表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
FAIRY WARS ~最弱は最強を打倒する~  作者: Sissy
第一章 最弱の委員長
20/35

委員会の争い

お気に入り登録、ありがとうございます!

 生徒会室にはいつも会長はいない。そのため、資料確認等は全て副会長であるオリヴィエが行っている。会長の仕事と副会長の仕事を1人で行う彼にとっては大きな負担なのだろうが、会長は一向に仕事に精を出す様子はない。

 メルクリウスはそんなことを思いながら執務机に、確認してもらうために作成した資料を置き、生徒会室を後にする。


「やあ、メルクリウス」

 まるで思考を読んでいるかのように彼はいた。

「これは……生徒会長様」

 自分が会長の仕事のやらなさを思った途端に現れるのだ、彼は。

 若干ぞっとしつつも、冷静さを保とうとする。何が彼の機嫌を損ねるか分からないからだ。


「あのねえ、聞いちゃったんだけど。図書委員って実技大会に出るんでしょ?」

 近々開催される予定の実技大会へエントリーする旨の書類を図書委員から受け取っているのを、メルクリウスはヨモギから聞いていた。

「はい、そのようでございます」

「まあボクが仕組んだから当たり前なんだけど、キミって校外学習の時、図書委員の男の子にキミの操る魔物が倒されちゃったんだって?」

 会長はそう言いながら自身よりも身長の高いメルクリウスを睨め上げてくる。その威圧に思わず萎縮してしまう。

「申し訳ございません……」

 謝罪するメルクリウスの頭をばしばしと叩き、会長は楽しそうに言い加える。

「違う、違う、ボクはキミの謝罪を聞きに来たわけじゃない」

「と、言いますと?」

「ほら、今度は邪魔されないじゃないか。一石二鳥となる結果を待っているよ」

 意味深にそう呟き、会長は手を振りながら去って行った。


 メルクリウスは会長の後ろ姿をじっと見ていたが、深々と一礼をする。

「仰せのままに、ラジエル殿下」


 *


 学院に来て初めての実技大会の日、当日。

 実技大会は、筆記試験の結果が近い者同士で当たるようにトーナメントを組まれているらしい。しかし、今回はコーネリアス達との約束がある。生徒会が裏で調整をしていた結果、キルケとアストレアはコーネリアス達革新派とあたることになっていた。


 実技大会の会場は、学院内にある闘技場コロセアム。普段は生徒達の自主練習場で、剣の稽古をしたり、馬術の練習などに使用されている。闘技場は武道委員会の管理下にあるために、使用許可は彼らに取らなければならない。そのため、闘技場で開催される実技大会の運営、設置などは武道委員の仕事となっている。

 闘技場の出場者控え席の一番前を陣取ったアストレアは、キルケの出番を今か今かと待っていた。手にはじっとりと汗がかいていた。

 既に剣の試合が数組終了していてキルケの試合で剣試合は最後となる。その後にアストレアの出番になるのだが、もう少し先だ。


 緊張した面持ちで闘技場内を睨んでいると、

「おお! 麗しいオレ様の姫君! 姫君もここでキルケ坊の試合を見るんだな!」

 慣れた感触と聞き慣れた声でロランだと判別する。彼は武道委員会の副委員長なので、当日の運営等で忙しいはずなのだが、どうせ抜け出してでも来たのだろう。

 そのうち、フェデルタかアレスあたりに見つかって連れ戻されるに違いない。

「ロランさん、フェデルタさん達のところに戻らなくてよろしいのですか?」

「いーの、いーの。大会の仕事なんてそのへんの奴にさせとくの。オレ様にとって、そんな委員会の仕事よりも姫君とこうしていられる方がぁっぶ」

 ふと背後に現れたフェデルタが剣の鞘でロランの後頭部を殴打する。殴られたロランは、短い悲鳴をあげてそのまま白目をむいてずるずると地面へ崩れ落ちていった。


「すまない、うちの馬鹿が……」

「い、いえ」

 そんな中、倒れて動かないロランを踏みつけて爽やかな笑顔と共にアレスが登場する。

「やあ、図書委員長。すぐキルケの試合が始まるぞ」


 アレスの言う通り、闘技場内では次の試合についての声が響き渡る。

『生徒の皆様、お待たせいたしました! 実技大会剣部門の最終試合を始めたいと思います』

 魔法石を使って声を拡張しながら説明するのは、生徒会側の委員会である放送委員会だ。表向きは独立した委員会とされているが、実質生徒会にその権力を握られ牛耳られているので、傘下に入っている状態だと言った方が正しい。


『実技大会剣部門最終試合を飾るのは、図書副委員長キルケ・フォン・ジルバーンと、武道委員会所属コーネリアス・ド・トレモイユ!』

 放送委員の呼びかけと同時に防具に身を包んだ2人が、試合場へと足を踏み入れる。出場者控え席以外でも、観覧席にいるギャラリー達はみな“弱小委員会なんてぶっ潰せ” と、コーネリアスを支持する声がほとんどだ。

 おそらく、そうした生徒はどちらかが勝つか賭けた者なのだろう。もちろん、実技大会の賭博は校則違反ではある。


「キルケッ!! 頑張ってー!」

 そんな観客たちに負けないように、これでもかというほど声を張り上げてキルケを応援する。届いているかは分からないが、そうであって欲しいと切に願う。


『それでは……はじめっ』

 2人が入場し、準備が整ったところで銅鑼が鳴る。音が聞こえるとより一層、観客たちの歓声と熱気が強くなる。


(キルケ……頑張って!)

