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ジミ’s×8~8人の幼馴染と同居することになりました~  作者: MIDONA
六章〜俺は普通に答えればいいかを聞いただけだ!
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「どうやったらそんな風に出来るんだ?」

 美紗子が勉強会に加わるようになってから数日後の朝。隣でチャーハンを炒めている芽衣に声をかける。芽衣が中華鍋を動かすたびにご飯が宙を舞い、それらが一粒も漏れることなく中華鍋へと舞い戻ってくる。その姿はとても美しく、ただ調理しているだけなのにそれだけで見ごたえある出し物のようだ。テレビに出ているようなプロの料理人と張り合えるのではないか、というレベルのものだった。

「慣れれば簡単ですよ。」

 しかし、芽衣の返事は乱れることもなく、いつも通りの物だった。

 芽衣は一旦コンロの火を止めてから、守の方を向く。

「よろしければ、守様もやってみますか?」

「それじゃあ、お願いしていいか?」

「はい」

 なかなか出来る体験ではないので挑戦の意志を示すと、芽衣は快くうなずいてくれた。

「それでは、こちらに立ってください」

「おう」

 芽衣の案内に従ってコンロの前に立ち、鍋とお玉を握る。

「それでは失礼しますね」

 そう言うと、芽衣は守の持ち方に合わせるように右手をかぶせた。その後も、腕、体、そして左手、とゆっくりと、体を守の体に重ね合わせてくる。

 いくら自分のメイドとはいえ、芽衣は同年代の異性だ。健全な男子である守はもちろんその柔らかな体の感覚を無視することはできない。護身術などを煮付けているためだろうか。腕や足はとても柔らかいが、丸いわけでもない。ところどころキュッとしまっていて、とても感触が良い。首筋あたりに長いサラサラとしたツインテールも当たり、耳元では息遣いを間近に感じることができる。また、当然背中には自然と弾力のあるものが当たるわけで……。

 そんなことを考えている間にも、目の前でチャーハンが舞い始めた。芽衣が守の体を動かし始めたのだ。まず初めに、芽衣の腰によって、守の腰が押し出される。同時に背をのけぞる姿になり、倒れた上半身が芽衣の胸についている大きな衝撃吸収材によって受け止められた。さらに、その弾力により上半身が押し返される。そして、また腰が押される。

 そんな動きに合わせて、チャーハンが飛び上がっては鍋に着地して、また飛び上がる。そんな光景が目の前に広がっている。

 ――ああ、芽衣はこんな風に体を動かしてチャーハンを炒めていなんだな。

 芽衣の体の動かし方を余すことなく感じ取っている守にとって、頭の中には自然とそんな感想が浮かんできた。

「守様、終わりましたよ」

「――!? ……あ、ああ」

 芽衣のそんな声に正気に戻された守は、いつの間にか体の動きが止まっているのを自覚した。と、同時に背中を覆っていた暖かな感覚も失われていることに気付く。

「……えっと、どうかなさいましたか?」

「と、とりあえず――チャーハン冷めちゃうともったいないし、みんなを起こしてくるよ」

「――? はい、お願いします」

 守はそんなことを口実に、台所から逃げ出した。芽衣に頭の中で考えていたことを悟られないようにするためだ。

 台所を出て気持ちが落ち着いてきたので、少し歩調を緩めながら時計を見る。時刻は朝の六時二十分。調理終了の時間としては遅いが、普段なら美紗子は起きているはずの時間だ。

 今日は奈緒(尚)、早知、芽衣の歓迎会だ。(ただし、2年組だけだが。)いつもより少し早い時間にはなるが、身だしなみの手入れにも時間を使いたいだろうから、早めに起こしても良いだろう。そう考えて守は二階へと踏み入れる。

 そのまま、一番近くにある美紗子の部屋のドアに手をかけた。

「美紗子、朝だぞ」

「……守、おはよぅ……」

 ベッドで寝ているものだと思い声をかける。すると、予想に反して美紗子はベッドに腰掛けていた。

 寝起きのせいか、普段よりも顔が赤い気がする。目もトロトロとしていて、妙に色っぽい。話し方もゆるい感じで、あえて表現するなら……そう、酔っ払っているような雰囲気だ。

「……守、なんか頭がねぇ……」

 美紗子はベッドから立ち上がると、そういいながら歩いてくる。話し方がいつもよりゆっくりだ。それに呂律もうまく回っていないらしい。

 また、その歩みはとても高校生のものとは思えなくて、右に左にと揺れながらの覚束ない歩行だった。

「美紗子?」

 しかし、守は状況がつかめていないのと、普段では考えられない色っぽさのせいで美紗子に見とれてしまったのとで、その場に立ち尽くしていた。

「……守」

 しばらくして守の前に到着した美紗子が、突然倒れ掛かってきた。

「おい!」

 守は反射的に抱きとめる。その体は信じられないほど熱く、おでこをあてて体温を調べてみると――四十度近くはありそうな様子だった。

 密着していることで息遣いも感じ取れたが、息の仕方も不安定だ。また全体重を守に預けている様子なので、両足で直立が出来ないのかもしれない。

「守……」

「どうした?」

 あまりにもか細い美紗子の声を聞き取ろうと、守は耳を口元に寄せながらも、出来るだけハッキリした声で美紗子に呼びかける。

 すると美紗子が最後の力を振り絞るかのように、ゆっくりとゆっくりと、その震える唇を開いていく。

「……なんか、頭が、い……た…………い――――」

「美紗子!? 美紗子!」

 美紗子はそこまでを言い切ると、安心したかのように守に身を任せた。

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