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天ちゃん

作者: NNNNNmatchy
掲載日:2026/05/01

 男は、不定期ながら、何度も何度も、彼の夢を見た。



 中学へ上がったばかりの頃、兄弟の猫はやってきて、その一方が天ちゃんだった。


眼鏡もちょうどその頃掛け始めた。


 男は飼うのに肯定的でなかった。


猫自体が嫌いというわけではなかったが、潔癖のきらいがあり、そのことで神経をすり減らしていた。


母がすべての面倒を見るというので、渋々承諾し、彼らとの生活が始まった。


 彼らはアパートに住む二階の住人から譲り受けた子たちで、どちらが兄か弟かわからなかった。


兄弟は対照的な見た目と性格で、一方はグレーと白のブチ。

一方は額と尻、しっぽの黒い縞模様以外は白い。

尻の丸い点が印象的だったため、母が“(てん)”と変換し、それに掛けてブチを“(らい)”と名付けた。


 雷は好奇心つよく、よく走り、人にも懐くのですぐに打ち解けた。


天は怖がりで、知らない人が来ると逃げてしまい、初めのうちは簡単に近づくことが出来なかった。



 そうして時が過ぎ、どんどん成長すると、雷は外で遊ぶ時間の方が長くなり、あまり帰ってこなくなってしまった。


高校の頃。


外で冒険をし、仲間が出来、たまに帰ってきたと思うと、身体は逞しくなり、時には喧嘩を思わせるひどい怪我をしていた。


声は高く、か弱そうに鳴いていたが、目に見えて厳つい猫になっていった。


その辺りから微妙に天との距離が離れたように見え、雷はそのまま家に戻ってこなかった。



 さらに時が過ぎ、大人になった。


天とは仲良く過ごしていて、それなりにかわいがっていた。


天はあまり動くタイプではなく、ぽっちゃりしていたが、外には興味があり、でも車は怖いため、少し出ては急いで家に入るのが常だった。


それでも彼なりに慣れ、徐々に外にいる時間が増えてきた。


彼女が出来たみたいで、家に連れてきては一緒にご飯を食べていた。




 ある時、眼鏡を外していた男は、丸まった毛布と見紛い、寝ていた天のことを掴んでしまった。


走り去る天に驚いて男は笑いつつ、悪く思った。


そうしていつものように過ごし、外へ行った天をいつ戻るか待ち侘びていたが、どんなに待っても帰ってこなかった。


臆病な彼のことだから、そう遠くへは行ってないはずで、辺りを捜してまわってもみたが、とうとう見つからないまま時が過ぎた。

 

 死期を悟って、見せまいとその姿を消したのかもしれなかった。



 それから何年も経ち、もう居ないのが当たり前になった今でも、何度も、何度も、夢に彼の姿を見る。


その度、男は妙な寂しさに囚われるのだった。

この先もずっと、夢を見ては、もう少しかわいがってやれたと悔いることだろう。

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― 新着の感想 ―
どうもお久しぶりです。 私小説に辛辣系コメントと言うのも筋違いか?と思いつつ、まあ、マッチさんには今さらかぁ、とも感じたので率直に書こうと思います。 お話の流れはきちんと読み取れた。ス…
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