二
「このままだとお兄ちゃんが死んじゃいますっ!」
刻一刻と青白くなっていく守の顔を見て、美香は本気で危険を感じ、奈緒と共に美紗子を守から引き剥がした。
「おにーちゃん!」
「しっかりして!」
「まーくん!」
ほぼ同時に杏子、涼子、早知が守に駆け寄った。
守が声に反応して上半身を起こそうとしたが、再び力なく床に倒れる。それを見て我に返ったのか、美紗子の押し返そうとする力が無くなったので、美香は美紗子の身体を開放した。脈を取っていた涼子が安堵の表情を浮かべたのを見て、一気に空気が和らぐ。
「もう、美紗子ちゃんは守君のことになると我を見失いすぎよ」
「べっ、べつに守の事だからってわけじゃ……」
涼子は軽い愚痴のつもりで言ったのだろうが、対する美紗子はモゾモゾと答えにくそうに返事をする。
その様子を見て、美香はふと美紗子をいじりたい気持ちになった。
「ふふっ……まあ、初めてをあげた相手が、実は経験済みだったら大変ですもんね」
「……全然そんなこと考えてないわよっ」
美紗子は顔を真っ赤にして、あわてた様子で否定する。
「美紗子、守と済ませた事は否定しないんですわね……」
「そんなわけないじゃないっ」
今度は奈緒が、美紗子にジト目で問いかける。
それに答える美紗子の様子はどこからどう見ても守を好いている人間の反応で、いいかげん認めればいいのにな、とつくづく思う。本人が気付いたら気付いたでライバルが多くなるだけなので、今のままの状態が好ましいのも確かなのだが。
あまりにも予想通りの美紗子の反応に、次はどんな言葉をかけようか、と心を弾ませていると、
「あ、おにーちゃんが目を覚ましたよ!」
そんな杏子の言葉に、美紗子たちと共に一斉に守の方へと駆け寄った。
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