水
駅前の小さなレンタルショップのレジ横。
片隅に置かれたセール品のイヤホンを買う。
耳に不似合いな感触を不快に思いつつも歩き出す。
途中のコンビニではなんでもない水を買う。
どこで採取したかは問題ない。
ただ、私が生きていた形跡を残そそうとするだけ。
足跡は残ることがない。
それでも耳から身体に流れ込むその音楽は私を前進させる。
ただ、ひたすら足を交互に目の前に差し出すその動作は、必死に生きようとしていた。
それだけでいいのだ。
今の私には難しいことを考える余裕などない。
ただ、前に進む動力がこの身体のどこかにあればいい。
それが誰から注目されることのない、どこかの水が源であっても。