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ジミ’s×8~8人の幼馴染と同居することになりました~  作者: MIDONA
五章~守様と美香様の専属メイド、岩井芽衣、四年間の修行を終えてただいま到着いたしました
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「は!?」

 守はあまりにも唐突な内容の発言を聞いて、間の抜けた声を出してしまう。

「俺は許嫁なんて話、聞いてないぞ」

「そんなことがあるはずが――」

「あの……」

 訳が分からないうちに言い争いに発展しかけたところを、突然聞こえた美香の声に止められた。

「美香、どうしたんですの?」

「結婚の話を断ってるのって、お兄ちゃんじゃなくて、親なんですけど……」

「えっ!?」

 予想していなかった答えだったためか、今度は奈緒が素っ頓狂な返事をした。

 にしても、なぜ当人である守すら聞いてない許嫁云々の話を、美香が知っているのだろうか。

 それ自体はあとで父親あたりに直接問いただせばいいことなので、守は話がややこしくならないうちに自分から話を切り出した。

「でも、何で俺なんかを許嫁に?」

 どうしてもそこだけは、合点がいかなかった。企業の大きさ的に考えて、萩本家は一条院家の足下にも及ばないので、わざわざ向こうから婚約を申し込んでくる理由がない。

 そうなると考えうる理由は一つ。奈緒が守に好意を持ってくれているというものだ。

 性格に多少難があるが、しばらく離れていたとはいえ幼馴染であるので、色々とやりやすいと思う。また見た目は全く文句ないし、家柄的に考えても萩本家としては理想的すぎる。

 だったら即婚約の約束はできなくても、普通に付き合い始めてお互いが納得いけばそのまま結婚してもいいのではないかな、などと思っていると、

「先に言っておきますけど、別に守に好意を持っているわけではありませんわよ」

 ……だよな。普通に考えてそんなことあり得ないし。

 一瞬でも期待してしまった自分を恥ずかしく思いながら、結局解決していない疑問をぶつける。

「じゃあ何で俺を?」

 仕方がないな、とでも言いたそうな顔でこちらを見たあと、奈緒は右手をこちらに向けて人差し指を立てた。

「一つ目、富裕層の男性は話の通じない者ばかり。二つ目、一条院家の娘として、この歳にもなれば将来の婚約者を決めなければならない。守、この二つは分かりますわね?」

「まあ」

 数字に合わせて中指を立てながら、徹底した説明口調で奈緒が解説を始めた。

 一つ目に関しては、文句なしに同意できる。金に不自由なく豪勢な物に囲まれて育つせいか、富裕層の人間は一般人とかけ離れた感覚や思考を持った者が多い。ごく少数だがまともな人もいなくはないが、その人数は家柄が良くなれば良くなるほど少なくなっていく。

 二つ目に関しては、家ごとに異なるので何ともいえないが、奈緒の言い方からしてそうなのだろう。まあ、一条院家の娘ともあれば、お見合いの話なんかも多いのだろう。その風除けの意味もあるのだと思う。

 その二つを合わせて考えると、奈緒は早々に許嫁を決めないといけない。しかし一条院家に相応しい家柄の相手に奈緒が納得出来る相手がいない、ということだろう。

 そこまでは合点がいったが、それと自分がどう関係あるのだろうか。

 答えが解らないので今までの奈緒の発言にヒントは無いかと、今までの会話を思い出して、

「まさかとは思うが……」

 出来れば外れてほしい、自分でも妙に納得のいく答えを思いついたので、恐る恐る聞いてみた。

「そうですわ。そこであたくしは許嫁として、仕方なく守を選んだんですわ」

 やっぱり正解だった。

「さあ、守。美人で勇敢で活発で、なおかつリーダーシップ抜群な女性の婚約予定者になれるのですから、迷わず契約書にサインするんですわ」

「なあ、奈緒。美人で勇敢で活発で、なおかつリーダーシップ抜群な女性って誰だ?」

 たぶん自分のことを言っているのだろうが、内容と本人像が一致しない。美人なのはともかくとして、他はな……。

 そんなことを奈緒に言うやつがいたら是非会ってみたいな、と思っていると、殆ど時間がかからず奈緒が自分の手を大きな胸に当てながら答えを話した。

「あたくしのことですわ。第一、あなたがそう言ったんでしょう」

 そういえばそうだった。たしかに昨日、尚にそう言った。にしても、何で言った内容を全て覚えているのだろうか、こいつは。

 しかし、あれはあくまで他人に話すための表現であって……

「お転婆でガサツで、人に有無を言わせないほど自己中で、ルックスしか取り得のないやつの許嫁になんかなってたまるか」

 我ながら言い過ぎた気がするが、奈緒が相手なら大丈夫だろう。これくらい言わないと、押し切られそうだし。

 奈緒のことは嫌いではないが、今すぐここで婚約者を決めろとか嫌すぎる。時間をかけて納得した後ならともかく。自分としては、出来れば美紗子のような一般人と結婚したいし。

