キンジョウ・ミツキ
読書感想文 1年1組 金城光希
夜中になんで? と思ったけど本を読んで分かった。カズオミのヤロウを一生うらんでやる。
ヤツがうちに来た時にはびっくりした。「読書感想文の続きを書いて」というのも突然だったので驚いたがこんな夜中にそんな用事かよ、とすぐに思って腹が立った。
それに俺、もう書き始めたし、と言ってやったらいつになく冷やかな目をして
「ウソだろ」
って言われた。ぞっとした。書いていないのは事実だったので見透かされたようで。
「読む本は買ってあるんだぞ」
それは本当だったんだが、カズオミはぜんぜんおかまいなしで俺にこう言った。
「その本よりも、もっと価値があるよこのほうが。だんぜん面白いって」
「なんだよ、続きを書けってのは?」
ようやく、カズオミが口ごもった、しかしそれは一瞬だった。
「僕にはもう時間がないから、それに」
曇りガラスのように何も映していない瞳、ああいうのをいうんだな。本に書いてあったから。
読んだ時にすぐ気づいた。でも、その時には気づかなかったんだ。
「それよか聞いたか、3組の岩切が行方不明だって。警察も捜してるってさ」
俺たちは小学6年の時に同じクラスだったんで、園田が当然びっくりしていつもみたいに
「ぅえっ!?」
って間抜けに驚くかと思ったら、全然気にしてないようだったんでちょっとムッとして
「オマエさ、昔さ、岩切のこと好きだったじゃん、で」
言いかけたところに更に冷たい口調で
「読んでも読まなくてもいいから。もう行かなきゃ」
それだけ言って、くるりと向きを変えて暗がりの中へ去っていった。
後でこの本を読んで理由が分った。カズオミは、行ってしまったんだ、岩切と同じ場所に。
そして感想文を仕上げなかったのでずっとそこにいる。
だから俺は、どうしてもその続きを書かねばならない、最後まで。
最後まで書けるんだろうか。書かないと、俺も同じことになる。早く書かないと。
旅人は真っ暗な小屋に入ってまず暖炉に火をつけた。賢明な判断だと思う。
彼がなぜそこに入ったか、それは今は問題ではない。一番の問題は、そこに入って何をしたのか。
暖炉の火に照らされて、彼は次にランプを見つけた、オイルも入っている。
旅人はランプに火をつけ、そこにあった背もたれつきの椅子に座る。
おなかは空いていたが、少ない食糧を今は減らす気になれない。その気持ちは分かる。
朝になったらその小屋をもう少し詳しく見ようと思う旅人。俺も賛成だ。
昼間の疲れで、彼は椅子に座ったままうとうとし始める。そして