と魔力がぶつかり合うその刹那ーー



 





アナウンスが流れる。




「一体両者の対決はどうなってしまうのか!次回、賢者イグニスの冒険最終公演お楽しみに!なお、お帰りの際は混雑を避けるため、後ろの席のお客様より順次ご退席ください。」



 はち切れんばかりの拍手と共に、幕が下りた。

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