 しばらくすると、守の予想通り奈緒が顔を真っ赤にして迫ってきた。

「話し合いは、契約書にサインした後ですわっ」

「それじゃあ手遅れになるよな!」

 ついに、自分の意見が無視され始めた。

 さすがに一人での応戦が厳しくなったので、助けを求めて周りを見る。すると、どこからか持って来たらしいノートパソコンをいじっている早知と目があった。

 助けてくれ、と視線で訴えると、そのメッセージを受け取ってくれたのか、顔を上げた早知が口を開いた。

「マー君には、既に許嫁がいるから難しいと思うよ」

「本当ですの!?」

 よかった。奈緒の様子を見る限り、諦めてくれたようだ。

 まさか自分に許嫁がいたとは。世の中知らないことばかりだな……って、許嫁!?

 守がようやく早知の言葉の意味を理解した所で、早知が言葉を続ける。

「ええと、名前は、はや……むぐ……むぐう……むぐぐ…………」

「早知さん、人の家の機密情報を勝手にハッキングしてバラさないでくださいね」

 早知が話している途中に、美香が早知を押さえにかかった。

「……」

「……」

 守は、名前の出だしを聞いてある人物の顔が頭に浮かんだので、その人物を見る。

 すると目があったので、お互い視線で無関係なことを確認して頷いた。

 しかし美紗子ではないとなると、誰なのだろうか。『はや』で始まる名字というと、早川、林、はたまた他の早見さんかもしれない。どちらにしても心当たりは無いので、自分の知らない人のようだ。

 父親に問い詰める質問リストに項目を追加し、パソコンの方を見ると、琴瀬姉妹が覗き込んでいた。

「お似合いだとは思っていたけど……」

「おにーちゃん、仲良くしなきゃダメだよ」

 二人がニヤニヤしながら意味深なことを呟いていた。

 見たことない人とお似合いとか言われても……

「誰なんですか?」

「美紗子さん、見ちゃダメ!」

 続いて美紗子が覗き込もうとしたところで、早知を解放した美香がノートパソコンを勢いよく閉めた。

「美香、あたくしのパソコンが壊れたらどうしますの?」

 隣から聞こえる罵声によると、あのノートパソコンは奈緒の物だったらしい。

「さっちゃん、人のパソコンを勝手に使わないようにして欲しいものですわ」

「尚君、性転換手術してまでマー君を落とそうとする心意気、ボクは感動したよ」

 美香から解放された早知が、奈緒に話しかける。

 内容から察するに、早知は尚が守を落とすために女性になった、と勘違いしたらしい。

 奈緒と早知は昔に顔を合わせたことがあるが、早知の方は覚えてないだろう。奈緒は不衛生だ、とか言って、病院に来たのは入院早々の1回だけだし。早知にとっては、たくさんいた見舞い客のうちの1人に過ぎなかっただろうし。覚えていたからといって、早知が正しく認識したかどうかは分からないが……腐女子だから。

「さっちゃん、あたくしはれっきとした女ですわよ」

「照れ隠ししなくても大丈夫だよ。応援してるから!」

 早知には話が伝わらないことを察したらしい奈緒は、パソコンが壊れてないことを確認したあと、時計を見てから守へと視線を移した。

「守、色々ありましたけど、さっさと勉強を始めますわよ」

「お、おう」

 あまりにも突然話をふられたので、ハッキリとしない返事になってしまう。

 時計を見ると大分遅い時間になってしまっていた。明日の朝もあるし早めに始めないとな、と思いリビングを出ようとしたところで、

「ちょっと待ちなさいよ」

 突然美紗子に呼び止められたので、歩みを止めて振り返る。

「美紗子、どうしましたの?」

 守が呼び止められた理由を聞こうとしたところ、奈緒に先手をとられた。

「あ、あんたたち、男女二人っきりで勉強する気?」

「その予定ですけど、何かありまして?」

 振り絞ったような美紗子の質問に、奈緒がサラッと答える。すると美紗子は、何も言い返せずに固まってしまった。

 たしかに奈緒の正体が分かって勝手が少し変わるが、状況は昨日と変わりないし問題ないだろう。

「守、行きますわよ」

「おう」

 奈緒に呼ばれ、再びリビングを後にする。

「いいわよ。家事とかあるし、あたしの方が一緒にいる時間は長んだから」

 その後、美紗子がボソッとつぶやいた言葉に気付いた者はいなかった。

 どうも、MIDONAです。

 感想と評価が、新しく入りました。入れてくださった方、ありがとうございます。

 そして、題名を変えたからかなんなのか、昨日(公開時は一昨日)のアクセス数が倍になったので、おそらく題名はこのままでいきます。

 今後もよろしくお願いします。

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