 必死に祈りながらキルケを見つめた。じっとお互いを睨み合い、様子を窺っていたがしびれを切らしたのかコーネリアスがキルケに向かって斬りかかっていく。練習用なので実際には斬れないとはいえ、体に当たれば鈍器で殴られたくらいの衝撃はあるだろう。下手をすれば骨にひびが入るかもしれない。

 キルケとの間を走って縮めるコーネリアスの動きをキルケはじっと見極め、彼がそこから繰り出す剣劇を舞踏するようにかわしていく。時折、隙を見て彼に突撃を仕掛ける。剣の知識が皆無な素人のアストレアでさえも、キルケの太刀筋は美しいと直感した。

 隣でいつの間にか復活していたロランが息を飲む。


「あの剣術は……」

 少し離れたところでアレスが何か呟いたように聞こえたが、アストレアの意識はキルケに注がれていた。コーネリアスはキルケに比べて大振りな剣を持っており大きさの分、攻撃力も高いのだろうが攻撃を繰り出すまでのタイミングにロスがある。コーネリアスに比べて剣が細く長いキルケは、有利に事を運んでいく。


 舞い上がる蝶のように、華麗な足踏みでキルケはコーネリアスに剣撃を繰り返す。キルケの攻撃を防御するのに必死なコーネリアスはなかなか、攻撃に転じることが出来ないでいた。

「おい、そんな貧弱な奴なんかさっさと倒しちまえ!」

 観客はコーネリアスの防御の戦法に飽きたのか、キルケを倒せと野次を飛ばす。アストレアは彼らに何かされたわけでもないのに、妙にむかつきが抑えられなかった。

「キルケ!」

応援する気持ちを祈るように名前に込めて叫んだ。キルケはぐっと地面を踏みしめる。隙あり、とコーネリアスが上から下へ大剣を振り下ろす。


 一瞬、地面を蹴ったかと思うと先程立っていた場所に振り下ろされたコーネリアスの剣を足場に、彼の首へと剣先を突きつける。


 コロセアム中が静寂に包まれたかと思うと、次の瞬間には耳が千切れそうになるくらいの歓声でいっぱいだった。誰もが最弱委員会の勝利に驚いていた。



「キルケ、お疲れ様! けがはない?」

 キルケの試合が終わった途端、慌てて控え席から控室へと向かったアストレアは、息を切らしながらキルケを出迎えた。いつの間にか後ろにロランがついてきていたが、振り返ることなくキルケを労う。

「アストレア嬢のおかげだよ、ちゃんと声届いていたよ」

 ふっと微笑むキルケに涙が出そうなくらい、言葉では言い表せない色々な感情が湧き出る。

「姫君の騎士さんってばいいなぁ、オレ様も姫君に心配されたい」

「ふふっ、図書委員に入ってはどうですか、ロラン先輩」

「学者になる気はないのでね。軍人のパイプがある今の委員会がオレ様に合っている」

 何故か、ロランとキルケの間に流れるピリピリとした緊張感のある空気。


「あ、次はアストレア嬢の番だね。僕は観覧席で応援しているから、このまま控室へ行くと良いよ」

 キルケがそう言い、アストレアの背中を優しく押す。耳を澄ませば次の対戦相手の名前を読み上げているところだった。


「ありがとう、キルケ。行ってくるわ」

「行ってらっしゃい、気をつけて」

「頑張れ~、姫君~!!」


 優しく微笑むキルケと、手がちぎれそうなくらい振るロランに挨拶をしてアストレアは控室へと向かった。次は自分の番だ。気合いを入れようと頬を叩く。

「ひぅっ、痛っ……」

 思ったより強く叩きすぎて頬が赤くなったが、気合いが入った気がした。


 * *


「ところで、ちらりと見えたんですがロラン先輩。僕の試合が終わった時、一目散にアストレア嬢の後ろをついていきましたよね?」

「おお、騎士くんは目が良いなぁ。姫君は別にオマエのじゃないんだろ? だったらオレ様が何をしようと勝手だ」

「そういうわけにもいかないんですよね。僕の委員長にちょっかいをかけられると不愉快です」

「じゃあ、オレ様と剣を交えて勝負するか?」

 ロランの意地の悪い笑みを見て、キルケは嘆息する。

「どうせ、それが言いたくて来たのでしょう」

「それもあるけど、姫君の香りを辿っていたらここに来ちまった」

「すみません、先輩ですが気持ち悪いです」

「オマエなぁ、もうちょっとオレ様に優しくしろよ、オレ様ってば武道委員会でも扱いは酷いし、唯一の居場所と言ったら姫君の側しかないんだぜ~?」

「だーかーら、アストレア嬢にちょっかいを出すなって何度も言っているでしょうが」

「オマエのじゃないんだろ、だったらオレ様だってチャンスくらい与えろよな!」

「そこ! 試合が終わったなら早く控室から出なさい!」

 武道委員の1人に注意され、キルケとロランは睨み合いながら部屋を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