四
着替えを済ませてから時計を見ると、五時の十分前。どちらにしても、やらなければいけないことなので、調理をしながら美紗子を待とうと階段を下りる。
その後、一階のトイレに寄ってからキッチンの方へと向かうと、誰もいないはずなのにキッチンの灯りがついていた。昨晩、自分が寝る前に消えていることを確認したはずなので、昨晩の消し忘れ、という可能性は考えにくい。
そうなると誰かが起きてきてつけっぱなしとかかな、と思って近づいていくと、トントントンというリズム感のある物音が聞こえてきた。
泥棒である可能性も否定できないので、壁を伝いながら出来るだけ物音を立てないようにキッチンへと近づいていく。
もう少しで中が見える、というところまで来たところで、中の様子を探るべく耳に意識を集める。
すると、先ほど聞こえたトントントンという音がしばらく続いた後、ポチャンという何かが水に落ちる音が連続で聞こえる。その後、ポンというビンのキャップの開く音が聞こえてきて……
「料理……か?」
おそらく、美紗子も早めに起きてしまって先に調理を始めてくれていたのだろう。いくら幼馴染だからって、同じ日に早く起きてしまうことが起こるなんて珍しいな……って、そんなこと言ったらうちにいる全員が早く起きなければならないことになるか。
守は先ほど学んだことを生かして考え事をしながら、台所の中へと入る。
「美紗子、おはよう……って、なんだ、芽衣か」
すると、そこにいたのは美紗子ではなく、メイド服を着た守と美香の専属のメイドだった。
「守様、おはようございます。まだ朝も早いですし、朝食の支度はわたくしがやっておきますので、よかったらもう一度ベッドで睡眠をとられてください」
「ありがとう、そうするよ」
芽衣に任せておけば大丈夫だろう、と思い、足りていない睡眠をとるために方向を変えて歩き出す。
それにしても久しぶりだな、芽衣の手料理。何を作っていたのだろうか、などと心を躍らせながらしばらく歩いた後、守は明らかな違和感を覚えてキッチンへと駆ける。
するとそこには先ほどと同じく、四年前から行方不明となっていた同い年のメイドがツインテールを揺らしながら朝食の支度をしていた。
「芽衣、なんでお前がいるんだよ!?」
今まで行方不明になっていた相手に対する心配、怒り、再会の喜び、そういった全てのものをその一言に詰め込んだ。
すると、芽衣は調理を中断し、こちらに向き直る。
そして、背筋をピンと伸ばした後、深々と頭を下げて、
「四年間も留守にして申し訳ございませんでした」
謝罪の言葉を述べた後、芽衣はゆっくりと顔を上げて、満面の笑みを作って見せた。
「守様と美香様の専属メイド、岩井芽衣、四年間の修行を終えてただいま到着いたしました」
その言葉が、二人しかいないキッチンに響き渡った。
どうも。
MIDONAです。
詳しい理由は活動報告を見ていただきたいのですが、来週の土曜日まで、小説の新話の更新以外の活動を停止させていただきます。
しかし、それまでも覗くことはしますし、活動できるようになりましたら、必ず返信なども行いますので、それまでよろしくお願いします。




