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FAIRY WARS ~最弱は最強を打倒する~  作者: Sissy
第一章 最弱の委員長
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そして動き出す

 今日も青空教室にキルケを誘おうと図書塔へ向かったアストレアの耳に入ってきたのは、生徒会の書記ヨモギとキルケが話し合っている声だった。

 何を話しているのかおそるおそる図書塔の中に踏み入れると、珍しくキルケの怒声が聞こえてくる。

(キルケがあんなに声を荒げるなんて……何かあったのかしら)

 不穏な空気を察し、アストレアはキルケ達がいる最上層へと走って向かった。


「どういうことですか!? 僕等はそんなことしていません!!」

 最上層ではキルケとヨモギが対峙していたところだった。

 怒りで顔を赤く染めるキルケに対し、至って冷静な表情のヨモギ。視線をこちらに向けたヨモギにつられるようにして、キルケはようやく彼女が来たことに気付いた。


「あっ……アストレア嬢……」

 彼女の姿を見るなり、苦しそうな表情を浮かべるキルケに不安を掻き立てられる。

「ちょうど良かった、委員長でもある貴女にも伝えておこう」

 ヨモギはキルケに見せていた書面を見せてくる。そこには、『図書委員の校外活動を禁止する』との文章が書かれていた。

「え、校外活動を禁止するって一体どういうことですか?」

 取り乱しそうになるアストレアをじっと見つめて、ヨモギは冷静に答えた。

「貧民街で勉強会を開いている生徒が先日、剣を振り回して子供たちを脅していた、との苦情が入ってきた。生徒会としても黙って見過ごすわけにはいかない、と会長のお達しだ」

「わたし達は何もしていませんよ!?」

「証拠もないのに信用はできない。当分、図書委員には校外活動の禁止を言い渡す」

 愕然とするアストレア達に視線を投げると、ヨモギは静かに図書塔から出て行った。


 確かにヨモギの言い分は正しい。図書委員がどれだけ身の潔白を証明しようとしても、それを裏付ける確実なものがないと信じてもらえるはずもない。

 アストレアはただただ、手渡された校外活動禁止の書面を握りしめ佇んだ。


 ぐっと歯を噛みしめる。握り拳を作った手は震え、息も浅くなっていく。


(わたし達はただ子供たちに教えていただけなのに……)

 理由もなく、突然『苦情が入った』と言われ、許可を取り消されたとは。突然のことで考えが追いつかない。一体、これからどうすればいいのか、考えていると今まで黙っていたキルケが口を開いた。

「アストレア嬢、一度青空教室へ行こう」

 既に頭を冷やしたキルケがアストレアの肩に手を置き、気分を落ち着かせようとする。そのぬくもりだけを感じているうちに、いつもの調子が戻ってきた。


 キルケの後を追って青空教室を行っていた場所に向かうと、そこには目に涙を浮かべたバリンがいた。彼の周りにはボロボロになった黒板の残骸が散らばっていた。

「キルケ兄ちゃん、アストレア姉ちゃん……」

 思わずバリンを抱きしめると、今まで堪えていたのだろう、彼は声を上げて泣いた。


 キルケは沈痛な面持ちでバリンとアストレアの方を見ると、床に散らばった黒板の残骸を手に取る。彼が作った小さな黒板。青空教室の生徒はバリンから数人に増え、この黒板の大きさでは足りないくらいの賑わいを見せていた。誰かの嫌がらせで楽しかった思い出さえも壊されてしまったようで、アストレアの心には虚しさが巣食う。


 ふと、図書塔のポストに入っていた手紙を思い出す。

『早く降伏しなければお前らの大事な物を壊す』

 おそらくあの手紙が言おうとしていた結果なのだろう。生徒会の傘下に入らなかったからと言って、こうまでするのか。


「ねぇ、バリン……何があったの?」

「姉ちゃん達と同じ服を着た人たちがいきなりやって来て、オレ達の目の前でめちゃくちゃにしてきたんだ……っ」

 震える小さな体をぎゅっと抱きしめる。バリンはアストレアにしがみつきながら涙を流す。


「アストレア嬢、これ見て」

 黙って地面を睨んでいたキルケが手に持っている物を見せる。それは、金色の糸で刺繍を施された獅子の紋章だった。

 あの時、キルケと一緒に見ていた本に描かれていた紋章と同じものだった。

 確か……

「武道委員会の紋章?」

 一体、どういうことなのだろうか。紋章がここに落ちているという事は、青空教室を壊した犯人の物の可能性が非常に高い。

 つまり、青空教室を壊したのは生徒会ではなく、武道委員会なのだろうか。


 こうなったらもう、武道委員会の委員長に直接会って聞くしかない。

 もし、生徒会の仕業ではなく武道委員会のせいならば、図書委員を傘下に入れたがっている生徒会が黙っているはずがない。そして逆に生徒会の仕業なら、勝手に貶められそうになった武道委員会と手を組める機会かもしれない。アストレアはそう思った。


 青空教室を壊されたのは非常に腹立たしいことではあるが、これで生徒会の次に権力の強い武道委員会と渡り合える材料が揃った。

 アストレアは強い眼差しをバリンに向けると、そっと頭を撫でて言う。


「バリン、しばらく青空教室はお休みね」

「……もう2度と勉強できなくなる?」

 泣きはらしたバリンに、キルケが優しく頭を撫でる。

「ううん、そんなことないよ。ちょっとだけお休みするだけだよ」

「ええ、それまでちゃんと復習しておいてね」


 バリンを見送ると、2人は学院へと戻った。行き先はもちろん、武道委員会の委員長室だ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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