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ジミ’s×8~8人の幼馴染と同居することになりました~  作者: MIDONA
八章〜それは、幼馴染で、家族で、大切な人だからだ!
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ただ今、『E★エブリスタ賞 MF文庫J10周年記念 ライトノベル賞』に挑戦中です。

各ページ下部、及びユーザーページに『E☆エブリスタ』の作品ページへのリンクがございますので、よろしければ投票による応援にご協力ください。

※リンクに飛ぶだけではポイント加算されませんので、お手数ですがリンク先での作品への投票をお願いします。

「はあぁぁ――――ぐふっ」

 黒服に殴りかかった守は、またも殴る前に蹴り飛ばされた。

 これで、何回目だろうか。いや、何十回目だったかもしれない。

 今や、体のいたるところが痛み、傷や痣が体を覆っていた。にもかかわらず、一発も相手に拳を当ててはいない。

「いい加減にあきらめたらどうだ?」

 これも、何回目か分からない。しかし黒服の二人組は未だに攻撃の意志を見せていなかった。

「だまれ!」

 もう一発、相手に打ち込もうと地面に手を着いて立ち上がろうとするが――さすがに限界のようで、腕に力が入らなかった。

「守君!」

「おにーちゃん!」

「来ちゃだめだ!」

 守が止めたにも関わらず、涼子と杏子は自分の所に寄ってきて手を差し伸べて立たせてくれた。

「お譲ちゃん達、おとなしくこっちに来ればすぐ終わるんだよ」

 黒服の一人が、いかにもこちらを茶化すように呼びかける。

 その間に二人の手を借りて、守は何とか立ち上がった。

「うるさ――ッッ」

 守は黒服の口を黙らせようと再び殴りかかったが、数歩歩いたところで力なく倒れてしまった。

「守君、もういいよ」

「涼ねぇ!?」

「おねーちゃん!?」

 守がもう一度立とうと頑張っていたところ、突然涼子が黒服の方へと歩き出した。

「私がついていきますから、杏子と守君には絶対に手を出さないでください」

「だめだ涼ねぇ! 戻って来い!」

 守が必死に呼びかけるが、涼子は振り向きもせず、ゆっくりと黒服の方へと歩いていく。

「お嬢ちゃん、いい心だけだね。君の志に免じてそっちの二人は許してやろう」

 黒服がニヤニヤと下卑た笑い顔を浮かべながら答えた。

 守が呼びかけ続けたが、涼子は歩みを止まることはなく、ついに黒服の前にたどり着いた。

「それじゃあ、行こうか」

 黒服が、ゆっくりと涼子に向かって手を伸ばしたとき――守は両腕に決死の力を込めて立ち上がり、そのまま駆け出した。

「涼ねぇ!」

 守は黒服の手を払いのけ、涼子と黒服の間に入り込む。

「守君!?」

 その瞬間、涼子はかすれた声ともいえない声を上げた。本人も内心は怖がっていたんだろう。本人は気付いていないようだが、その眼にはうっすらと涙が浮かんでいた。

「てめぇ、いてぇじゃねぇか」

 その顔を守が確認し終えると、黒服がイラついた声を上げた。

 それにつられ黒服を見ると、握りしめた右手を振り上げている。

「――この、なめんじゃねぇぇぇ!」

「ッッ……くっ」

 声と同時に振り下ろされた拳を、胸の前で腕をクロスして防いだ。

 体にかかった重さは大きなものだったが、立っていられないほどではなかった。

「…………今度は……倒れなかったぞ」

「こいつ……!」

 黒服がもの凄い形相でこちらを睨んできたが、守は怯まなかった。

 後ろで見ていたもう一人の男が、怒りをあらわにしている男を抑えて口を開いた。

「何で、そこまでそいつらを庇う?」

「それは……」

 その答えは迷うまでもなく、自然と頭に浮かんできた。

「それは、幼馴染で、家族で、大切な人だからだ!」

 すると質問をしてきた男も拳を鳴らし始めた。

「てめぇ、本気で言ってるのか?」

「ああ」

 その質問に対しても、守は迷いなく答えた。

「それなら、幼馴染同士、仲良くあの世に送ってやろう!」

 ついに戦闘の意志を見せた男が、ゆっくりと近づいてきた。

「それは、俺がさせない!」

 正直、自分でも立っていられるのが不思議なくらい、体が悲鳴を上げているのが分かった。だが、なぜか立っていられた。

 今まで――つい二週間ほど前の自分だったら、今頃とっくに気を失っていただろう。しかし今は違う。美紗子や奈緒に殴られ続けたことで、幸か不幸か身体が痛みに強くなっていたのだ。

 今しかない。美紗子と約束したことを果たせるのは。

 後ろには自分の大切な人――涼子と杏子がいる。それに協力してくれた奈緒や芽衣、美香などもいる。今ここであきらめたら彼女たちの努力も全て水の泡になってしまう。もちろん美紗子だっていい顔をしないだろう。

 きっと今なら美紗子との約束を果たせるはずだ。そのために色々努力はしてきたし、今の自分にはみんながついてくれている。

 正直自分が一発殴った時点で相手があきらめるとは思えない。だがあきらめられない。

 今ここでやらなかったら、いつやるというのだろうか。

 幼馴染として、萩本守として、涼子と杏子は絶対に守り抜く。

 ――それに、あと数分もすれば奈緒たちが助けに来れるくらいの時間のはずだ。

 それまでの数分間、その間だけ二人を守り抜けばいい。

 それまでは何が何でも守り抜く。

 守は最後の力を込めて拳を握り黒服に向かって走り出す。

「はああぁぁぁ――――ぁあ?」

 黒服に拳があたるところで、突然拳が空を切ったために声が裏返ってしまった。

 不思議に思い目の前を見ると、地面に崩れ落ちる二人の黒服と見覚えのある少女の姿があった。

「あ……ず、さ…………?」

 守は空から降ってきた八人目の幼馴染の名前を呼んだ後……目の前が真っ白になった。



いつも閲覧ありがとうございます。

ついにここまで来ました。

あとは、一話はエピローグを残すのみとなりました。

その続きは――執筆中ですので、大丈夫……だと思われます。

また、引き続きE☆エブリスタでの大賞、キャラクター人気投票も開催中です。よろしければご協力ください。

また、もし挿絵などを書いてみたい方がいらっしゃったらぜひぜひ名乗り出てください。大歓迎です。と、まあ、少し思っただけなのですが。

ということで、今後もよろしくお願いします。


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