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ビタースウィート・サンバ

気づいたら乙女ゲームのライバルキャラになっていたので彼氏と別れに行きます

作者: iyo


設定甘いところあると思いますが、広い心で読んでいただければと思います。






ある日目が覚めたら、自分の部屋ではない場所にいて、キョロキョロしながら鏡で自分の姿を見て驚愕した。


さらさらのセミロングの黒髪。

茶褐色のつり気味の目。

キメの細かい白い肌。

細いけど出るとこは出てる女性的な体。

身長は平均より少し高め。


見紛う事なき美少女がいた。

もちろん私の馴染んだ姿ではなくて…でもよく知っている姿で…

まさかそんなことがあるはずもないと、頬をつねってみるけど痛かった。

鏡の中の美少女も痛そうに顔をゆがめる。

どうやら現実らしい。

いや、かなりリアルな夢なのかも…

それでも今の私の姿はこれなのだから、今を受け入れるしかないのだけど。


最近はまっていたゲームがあった。

『DOLCE〜あなたとの甘い学園生活〜』という乙女ゲームだ。

内容は他の乙女ゲームとそう変わらないのだけど、まず、絵師さんの描くスチルのレベルが高い。

あと、攻略対象者の台詞がフルボイスな上に、豪華声優を多用していた。

攻略対象者の数も多く、一人につきいくつものエンドがあって、全クリしなきゃ気が済まない私としては少しめんどくさいと思ったのを覚えている。

話題が話題を呼び、興行収入15億を超えた開発業者は調子に乗ってグッズを作り、ドラマCDを作り、果てはsecondまで出した。

今の私の姿は、そのfirstの方の攻略対象 藤ノ森朱弥において登場するライバルキャラである張間千尋その人だった。


藤ノ森と千尋は幼稚園からの幼馴染みで、千尋は藤ノ森に恋愛感情を持っていた。

対して藤ノ森は千尋に家族に対するような好意を持ってはいたが、恋愛感情はない。

だが、成長するに連れて周りの女子から騒がれるようになり、煩わしさを感じていた藤ノ森は苦肉の策で千尋に彼女役を頼む。

もちろん千尋は快諾し、あわよくば自分に恋愛感情を持って欲しいなーとか思っていたわけだ。

これが藤ノ森ルートにおける前設だ。

言ってはおくが、私は藤ノ森に興味はない。


ゲームの千尋という少女は自尊心が強い甘ったれという絵に書いたような我が儘娘だ。

警戒心が強く、親しい人としか関わろうとしない。

そんな彼女を身近にいる人は自分にだけ懐く可愛い猫のように思い、邪険にされるものは高慢で人付き合いができない高飛車女だと思う。

もちろん前者としか関わらない千尋の世界は狭くて、藤ノ森が大好きであるが故に、彼に近づくありとあらゆるものを排除してきた。

そんな彼女を、比較的前者よりの思考である藤ノ森は許してきた。

だから千尋は調子に乗ったのだ。

自分は彼の特別なのだと。

実際、特別ではあると思う。

他の女の子とは違う特別扱い。

だがそれは、幼馴染みであるが故の特権で、本当の意味での特別ではなかった。

その証拠にヒロインが転入してきて、藤ノ森は彼女に夢中になる。

甘えて我が儘ばかりで自分を縛る千尋と、優しくて気遣いができて、ちょっぴり天然なヒロインではどちらに惹かれるかなんて明白だ。

藤ノ森はヒロインが好きになったから、千尋と偽装恋人をやめることを伝え、千尋は納得できず、ヒロインが憎くて嫉妬でどうしようもなくなり、いつものようにヒロインを排除しようとして藤ノ森の怒りを買うのだ。

でも、千尋の末路はそれほどひどいわけじゃない。

結局千尋に甘い藤ノ森はヒロインを傷つけないことを約束に千尋を許してくれるし、ヒロインも性格がいいから報復なんてものはない。

ただ少し、学校での立場が悪くなるだけで…


だから私は千尋になったことに少し安堵していたのだ。

要は、さっさと藤ノ森から離れてしまえばいい。

死亡フラグなんて全くないのだ。

なんにも気に止めず、普通の少女になってしまえばいい。

でも、自分から離れるなんて元の千尋じゃありえない。

ならば、さっさと藤ノ森にフラれるよう日策すればいい。

千尋への好感度が下がれば、藤ノ森がヒロインに落ちるのはより早くなるだろう。

そうすれば千尋のお役は御免になる。


ただ問題があるとすれば…今はどのぐらいの時期なのか、だ。

最もいいのはヒロインが転入する前。

せいぜい藤ノ森確定ルートに入る前だったらいい。

最も最悪なのは既に千尋がヒロインに対し何らかのアクションをかけている、あるいは攻略済みであるパターンだ。

楽なのはヒロインが他の人を攻略しようとしている場合。

…いや、でも、先にも言った通り私は藤ノ森に興味はないから別れるに越したことはないだろう。


こうして、私の作戦は始まった。



*********************



―私は非常に運が良かった。

目が覚めて千尋になったあの日が、ちょうどヒロインの転入日だった。

彼女は初日からたくさんの男共とのフラグを立てまくっていた。

もちろん、その中には藤ノ森もいた。

彼が彼女に夢中になるに連れ、私はわがままの度合いを高くした。

ただし、彼にわがままを言うときは彼と二人きりか、ヒロインもいる時だけ。

外面だけは完璧にいい子ちゃんを演じた。

時間が経つほどに、ヒロインが転生者で逆ハーを狙ってるのも分かってきた。

私にとってはノープロブレムである。

むしろ逆ハーに躍起になってて『千尋』の変化に気付いてないのだから。

…それに、あの人(・ ・ ・)の存在を知らないようだし、ね。



「…千尋、俺好きな人ができた。だから、もう偽装恋人は無しだ。勝手言ってるのはわかってる。だけど、俺、彼女の事愛してるんだ。」

藤ノ森の言葉に目を見開く―フリをする。

彼の隣にはヒロインがおり、不安そうな顔で私を見ていた。

内心の意地の悪い嘲笑りが見え隠れしてるっつの。

正直ムカつく…ヒロインの容姿って清楚系美少女って感じで私大好きだったのだ。

中の奴ちょい面貸せや。

ヒロインにそんな顔させてんじゃねぇよ。

…まぁ、いいや。

「…どうして…?なんで、彼女なの…?貴方といた時間は私の方が長いのに!」

「君の気持ちは嬉しい…でも、俺に必要なのは彼女なんだ。」

「そんな…」

私はその場に崩れ落ちる。

あくまで失恋した張間千尋のフリである。

内心ガッツポーズをしているのだけど…若干口角が上がりそうになっているのだけど、なんとか押さえ込む。

彼らは私から背をそむけ去って行った。

「…ま、その逆ハーレムの中で幸せ掴めるといいわね。せいぜい頑張れば?…現実見て後悔すんのはアンタ達なんだから。」

もう見えない背中に向かって投げかける。

んーなんか負け犬っぽーい!

今のはなしっ!!

さて、私も幸せ掴みにいきますか。


フラれたばかりには見えない良い笑顔をして、私は旧校舎の屋上に向かって歩き出した。







続きまーす(笑)

良ければ読んでください。

⇒『気づいたら乙女ゲームのライバルキャラになっていたので隠れキャラを攻略しに行きます』


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