2、帰還?
「イテテ、ここは……?」
次郎が覚醒すると、見慣れない暗い部屋で倒れていた。
――――いや、違う。見慣れない部屋ではない。
徐々にまどろんでいた頭がはっきりとし、思い出す。
この部屋は見慣れていた部屋。
3年前まで自分が使っていた部屋。
地球の自分の家の部屋。
「……ってことは、俺は帰ってきたのか」
異世界生活に慣れていたせいで、逆にこの部屋に違和感を感じてしまっていた。
まあ、3年も経っているわけだしな。
しかし、あまりに現実身がない。
まさか今見ている光景は自分の夢ではないのかと不安になり、頬をつねる。
「うん、しっかり痛みを感じる。……しかし、なんか、こう、素っ気が無さすぎる!」
帰ったと思ったら別の世界だったとか、帰ったけどはるか未来だったとか小説などではそんな展開があるのだが、自分にはそういった展開は無いようだ。
「もしかして、俺の異世界での経験が夢だったのか……」
流石にそれは無いだろうと思いつつも、異世界の証拠を探す。
キョロキョロと視線を動かすと、自分のベットの側に魔方陣で飛ばされるときに背負っていたバッグがすぐ見つかり、次郎はホッと一息吐く。
そして、バックを手に取り――――
モゾモゾッ
突如ベットの布団が動き、次郎は警戒体制をとる。
3年間の旅は伊達ではなく、洗練された動きをする次郎。
布団を剥ぎ取ると同時に即座に部屋の壁まで跳び、スイッチをつけ敵の姿を確認する。
「はあッ!?」
幾多の修羅場を潜り抜け、身体・精神共に鍛えられた元勇者、次郎。
しかし、目の前に広がる光景に驚かざるにはいられない。
不審者などでは無く、次郎が良く知っている人物がそこにいた。
どうやら気絶しているようだ。
そこにいたのは、
「リリーにセーラ、エレナまで!!なんでお前らが?!」
異世界で別れを告げた3人の仲間達であった。
次郎家の一階。
リビングで男1人と女4人が机を囲んで座っていた。
「――――つまりは、俺の送還魔法に巻き込まれたと」
「……それが一番妥当な説」
「まさか、そんな事が起きるとは」
「でも、実際に起きちゃった訳なのよね」
3人が意識を取り戻し混乱が収まった後、緊急会議を開いた。
3人の話だと俺が光に包まれたと思うと、光は収まるどころか増し、自分達も光に包まれたとのこと。
次郎はこの状況に顔を手で覆い、嘆く。
「別れ告げたのに、すぐに再会とかスゲー恥ずかしい!!」
「嘆く理由は、そこでは無いだろ!?」
次郎の落ち込んでいる理由にリリアーネがツッコミを入れる。
暫し落ち込んでいた次郎であったが、ふとある案を思い付く。
「あ!そうだ、エレナ!神様に問い合わせられねえか」
「なるほど!その手があった」
この状況を作り出した原因に聞くのが手っ取り早く、なにより確実だ。
エレナは次郎の提案をすぐに実行に移す。
「異世界で出来るか分からないけど、やってみるわ」
エレナは瞑目し、胸の前で手を組む。
リビングが沈黙で包まれ、時計の針の音が異様に大きく感じる。
だが、それは突然エレナが大声をあげたことで破られた。
「ええぇッ!?」
「ど、どうしたのだエレナ」
リリアーナが声をかけるが、エレナは呆然とし答えない。
暫くして立ち直ったのかエレナは恐る恐る伝えた。
「え、ええと神様とは繋がったんだけど――――」
『ゴメーン☆設定ミスちゃった。あ、それと3人は元の世界に帰れないから♪』
「――――とのことよ」
「あの神、いつかコロス」
次郎に殺意の波動が目覚めそうになった。